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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1004/1599

11-55 死んでも


テイは奪い、いや殺し過ぎた。



「ギャァァッ。」


前触まえぶれれもなく押し掛けて親や子、思い人を生贄いけにえや人柱にと言われ『はい、そうですか』と差し出す者は居ない。


「来るなぁ。」


山守の民から、祝から守ろうと戦って傷ついた者。寄ってたかって嬲られ、憎しみを抱いた者。頭を潰されたり首筋を切られたりして、命を散らした者は一人や二人では無いのだ。


「離れろぉぉ。」


守りたい人を奪われ、タップリ時を掛けて殺されればドウなる。おには生き物に触れられない。


めてくれぇぇ。」


戦ったのに取り返せなかった。幸せを願ったのに苦しんでいる。そんな姿をの当たりにして、穏やかで居られるワケが無い。


ブワッと深く濃い闇が広がり、丸吞みされて牙を剝く。闇堕ちしても救えず、目から光が消えてゆく。


「頼むからぁぁ。」


泣ける事が幸せだと気付くのは、流す涙が涸れ果てたのち。泣きたくても泣けず、叫びたくても叫べない。


偽りや見せ掛けてはなく、まことの苦しみにさいなまれるのだ。ずっと。






「許さない。」


祝の力を持って生まれた、だから何だ。他より美しい、だから何だ。他より上手うまく出来る、だから何だ。


他より何かが優れているから? それが何だってんだよ。


「許せない。」


何がイケナカッタんだ、悪い事したか。して無いよな。己に出来る事をして、手を差し伸べて助け合って、支え合って生きてきた。


ソレだけなのに、どうして死ななきゃイケナイんだ。どうして殺されなきゃイケナイんだ。


「親を返せ!」


死んだよ、殺されたんだ山守に。山守の祝を乗っ取ったテイ、呪い祝にな。


「子を返せ!」


なぁ、教えてくれよ。霧雲山は祝辺の守に守られてんだろう。


「あの人を返せ!」


霧雲山の統べる地、全てのおさは人の守。隠の守が他から、霧雲山の統べる地を守ってる。そうだよな。






ナニがドウなって、いや今はソレより何よりナゼこうなった。


何が起きたんだ。


これまでうつわを捨てて逃げてきた、逃げられた。なのに出られない、逃げられない。



思い出せ! 何か、何か有るハズだ。


コイツ、何か言ったな。何と言った、何を言い残した。






「ニガシマセンヨ、テイ。アキラメナサイ。」


ハッ!


「ヤットシネルノデス、キヨメラレテ。」


この声、そうだ。この器の声だ。






「アダジバァ、アギラメナイィィ。」


食い縛りながら首を、亀のようにヌッと伸ばす。


「ジンデダマルガァァ。」


目から鼻から、口から耳からもドクドク、ダバダバと血が流れる。


頭の中で響く声はテイの心と魂をガリガリ削り、いやジョリジョリとり下ろすよう。


「グルナァァ。」


ブンブンと頭を振る。


「バナレロォォ。」


目の玉が飛び出すほど見開く。


「ヤメデグレェェ。」


舌がビリビリして、目がチカチカし出した。


「ダノムガラァァ。」


のどの奥が大きく開き、ドロドロした何かが溢れ出す。






逃がしませんよ、テイ。諦めて受け入れなさい。


私はね、祝として出来る事をする。他の誰も死なせたくない、死なせない。だから死んでも離さない、放しません。


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