オカマ万歳!
だが次の日、地下闘技場は閑散としていた。
私は女オーナの部屋に足を運んだ。
これからも地下闘技場で頑張り続けると伝えるためだ。
だって、今の私には夢がある。
そう、いつかゼレスディーノさまと結ばれるという夢が。
それまで、がんばり続けて、いつかきっとゼレスディーノさまに釣り合う女になるの!
私は、ガチャリとドアを開けた。
しかし、そこにいるはずの女オーナーがいない。
代わりにすらりとした男が立っていた。
その男は私を見るなり頭を下げた。
「ゴンカレエ、すまない。君は自由だ」
少々低いが透き通るような声。
まるでテノール歌手のような美声である。
この声質、まさかあのオーナーなのか。
ということは、どういうこと?
女が男になったってこと?
そういうプレイ?
「どうじたの?」
不思議に思った私は尋ねた。
「あのセレスティーノの野郎、私が男だと分かった瞬間に手のひら返しやがった。お前を開放しないとぶち殺すと喚き散らして帰っていきやがった」
もしかして、ゼレスディーノさま、私のためにオーナーを説得してくれたのかしら……
「俺は女以外は興味ない! 男などキショイだろうが! だとよ! あの腐れ外道騎士が!」
あぁ、なるほど、このオーナーはオカマだったのね。
それでゼレスディーノさまの怒りを買ったというわけね。
フン! 身も心も女にならないからよ!
私は違うわ!
私はゼレスディーノさまに処女をささげる女。
もうすでに三回も体を求められる女なのよ。
身も心も女になって、すべてをゼレスディーノさまにささげてみせる!
部屋を出た私は、闘技場の暗い廊下を走り出した。
自由になった私は、ついに明るい日の光の元へと駆けだした。
これが自由!
これが愛なのね!
ゴンカレエ=バーモンド=カラクチニコフは、この暗い地下闘技場とともに死にました。
今から私は、女の子! 明るい明るい女の子! そう、カレエーナ=アマコなのよ。
アマコとなった私は、華麗に変身!
白いレースがふんだんに装飾された可愛いらしいピンクの衣装からこぼれる肩は、少々大柄だけど気にしない❤
ピンクのミニスカートと白いオーバーニーソックスが作り出す絶対領域からは、少々毛深い太ももがのぞく……いいじゃない❤
赤いリボンが映える美しい金髪の下には、割れた顎にむさくるしい無精ひげが青々《あおあお》と! まぁ可愛い❤
ゼレスディーノさま! 今、参りますわ‼
ヘーーーックション!
「セレスティーノ様、お風邪ですか?」
俺の神民であるコウスケという名の男の子が心配そうに声をかけてきた。
どうやら、女オーナーとプレイ中に裸で飛び出してきたのが悪かったようだ。
しかし、仕方ないじゃないか……
確かに服を脱がすところまでは楽しかったんだよ。
でもな……股間についてたんだよ。あれが……
あり得ない!
絶対! あり得ないだろ!
だまされたという感じで、めちゃくちゃ腹が立って。
だから、酒場で争った奴隷を腹いせに開放してやったわ。
あのオーナーの泣き顔が今でも笑える。
味方だと思っていたのに、急に裏切るなんてって顔しやがった。
まぁ、騎士である俺に歯向かうことなんてできやしないから、素直にしたがったみたいだけどな。
だけど、なんだろう……先ほどから悪寒がする。
何か得体のしれないものに取りつかれたような、そんな気が……
いったいこれは何?
恋?
そんなわけあるかーーーい!
えっ! 奴隷にプロポーズしただろうって?
だれが?
俺が?
いつ?
酒場で?
あぁ、あれね……
だって、あの場で俺が騎士の力見せたら騎士ってばれるじゃん。
せっかくお忍びで女遊びしに行っているのに、騎士がそこにいるってだけで目立つじゃん。
だからね、騎士の力を使わないで丸く収めようと思ったのよ。俺って賢いでしょ。
だてにこれでも神民学校の生徒会長務めてないよ!
だけど、あの時、胸倉つかみ上げられちゃったわけなのよね。
確かにね、騎士の力を使えばいちころよ。あんな奴。
でも、ここは目立たず穏便に!
あの時は女オーナーと早く遊びたくて、そわそわしてたんだよな……
あっ! 女じゃなかったな……オカマだったな……
そこで、さっさと酒場から逃げようということで、
とりあえず、あいつの油断を誘っておいて、
そ・こ・か・ら・の・猛ダッシュ!
これでトンズラ作戦成功ってわけよ!
あとは、去り際に、お決まりの捨て台詞!
「ヨシ! 処女脱兎作戦! 成功! また会おう!」
何か変だった?