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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1002/1587

11-53 癇癪


えぇい! どうなっている。


祝だぞ、山守の祝が幾度いくたびも幾度も思い通りにならぬとは。キツネなんぞ私の力で、呪いの力で・・・・・・ん。



糸は切った、残らず消した。力を多く吸い取られたが、まだタップリと残っている。前の祝、その前の祝も強い力を持っていたからな。


クックック。






「キエェェッ。」


思い通りにならず、癇癪かんしゃくを起こすテイ。


「認めぬ、認めぬぞ。」


ジッタンバッタン、ごろんゴロン。






目に見えるモノが全てでは無い。代替わり為さった大貝神おおかいのかみから、清らな御力をいただいている。


身も心も満たされた土の腹で作られ、出糸管しゅっしかんから放出される清らな糸。以前のより強いゾ。



蜘蛛が糸を出す管は一つでは無く、腹端の糸疣いといぼの上に多数開口する。糸疣は蜘蛛の腹の下、肛門の前方にある二から四対の小突起。


オシリから出るケド、出る穴が違いマス。だからブリッと出ても臭くナイの。






「ナゼだ、なぜ動けぬ。」


力いっぱい引き千切ちぎり、バラバラになりました。けれど小さな糸がテイの魂に張り付き、力を奪い続けています。


暴れれば暴れるホド、深く食い込む優れモノ?


「こんなトコロで干乾びてたまるか!」


舞い上がる糸屑いとくずを吸い込み、苦しくなったテイ。まばたきしながらった。見えないモノが見えた、ような気がして。


「隠れてないで出てこい。」


「やっと気付きましたか。」


ひとつ守が姿を現し、ニコリ。


「テイ、祝の体から出なさい。山守神やまもりのかみは『生贄いけにえも人柱も要らぬ』とおおせだ。」


「山守の事は山守で決める。祝辺はふりべの守よ、引け。」


???


「引け引け引けぇ。」


「ハァ。私はキチンと伝えましたよ。」



強い清めの力を生まれ持つ初代、祝辺の守。


ひとつ守は穏健なおにの守として知られ、人の守の後見うしろみでもある。そんな大物がワザワザ山守まで来て、呪い祝に声を掛けた。



「サッサと消えろ。」


「では、さようなら。」


スッと姿を消す前に、何かがピカッと光った。






山守のひとやを出て、高い崖をじ登る。ゼイゼイはぁはぁ苦しそう。でも諦めず、歯を食いしばって進む。



「人の守よ、良く聞け。」


ヨキは細身だが男、体力は有る。


「山守のヨキ、いいえ呪い祝テイ。許し無く祝辺に足を踏み入れるとは、何を考えているのです。」


「黙れ! 今すぐ良山よいやまへ隠の守を向かわせ、強い祝の力を持つ娘を連れてこい。」



祝辺に乗り込むダケでも大事おおごとなのに、隠の守を使役する?


大蛇神おろちのかみ大実神おおみのかみの御許しなく『良山に入れ』なんて、隠の守を消し去るオツモリか。



「テイ、今すぐ祝の体から出なさい。消えなさい。」


「黙れ。山守神は強い力を」


声が、出ない。


「テイ。良山に手を出すなら、祝辺の獄に入れる。」


人の守は本気で、テイを投獄する気だ。


「ウグムググ。」 コレヲトケ。


「よつ守。」



二代三代とは少し違うが、四代祝辺の守にも闇の力がある。


闇の糸で対象を捕縛したり皮膚を縫う力を持つ元、継ぐ子は物静かだが、怒らせると怖い。



「はい。けれど、よろしいのですか。」


と言いながらテイの口を縫っていた糸を抜き、スッと下がる。


「やれるモンならヤッテみろ!」


テイが人の守に啖呵たんかを切った。


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