5-27 三妖怪の本気
灰の中にいた。声が出ない。動けない。苦しくは、ない。痛くも、ない。
「祝を狙うとは。」
美しいと思った。そして、思い込んだ。神に見初められたのだと。
「身の程を知れ。」
嬉しい。話しかけられた。やっと、幸せになれる。
「幸せか。」
そう、幸せ。私は選ばれた子なのに、ちっとも思い通りにならなかった。でも、これからは違う。
「何が違う。」
私は神に選ばれた。だから、思い通りに生きられる。
「沈め。」
息が出来ない。苦しい。助けて。
「ゴロゴロさま。あの子は、山守社へ。」
「送る、か。」
「はい。受け入れると、知らせが。」
「アレはな、霧雲山に入れば祓われる。フクよ。届くはずの人柱が届かねば、どうなる。」
「それは・・・・・・。」
「代わりを、差し出せるのか。」
「いいえ。」
「気に病むな。コンを使いに出した。山守神は、人柱など求めておられぬ。山守社の祝がな、強いておるだけ。」
「しかし、送ると・・・・・・。」
「木菟か。鷲の目か。谷河の狩り人か。」
「いいえ。山守社の、祝の使いです。」
「なら、良い。」
「良いのでしょうか。」
「実はな、キラも行かせた。」
「山守社、でしょうか。」
「祝辺へ。」
「守ですか?」
「山守神の使わしめは、狐。祝辺の守に仕えるのは、烏。狐は狐、烏は烏に任せよう。何より、雲井神より、お許しを得ておる。案ずるな。」
「ヒサは。」
「沈めた。頃合いをみて、魂を清め、祓う。」
「祓えるのでしょうか。」
「体と魂を離せば、祓える。」
「私には・・・・・・。」
「釜戸山に、いるではないか。強いのが。」
「エイさま?」
「その父、ナガだ。通してある。」
「いつの間に。」
「ポコさまとは長い付き合いでな。それに、言ったであろう。雲井神より、お許しを得ておると。」
神々の会議中、使わしめは・・・・・・満喫するのだ。観光、美食、散策、いろいろ。つまり、横の繋がりがある。
交友を深めるのは、使わしめだけではない。妖怪の多くは、顔が利く。妖怪の本気は、桁違い!
祝~hafuri~ 連載100回を記念して、新連載はじめます。
詳しくは、活動報告をご覧ください。