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蹴師(けりし)  作者: 福島崇史
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23/55

対照的な2人

アレクセイがファンサービスを行ってる間に突如沸き起こった大きな歓声。

そちらへ目を向けると第1試合が始まるらしく、2人の男が既にリングインを済ませていた。

会場で行われるプロの興行では無いので、当然ながら入場に派手な演出も伴わなければ、安っぽいロック調の入場曲も流れたりはしない。


蹴速が2人の選手を交互に眺めた。

両者、トレーニング用のピッタリとしたウェアを上下に着用している。

先ずは濃紺のウェアを着ている男。

身長は175cmあるか無いか…

体重だって70kg超えているかどうかという、肉体的にはいたって普通の若者だった。

ただ、やたらとギラついた目付きだけは気になる。

短い金髪の下にある整った顔立ちには、気の強さだけが惜し気も無く溢れていた。


そしてその相手。

黒のウェアの胸元には赤く大きなロゴが入っているが、それがブランドのロゴなのか何なのかは判らない。

身長は若者と変わらない175cm程だが、体重で言えば15kgは重そうである。

胸は厚く、腕も脚も太い。

腰回りにも程よく脂肪がついており、マッチョというよりはナチュラルといった印象の肉体だった。

だが若者との何よりの違いは…その佇まいである。

外国人である事とスキンヘッドに顎髭という容姿から正確には判らないが、年齢は恐らく40を超えているだろう。

一見すれば厳つい印象を受けるが、その表情は穏やかで優しさすら感じる…


肉体も印象も年齢も大きく違う両者。

この体格差や年齢差で試合が組まれる辺りが

〝裏格闘〟ならではと言ったところか。

片や体格で勝るが年齢的にはハンデを背負っている…

対する若者は細いながらも、スタミナや負けん気を発揮して勢いで相手を飲み込みかねない。

これは見物(みもの)とばかりに蹴速が舌舐めずりをする。

それを見た高柳…


「よう蹴速…お前はどう見るよ?…この試合」


「超能力者じゃあるまいし、そんなのわかんねぇよ。ただよ…これだけは言えるさ…」


「ん?」


「強い方が勝つっ!!」


「なんやねんそれ!答えになってへんわっ!!」


「ハハハ!まぁまぁ(にい)やん、今日は1観客として楽しませて貰おうや♪」


「ま、それもそやな…」


2人の会話が終わったところで、アレクセイが口を開いた。


「オイ…オマエモ ココデ タタカウツモリ ナラ アノ スキンヘッド ノ オトコ ヨク ミテオケ…」


「へ…あのオッサン?そんなに強いのかい?」


「ヤツハ マダ 5カイ シカ デテナイ シカシ…マケタコト 1ドモナイ」


「へぇ…」


これに目の色の変わった蹴速、少しばかり悪戯っぽい表情でアレクセイに問う…


「あんたとどっちが強いんだい?」


しばらく口を閉ざしていたアレクセイだが、やがて苦虫を噛む様な表情でそれに答えた。


「カテルキ シナイ…」


そのタイミングで選手の紹介が行われる…

若い選手はユーリ。

そしてナチュラルな肉体の古強者、その名をウラジミールとコールされた。

両者のコールが終わり、すかさずゴングが鳴らされる。

そして蹴速達がリングに目を向けた直後、再びけたたましくゴングが打ち鳴らされた…




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