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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1003/1587

11-54 実行


時をタップリかけて溜め込んだ力をゴッソリ奪われ、苛立いらだつ気持ちを抑えられなかったセイ。


おもてあせりが出てしまい、考えられないホド恥ずかしく、みっともない行いを為出しでかした。




「良かろう。みつ守、頼みます。」


「はぁい。」






対象に闇を植え付け、操り動かす力を持つ三代祝辺の守は山守の祝が大っ嫌い。母を『生贄いけにえにする』と奪われ、取り戻そうとした父を目の前で刺されたから。


泣き叫ぶ母に手を伸ばした父は山守の民に頭を踏まれ、駆け寄ったせがれを思い切り蹴り飛ばす。父は『生きろ』と言い残し、死んだ。



山守の祝を強く憎んで闇を宿すも、闇堕ちギリギリでひとつ守に清められ、ふたつ守に押さえつけられたから助かった。


祝社の継ぐ子になったのは闇の力を使いこなし、山守に殺された父母のかたきを討つため。



祝辺の守になったのは死んでも力を失わず、祝辺で生きるおにになれるから。山守を見張り、おのと同じ思いをする子を無くす事が出来ると考えたから。






「痛くするけど、テイを離すなよ。」


テイに体を乗っ取られても、体から追い出されたワケでは無い。すみっこで生きている。



目の前に居る山守の祝は、己から父母を奪った祝では無い。けれど己から父母を奪ったのはテイだ。きっとテイだ、テイに違い無い!



「バナゼェェ。」


目を剥き、鼻の穴から血を出して叫ぶ。


「は、やく。」


口からゴボッと血を吐き、って手をピクピクさせている。一時的にテイから体を奪い返したヨキが、命を削って急かしているのだ。



みつ守は闇を植え付け、体の隅隅まで伸ばした。


強い呪い祝であるテイでも、みつ守の闇には逆らえない。奪った体が己を閉じ込めるうつわとなり、息の根を止めても出られない事に気付く。



「祝辺のひとやへ。」


人の守がスッと、地に線を引いた。


音も無く現れたのは底知れぬ深い穴。氷のように冷たい風が吹き、テイに乗っ取られたヨキごと包む。


「ギャァァァァァ。」


真っ逆さまに落ちた。






人のときと隠の世のさかいに作られた祝辺の獄には光が届かない。


爪が剝がれるまで掻いても掻いても、傷一つ付けられない壁と床。歯が折れるまで噛んでも噛んでもビクともシナイ、太くて鋭いさく



細かく仕切られた獄がズラリと並び、山守の民や祝に殺された人の魂が守っている。


罪人つみびとを荒荒しい獣のように扱い、閉じ込める囲いからは出られない。死んで朽ち果てても捨て置かれ、苦しみ続ける。


骨は獄の床がバリバリと砕き、残された魂は壁に磨り下ろされながら取り込まれるのだ。






「ジンデダマルガァァ。」


テイは決めた。歴代の祝から奪った力を少しづつ使い、この男を生かそうと。



ココから生きて出た者は居ない、死んでも出られない。ソレが祝辺の獄。


蓄えた力を使い果たしても、器が骨になるまで耐え抜く。壁や床に近づかず浮き続ければ、新しいのが放り込まれる時に飛び出せるだろう。



「やっと来たか。」


「遅かったねぇ。」


「思い通りにはサセナイよ。」


テイに殺された人の魂が、生まれ育った地に戻れなかった魂が口口くちぐちに述べる。



「カク、カクカクカク。」 ヤア、ヨクキタネェ。


「カク、カクカク。」 ミナ、アツマレ。


「カクカクッ。」 マッテタヨ。



獄の床や壁からニョキニョキと、手のようなモノが伸びてきた。器を捕らえると思ったのにズブリと突っ込み、テイの魂をまさぐる。


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