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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1005/1589

11-56 木菟、感激


夜行性の木菟ずくが明るいウチに下見するのは難しい。だから昼行性の鷲の目が木菟に代わり、当たりを付けた。



木菟は野比社のびのやしろ、鷲の目は野呂社のろのやしろの祝に仕える忍び。


霧雲山で暮らす忍びは昔から助け合い、支え合って活動しているのだ。互いの得て不得手、嗜好まで知り尽くしている。


好きな異性のタイプもネ。






「ハァァ、こりゃ凄い。」


野呂のふもとから飛んできた、清らな光が木菟を取り巻いた。野呂神のろのかみの御力だろう。


「光を見失わないウチに。」


三日月湖から遠く離れているのに、湖がウッスラ輝きながら浮かび上がって見える。いや、そう見えた。


かすかな光が風に吹かれ、野呂山へ飛んで行く。


「そうだな。」






野比は不気味なほど強く、永久中立をうたう社。


霧雲山で唯一『山守に関わらない』と宣言。と同時に木菟を派遣し、祝辺はふりべを監視中。



野呂は獣のように強いが人を助け、永久中立を謳う社。


霧雲山で唯一『祝辺に人を送らない』と宣言。と同時に鷲の目を祝辺に派遣し、常に山守と祝辺の動向を探っている。



木菟も鷲の目も表向き『祝辺の使者』として動いているが、知り得た情報は余す事無く共有。モノに寄っては他の忍びや、良村よいむらにも報告。






「これ、かな。」


「水を掛けよう。で、ネットリ粘ったら当たりだ。」


小さな深皿に取った土と、竹筒に汲んでおいた水を入れて指を突っ込む。クルクル混ぜてスッと引いた。


「粘る、当たりだ。確かめてくれ。」


「オウ。」


もう一人が指で押し、グニャッとするのを確かめた。


「焼いて割れても良いように、もう少し取ろう。」


「そうだな。」






獣の皮で作った袋に粘土ねばつちをタップリ入れ、ヨイショとかついでスタコラサッサ。野呂山に入り、いただきの近くにある野呂社を目指す。


日が高くても薄暗く、険しい山道。踏み外せば深い谷に真っ逆さま。そんなトコロを夜、それも闇夜に進むのだ。


アブナイなんてモンじゃ無い。






「こんばんは。野比社から参りました、木菟です。」


夜に動く忍び、木菟。難なく登頂。


「寝てるか。」


「夜だもんな。」


二人揃って、遠くを見つめる。


「お待たせしました。野呂神の使わしめ、尾被おかづきです。」


キュルン。


「光を宿した粘土、確かに受け取りました。夜遅くの山登り、お疲れでしょう。取れ立ての木の実です。どうぞ、お召し上がりください。」



尾被はむささびおに。担当は夜。


昼は社の横に生えている桐の洞穴でグウグウ眠り、夜になると木の芽や木の実を求めて飛び回る。巡回を兼ねているので、誰にも何も言われない。


・・・・・・寝てるから。



「お気持ちだけ、いただきます。」


前足でシッカリ持って、鼻先を上へ。その姿が『コレ、大好きなんだ』と言っているようで受け取れない。


「そう、ですか。」


ショッピリ嬉しそう?


「では離れへ。一休みしてから御戻りください。」






山というのは登るより、下りる時が危ない。


明るくても滑り落ちてしまう。なのに月のない夜、幾ら忍びでも恐ろしかろう。というコトで野呂の社の司は離れにイロイロ揃え、整えた。


少しでも疲れがやわらぐように、と。



離れに入って直ぐ、木菟が動けなくなる。


その心遣いに涙して。


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