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君がいるだけで、僕は何でも出来る気がするから。

作者: 古川志穏

目覚まし時計の音で目が覚めた。僕は大きくあくびをしてから、体を起こした。浅い睡眠で夢をたくさん見たので寝た気がしなかった。

今日から仕事に行く日だ。食事はヨーグルトとプロテインを飲んだ。

部屋の中は、ゴミ屋敷で、ゴミをまたいで歩いた。スーツは1着しか持っていない。

僕は食事をすると、パニックになる。食事をすることが怖いと思う。何故なのか分からないが、固形物を食べるとパニックになって吐いてしまうのだ。水が側にあれば、固形物を流し込む事が出来る。苦しくなったら吐く。

けれど、僕は引っ越して来るまでは、食事を普通に摂取出来たし、人一倍食べるタイプだった。

食べ方を忘れてしまったので、食事は恐怖でしかない。


僕は仕事に初めて行った。自己紹介して、美人の愛美さんと仲良くなると、お昼に僕が、水とヨーグルトを食べようとしていると、


「どうして、それだけしか食べないの? だから、もやしみたいに痩せちゃうのよ! 良い育ち盛りなのだから、もっと食べないと」


愛美さんは僕に、


「明日は、私がお弁当を作ってきてあげる」


と言ってきた。


次の日になると、僕は愛美さんの作ってくれたお弁当を食べるのが恐怖でしかなかった。

健康に気を使って、美味しそうなお弁当を見て、ここで「美味しい〜」と言って全部食べなかっら、愛美さんに嫌われてしまう。

僕は、固形物を食べると死んでしまうと感じて吐くことを隠していた。

水が横に置いてあるのを確認して、


「いただきます」


と言って、唐揚げを口にすると、飲み込むことを拒んでいる感覚が襲ってきた。無理に食べないといけないと焦ると、冷や汗が出てくるのを感じた。愛美さんが、「美味しい?」と聞いてくるが、僕には声が届かないほど、切羽詰まった状態だった。


「どうしたの」と覗き込んでくる愛美さんの笑顔の顔が満面の笑みだった。僕は、飲み込もうとしたその時、喉に詰まってパニックになって、吐いてしまった。


「えー、美味しくなかった? 吐くほど不味かったの〜」

と言う言葉に、

「ごめんね」と僕は謝った。そして、一口しか食べていないお弁当を残そうとした。

愛美さんは、激怒して、


「もう、良いです。せっかく作ったのに。私のお弁当で不味いと言われたことはなかったのに、ショックです」


「ゴメン、言い訳になるけど、僕は、口の中で溶けるものしか食べられないんだ。温かいものも、固形物も食べれない。冷たいものは食べられる時もあるけれど」


「どうして、そうなったの?」

「どうして、こうなったのか分からない。気づいたら、固形物とか温かいものが、食べられなくなったんだ」

「何時から?」

「多分、こっちに引っ越して来た頃からだと思います。拒食症とは違う。拒食症は全て吐いてしまうが、僕の場合は、シュークリームも食べることができるし、チョコレートも食べることができる。全然、痩せたいと思ってないんだ」


と言って愛美さんの事を見た。


「食事がまともに食べることができないなんて体にも悪いし、食べているものはほとんど甘いものでしょう。治した方がいいよ。美形で痩せていて、ほとんどもやしみたいなんだから」


と言われて、


「治すって言ってもどうやって?」

「よく噛んで食べてみて、時間はかかるけれど咀嚼して液状にしたら食べられるかも知れないじゃない」

と言われて、愛美さんが僕に、


「口を開けて、はい、あーん」


と言って大きめの唐揚げを口に入れようとしてきて、拒否しようとしたが口を開けてしまった。


「はい、噛んで、噛んで、ひたすら噛んで。大丈夫。噛んでいれば自然と食べることができる」


と言われ、とにかく噛んだ。僕は飲み込む時に不安を感じるのだ。でも、飲み込むことが出来た。


「食べることが出来た」


と呟くと、


「良かったー、はい、次は卵焼きいって見ようか! はい、あーんして」


と言われて、食べさせて貰う事が恥ずかしくなった。周りの社員が見ている。


「噛んで、噛んで、飲み込んだらダメだよ、まだ噛むんだよー」


と言われて噛んでいたら飲み込めそうな気がしてきた、僕は飲み込むと、愛美さんは、


「口を開けて見て。ちゃんと食べられたね。えらーい、すごーぃ。じゃ、次」


と繰り返して、食べさせてくれた。


「噛めば大丈夫よ。食べるのに時間かかったけど、噛めば食べられる事が分かっただけでも、良かったし」


と言って、愛美さんが喜んでくれた。僕も愛美さんが居てくれたら大丈夫そうな気がしてきた。


「月曜、お弁当を作ってきてあげるね」


帰り道、僕は雨が降っていて傘を忘れて立ち往生していた。後ろから声がした。愛美さんだった。


「戸田くん、私の車で送ってあげる。歩きてきて傘がないんでしょう? ついでにファミレスで夕飯食べない?」


と誘ってくれたので、助手席に乗せて貰った。車の中で話をしていた。


「私ね、夜の道を見ていると思い出す事があるの。2年ぐらい前かな、今の仕事ではなくて、家の近くの会社に歩きで通った時、冬の夜道で、ヤンキー3人にレイプされそうになった時、怖くて声も出なくて、万事休すかと思った時に、助けてくれた男の人がいたの。物凄く強くて、私その人のことを好きになってしまったの。その人、大丈夫ですかって? 言って月明かりで見た男の顔が戸田くんに似ていたの。でも、もっとがっしりしていたし戸田くんじゃないし」


と言う、愛美さんの話を訊いて、僕は焦った。2年ぐらい前と言うと、確か、この近くの友達の家に泊まった時に、夜中に眠れなくて散歩していたら悲鳴がして、助けた女性が、彼女だったのか。

僕は、空手を中高大と習っていたので喧嘩には強い。黙っていると、愛美さんが、


「ねえ、戸田くんじゃないよね」


と聞かれて、


「僕だったら、どうします?」

「いゃだ! そんなに痩せていて、勝てると思えないけど」


僕は、大学時代は筋肉質なタイプだった。でも、急激に痩せてしまって以前の面影はない。


「そうですよ、僕じゃないです」


と言って苦笑した。と話していたら、愛美さんのよく行くというファミレスに着いた。

車の運転をしているので、愛美さんは、お酒は飲めない。僕はワインをワイングラス1杯飲んだだけで、顔が真っ赤になって、眠くなるので飲まない。


「ねえ何を注文する? 私は、ステーキとサラダとドリンクバー。戸田くんは?」

「僕は、チーズハンバーグが食べたいんだけど、カルボナーラにしておく」


とウェイトレスに言って、話を始めた。自然と恋の話になった。


「私ね、好きになった人に告白はしないんだ。好きなタイプの男性には、最初に言うの。白いバラを12本プレゼントして貰って告白されるのが夢だって」

「白いバラ? 赤いバラじゃないの?」

「うん。花言葉は愛の言葉と知っているけれど、それは関係なく、白いバラか好きなの。ロマンチックでしょう」


それを訊いて、僕が花を触ると蕁麻疹が出来ることを話そうか迷った。遠回しに、


「愛美さんは、虫とか嫌いじゃないの?」

「え、虫? 私は嫌いな虫はカエルぐらいかな」

「僕、虫時に毛虫が嫌いで、花が触れないんだ」


言ってしまって後悔した。告白は出来ないと言っていることになる。


「そうなんだ」


と言った時に料理が運ばれてきた。愛美さんは、ナイフとホークを器用に使って綺麗に食べる。僕は、カルボナーラをグルグルとかき混ぜるようにして何時までも、食べないでいた。

愛美さんは、話を恋の話に戻した。


「私、ギャップに弱いのよね。例えば、男っぽいイケメンがスーツ姿で雨に濡れながら私が出てくるのを何時間も待っているというドラマのワンシーンが好きなの」


と愛美さんが、言うのを聞きながら、


「そうなんんですね」


としか言わなかった。僕は、一口もカルボナーラを食べることが出来ずに、パスタを巻いていた。その事に気がついたのか、


「ゴメン、1人で話して。食事をするのが怖いんだっね。また食べさせてあげる」

「それは、恥かしい」


と言って、照れた。愛美さんは、コーヒーや紅茶を飲んでいた。僕が食べ終わるのを待つらしい。愛美さんは、余計な話をするのをやめて僕が食事に集中出来るように、僕が食べるのを、ティーカップを持って、時々、紅茶をすすりながら、僕を見つめていた。


「何か、言ってくださいよ」


と、僕は顔を上げて言っていた。


「噛んで食べれば良いの。時間はあるわ。恐怖心をなくすために、よく噛んでたべるの。噛まないで飲み込んたら苦しくなる」


と愛美さんは言った。

僕の幼い頃に母親に、よく噛んで食べなさいとよく言われた。僕は子供に戻った気持ちになった。

ただ、目の前にある食べ物を咀嚼するために、僕はここにいるように思えた。

愛美さんは、リラックスしているのか、僕に見せる目は優しかったが、目の前にある食べ物が何時になっても減らないことに焦りを感じていた。


「この皿を空にするためには、食べなくてはいけない」


と、僕は呟いた。


「何?」


と愛美さんは言ったが、僕の呟きには意味がなかった。そのままの意味だ。僕は噛んだ。忘れていた感覚を取り戻すために噛んだ。食事が終わった時に、愛美さんは、


「すごーい、やったじゃん。やれば出来るのよ、戸田くんは」


と言って、僕の頭をなぜた。完全に子供扱いされていると思った。でも、嬉しかった。

4ヶ月間、ほとんど固形物は食べることが出来なかったが、愛美さんのおかげで、食べることが出来るようになった。

会計の時は、割り勘だった。愛美さんは、車の中で、


「明日、仕事休みだから遊びに行かない?」

「どこに行くんでか?」

「絶叫マシンがある、遊園地」


と言われて、顔が引きっった。高所恐怖症だということを言った方が良いのか、迷ったが言うことにした。


「僕、ジェットコースターとか大嫌いで、心臓がドキドキ言って、酷い時は過呼吸になる高所恐怖症なんだ」


と言うと、愛美さんは、


「そうなの。つまんない。皆そういうんだよね。何回も急降下する絶叫マシンに乗ることを知った友達は、次から一緒に行ってくれなくなる。残念だなー、戸田くんだったら一緒に行ってくれると思ったのにー」


と言うけど、どうしようか迷った。


「でも、僕大丈夫です。恐怖症を克服しないと、これから愛美さんとデート出来ないんでしょう」

「私、デートは遊園地って決めているからね」

「僕、行きます。遊園地に」

「過呼吸になるんじゃなかったの? 大丈夫?」

「もう、10年間乗ってないから、平気になっていたりして」


と言って、明日の朝の8時に迎えに来てくれると約束してしまったけれど、部屋に入り、明日のことを考えたりすると、本当に大丈夫なのか、心配になってきた。

とにかく、お風呂に入って早めに寝た。起きた時に、悪夢を見たのでそれが、本当にならないか心配になった。ジェットコースターに乗って、失禁して笑われている夢だ。

僕は、8時に間に合うように用意して待っていた。時間通りに愛美さんは、迎えに来てくれた。


「どう、眠れた?」


と愛美さんは、聞いてきた。


「一応は、眠れました」


と言う僕。車の中で話をするのは楽しいけれど、今から行くところは、観覧車や絶叫マシンばかりある遊園地。夢のようになったりしないか、心配になった。


「お弁当を持ってきたから、お昼に食べようね」


と愛美さんが、言った。車の中で音楽を聴きながら向かった。それにしても、普段の愛美さんも、綺麗だなと思いながら見ていた。


「あんまり、見つめないでよ。美形の戸田くんに見つめられると照れるんだ」


と言う言葉がかえってきた。

美形と言う言葉には抵抗があった。中性的と言う言葉は僕には似合わない。元々、筋肉質で、ムキムキのマッチョだった僕に、その言葉は似合わない。


「ねえ、朝ご飯、食べてきた? ちゃんと食べられるようになった?」


と言う言葉に、


「僕は料理はしないので、買ってきたものをチンして食べました」


愛美さんが、いないと食事に恐怖心がまだある。愛美さんは、僕の方をチラッと見て、


「ねえ、もうソロソロ、その他人行儀な物の言い方やめようよ」


と愛美さんは言ってきた。確かに僕は敬語に近い喋り方をしてきたけれど直すのは難しい。


「私の事は、愛美と呼ぶか、アイミンと呼んで。友達も、アイミンと呼んでいるから」

「アイミンさんは、恋人いるんですか?」

「アイミンと呼んで。恋人は最近までいたよ。向こうが勝手に付き合うのをやめようと言ってきた。なんでって聞いたら、僕には夢があるから付き合えないって。正直に他に好きな人が出来たって言えばいいのに」


そうなんだと思って黙っていたら、遊園地に着いてしまった。


「アイミン、最初は絶叫には乗らないで、メリーゴーランドに乗ろう。僕がスマホで写メ撮るから」


と言う言葉に、


「だーめ、あれに乗ろう」


と言って、アイミンはワクワクしながら、アイスを買って食べながら乗るために並んでいた。

僕は、マジかよ〜と、心の中で言っていたが、見上げるジェットコースターの、急激に上がって行き、一気に急降下して行くのを見て、無理だと思った。


「アイミン、悪いけど、1人で乗って僕はここで待ってるよ」


と言う言葉に、


「えー大丈夫だよ。怖くなんかないよ」


と言って僕の手を握り、僕はそのまま乗せられて、ガタガタと音がして上がっていく。僕の心臓はバクバク言い出した。ゆっくり上がっていき、この時点で失禁物だった。急降下して絶叫した。

終わった後、気持ち悪くなって立てなくなった。

アイミンが、


「楽しかったねー!」


と言って、続けて、


「過呼吸にならなかったね、えらーい」


と言って、座り込んで吐き気を我慢している僕を起こして、


「さあ、次はあれに乗ろう! 今日は、戸田くんも絶叫マシンいけそうだし、楽しんじゃおうか。何回、絶叫マシンに乗れるか、挑戦だー」


と言う言葉を訊いて、遊園地に来たことを後悔し始めていた。アイミンが手を引っ張るので、僕は、引きずられるように歩きながら、目的の場所まで行って並んだ。順番まで回ってくるのか少しでも遅くなれば良いと思った。トイレに行って時間稼ぎをしたりした。

2回目の絶叫マシンに乗っときに、僕は、気を失ってしまった。終わった後にアイミンに笑われて、


「気を失った人初めて見たー」


と、言った。他に僕でも乗れるアトラクションがないか探していたら、低い位置で回転も何もしないジェットコースターがあった。


「これで練習」


と言って乗ったら、怖くなかった。早いだけのジェットコースターだった。ので、アイミンが、


「慣れた? 慣れたらあれやろう」


慣れるわけないのに、今度はグルグル回転する超怖い絶叫マシンに乗ろうと言うので、それは断った。


「大丈夫よ。戸田くんなら大丈夫!」


と、言う言葉に僕は弱いのよね。手を繋いで上機嫌のアイミンと、これから地獄に行くことになる僕。


「僕は、これはムリ、ムリ、ムリ! 絶対にムリだよ」


足がすくんだ。過呼吸になりそうになっていた。それを見ていたアイミンは、


「じゃ私ひとりで乗るよ。ここで待ってて」


と言って僕は、1人で待っていた。直ぐに終わって帰ってきて、楽しそうな顔をしていると思いきや、


「ちょっと、怖いかもしれない。戸田くん、乗らなくて正解だったよ。怖くなくなるまで挑戦し続ける」


と青ざめた顔で言った。アイミンでも、そういうことあるんだなと安心した。アイミンは、


「もう、お昼ね。ご飯にしよう」


と言って、空いているベンチに座って、お弁当をリュックから取り出した。

小さめのお弁当はアイミンので、大きめのお弁当は僕のだと渡してくれた。

おにぎりが、2個、銀紙に包まれていた。お弁当を開けると、おかずで僕の好きなものばかり入っていた。ハンバーグと、卵焼きと、ひじきの煮物と、きんぴらごぼうと、かぼちゃの煮物と、一番好きなエビフライと、アスパラのベーコン焼きと豪華だった。

僕はおにぎりを1口食べると、明太子だった。


「おにぎりは、明太子と紅鮭と昆布とツナマヨ。どれが当たるか分からない。私は紅鮭だったよ」


と言っていると、アイミンが、僕のことを見て、


「食べられるようになったんだね」


とアイミンが笑顔で言った。僕は、その事に気がついて、


「本当だ、アイミンがいるからだと思う。精神的な影響は大いにあると思う」


と言うと、


「僕、水買ってくるの忘れてた。ちょっと買って来るね」


と言って、僕は水を2本買って戻ってきた。戻って食べていると、「美味しい?」と聞いてくるので、


「これ、アイミンか全部作ったの?」

「あー、ママに頼んで作って貰ったと思ったんでしょう? 違いまーす。全部、私が作りました」


僕は、絶叫マシンに乗りたくないので、できるだけ、ゆっくり食べた。元々、早く食べることはムリなのだが。


「噛んで、噛んで、噛んで……」


とたまに言うアイミン。


その度、「分かってるよ」と言う。

少ない量を口に入れて、噛んで、噛んで、を繰り返す。食べ終わるのに、かなりの時間がかかった。食べ終わると、アイミンと歩きながら、僕が、


「お化け屋敷に入らない。僕、好きなんだよね」


と言うと、アイミンは、


「私、お化け屋敷は嫌い! 入るんだったら戸田くんだけ入って!」


と怖がるので、面白い! アイミンも怖がるものがあるんだと思いながら、


「僕も、怖かった絶叫マシンにの乗ったんだから、アイミンには、お化け屋敷に入って貰うよ。それに、人間だよ、怖くないよ」


と言うと、


「私、ここのお化け屋敷は、特に嫌いなの!」


と言って、拒んでいる。僕は、アイミンの怖がる姿が見たくて、無理やり中に入ろうと、今度は僕の方が、手を握り連れて行った。

お化け屋敷の中では、ほとんど真っ暗の状態で、僕の後ろで腕を掴んで離さなかった。


「大丈夫ですよ、これぐらい」


と言うと、いきなりドアが開いてお化けが出てきたら、アイミンは、悲鳴を上げて僕にしがみついて来きた。お化けが怖いなんて、可愛いところがあるんだなたと思っていると、アイミンは、


「きゃーーーっ」


と悲鳴を上げながら突っ走った。行ける道をひたすら走り、お化けをぶん殴って出て行った。僕は、呆気にとられて後をついて行った。悲鳴はドンドン大きくなっていく。お化け役をやっている人間を、ぶちのめしていた。お化けが、悲鳴をあげるのを初めて見た。僕は、急いで彼女の後を追った。そして、外に出た時、


「あー、怖かった」


と、言う言葉に、


「そうは、思えないけど」


と思いながら、ひたすら絶叫マシンに乗ったり、はいたり、記憶が遠のいたり、顔が恐ろしいほど疲れ切っていると思えるほどになるまで、乗って、やっと帰ることになった。

車の中では、ほとんど会話をしなかった。夕食の時間になっても何処にも寄らず、今日は家路に着いた。

僕は、疲れ切ってソファにもたれかかって、そのまま寝てしまった。

目が覚めたのは、次の日の朝だった。仕事に行くことが、億劫に感じたが頑張って行くことにした。

けれど、その日は最悪の日になった。大きなミスをしてしまって、仕事をクビになったのだ。

僕は、その日に職を失った。その日から、アイミンとは会っていない。

新しい仕事をみつけようと必死だった。そして、仕事が決まった。

その日の夜に、僕はスーツを着てアイミンに会いに行った。その日は雨だった。僕は雨の中、傘もささずに待った。

手には12本の白いバラの花束を持って。


「戸田くん?」


僕を見たアイミンは、驚いていた。スーツの上でも分かる、筋肉質になった僕、


「やっぱり、助けてくれたのは、戸田くんだったのね」


白いバラの花束を渡すと、アイミンは、笑顔になった。

読んでくれてありがとうございました。評価とブックマしてくれたら、泣いて喜びます!よろしくお願いいたします。

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