1-1 はじまり
天地創造。人類誕生。そして・・・・・・バケモノたちが動き出す。
バケモノには才がある。様々な才が。そのバケモノたちを統べるのが、はじまりの一族。好戦的な大王、平和を愛する化け王。バケモノの国の、二人の王。
やまとにもいる。強い力をもつ祝が。八百万の神々はいつも御守りくださる。そう、見守り一択。
多くの人を守るため、今日も力を使います。戦ってもらいましょう。祝、お願いします。
と、その前に。はじまり編、はじまります。
世界は、混沌の中にあった。天も地もなく、生き物もいない。ただ、冷たかった。やがて静と動、善と悪、光と闇が渦巻き、天と地に分かれた。
天のさらに高く、高天原に現れ出られた神々は、人々の住む世界を、御守りくださる。
地がととのってゆく様は、とても楽しく、美しい。
狩猟、漁労、採集から稲作へ。しかし、農耕による安定した食糧生産は、人口を増加させると同時に、土地や食糧をめぐる、争いの原因にもなった。
ある日、豊雲神が一粒、涙をこぼされた。その涙は小さな鏡となり、雨にまじって地に落ちる。繰り返される惨劇に、御心を痛められたのだ。
天と地の神々の思いとは裏腹に、各地で小国が生まれ、長い抗争がつづいた。と同時に、バケモノ達が暗躍する。そんな中、集落を捨て、懸命に生きる人が出始めた。
「父さん、見て。大きな魚。捕ったよ。」
あんなに小さかった嬰児が、大きくなったなぁ。それに、なんと逞しい。
「母さん、驚くかな。」
そのまま真っすぐ育っておくれ。
「ねえ、父さん。聞いてる。」
子が、父の顔を覗き込む。
「ああ、聞いているよ。」
優しい目をした父に撫でられ、うれしそうだ。
「大きくなったら、父さんみたいになりたいな。」
幸せそうに笑っている。
「そうか。」
頬に触れ、微笑む親子。
「見て、採れた。」
得意げに笑っている。
「おいしそうね。」
優しそうな母が、子を撫でながら言った。
「父さん、喜ぶかな。」
楽し気だ。
「ええ、きっと。」
親子は微笑み、手をつないで歩き出した。
「こっち、向いて。」
手には花が。
「なあに。」
つぶらな瞳をしている。
「あげる。」
幼児たちが笑った。
美しい。なんと美しいのだろう。人々は、心穏やかに暮らしている。絆で結ばれた人と、共に生きる。互いに思いやり、満たされている。
児が子になって、大人になる。家を建て、共に生き、親になる。
くりかえされる日々の営み。当たり前のように、幸福な時間が流れている。どうか、どうか、このまま。