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蹴師(けりし)  作者: 福島崇史
38/55

骨法vs骨法?

ざわめきが波紋の様に拡がる試合場…

それもそのはずである。

新たに蹴速が見せた構え、それは鏡に映したかの如くアレクセイと同じだったのだから…


「ナッ…!?」


観客達と同じく、驚愕の表情を浮かべたアレクセイ。それを面白がるかの様に蹴速が言う…


「へへへ♪驚いたかい大将?骨法には骨法…ってね♪」


「マ、マサカ オマエ モ コッポウ ヲ マナンダ ト イウノカ?」


「さぁてね…手合わせしてみりゃ判んじゃねぇの♪」


「ケッ!」


苦い顔でアレクセイが前に出た。

摺り足でローラースケートを履いてるかの様な動きである。

これに蹴速が身構える…迎撃すべきか?はたまた防御に徹するか?そんな思案を巡らせる中、アレクセイが突然に足を止めた…


〝…っ!?〟


怪訝な表情でアレクセイを睨む蹴速。

何故ならアレクセイは技を出すでも無く、2~3歩前に出ただけの不自然な距離で構えたまま…

しかもその間合いたるや、打撃系の様に離れるでも無く、組技系の様に触れ合うでも無い…

打撃を出せば必ず当たりそうではあるが、近過ぎて逆に威力は殺されそうな距離である。

ヒリつく空気の中、蹴速が問う…


「なんのつもりだい…大将?こんな距離じゃ互いに必倒の打撃は打ち込めねぇだろよ?」


「フンッ!ヤハリ…ナ…」


「へ?」


「ヤハリ オマエ ハ コッポウ ヲ マナンダ ワケデハ ナイ ヨウダナ」


「えっと…なんでそう思った訳?」


「コノ マアイ…コレハ 〝テアイ〟(手合い) ト イッテ コッポウ ヲ マナンダ モノナラ シラヌ ワケガ ナイ! ソレヲ シラヌ オマエ ハ コッポウ ヲ マナンデ ナイ ト イウコトダッ!」


「へへへ…なぁんだ…つまんねぇの!もうバレちまったかよ!」


蹴速は苦笑いを浮かべながら、悪びれるでも無く骨法の構えを真似続けている。


「先代・当麻蹴速…まぁうちの親父なんだけどよ…あの人は世界中のあらゆる格闘技の技術書やビデオを集めててな。吸収出来そうな技術は当麻流蹴体術に取り入れたりしてた訳さ。いや…親父だけじゃねえ、歴代の蹴速がそうして作り上げて来たのが今の当麻流蹴体術の姿なのさ…」


「……」


「で!俺も色々と勉強してな、骨法の技術書やビデオも見漁ったって訳。流石に細かい事までは知らねぇけど、面白い技がいっぱいあるじゃん?」


「ソンナ ツケヤキバ デ オレトノ タタカイ ニ ツウヨウ スルトデモ…?ナメルナッ!!」


怒りで顔を真っ赤にしたアレクセイ、ジャブの様な打撃…骨法で言う〝弾き〟を数発繰り出した!

距離が近く、速い打撃なのも手伝って完全に見切るのは難しい。

しかし…

蹴速は上体を屈めてそれをかわすと、そのまま地に手を着きながら後ろ廻し蹴りを放って見せた!

骨法独自の技〝(さか)廻し蹴り〟である。

だがアレクセイも流石である、きっちりとこれをブロックしている。

しかし驚きは隠せぬ様子で、一旦距離を離しながら…


「オ、オレ ニ サカマワシゲリ ダトッ!?」


「へへ…やっぱ当たんねぇかぁ…でもよ、こんな技は骨法だけじゃなく、他の古武術やカポエラでも使われてるぜ?まぁ有名にしたのが骨法なのは確かだけどな♪」


「グヌゥ…」


「まぁ悪ふざけとお喋りはこれくらいにして、こっからは本来の流儀でイカせて貰うわ♪」


そう言った蹴速が再び構えを変える。

背を丸めた深い前傾姿勢…

左手は顔の前、右手は顔の横…

その両方が拳では無く掌となっている…

前に出された左足はベタ足…

後ろの右足は爪先立ちにて、親指部分に力が溜められているのが判る…

陸上競技のクラウチングスタートに似てはいるが、あそこまで極端に身を沈めている訳では無い。

当麻流蹴体術〝鼠追(ねずお)い〟

獲物を狩る猫の姿を模した構えである。


〝アノ カマエ…イッキ ニ マアイ ヲ ツメテクル ツモリ…カ?ナラバ…〟


アレクセイも蹴速に呼応し構えを変える…

それもまた周囲から驚嘆の声を誘うには充分な程に異質な物であった。









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