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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 11 白いカラス  作者: 石渡正佳
ファイル11 白いカラス
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苦肉の検査

 翌週池沼が似合っているとはいえない白いスーツ姿で事務所を訪れてきた。男を一人伴っていた。四十歳くらいで柄物のシャツの下にしっかりと筋肉がついてるのがわかった。

 「伊刈さん、初めてお目にかかりますが私はこういう者です」男が差し出した名刺には勝共青年党総本部理事という肩書きが書かれていた。

 「青梅さんですね」

 「いや名刺は青海となっていますが本名は大久保と申します」男はもったいぶって名乗った。指定暴力団大耀会上州一家青海組の幹部だとほのめかしたつもりのようのだった。つまり鯉川の配下ということだ。役所でヤクザの名刺を出せばそれだけで暴対法に触れるので右翼の名刺を出したのだ。実年齢よりも若々しい顔立ちと武闘派の体つきから見て本物の任侠に間違いなかった。

 「栃木エコステーションという会社をご存知ですか」

 伊刈の言葉に大久保は少しだけ顔色を変えた。「ほうさすがは伊刈さんだ。よく私の会社をご存知ですね」大久保は静かに応えた。

 「ちょっと待ってください」伊刈は席を立って長嶋に名刺を見せ、大久保が現れたと耳打ちして同席を求めた。大久保は長嶋の目つきを一目見て本来の身分を悟った様子だった。

 「処分場として使ってもいいのか一応確かめに来たんですよ」結論だけを求めるムダのない言い方だった。

 「大久保さんが白川建設の処分場を買われたってことですね」

 「そういうことです。もう土地の名義変更も終わりました。国税の差押えを解除するのに何千万円もかかりましたよ」

 「なるほど土地までね」

 「どうなんですか」

 「残念ですが処分場の承継は本課の担当なんです。環境事務所は承継届けを受け取っただけで権限がありません」

 「そうなんですか。それならこれから市庁に行きますよ」もう用はないとばかり大久保は立ち上がった。あっさりしたものだった。一秒も時間をムダにしない、これが本物の任侠だと感心した。本課はまさか認めないだろうと思いながら伊刈は大久保と池沼の背中を見送った。

 翌日、今度は水沢と池沼が揃って事務所を訪れた。

 「大久保さんが昨日産対課に行ってねえ、みなし許可施設として承継を認めてもらいましたよ」水沢は満面の笑みだった。

 「ほんとですか。ちょっと待ってください」伊刈はすぐに産対課に問い合わせた。担当の校倉が出た。

 「すいません、その件ですが昨日うっかりして、みなし許可になると説明しちゃったんで撤回したいんですよ」

 「おい相手は本物のあれだぞ」伊刈は声をひそめた。「一度言ったことを間違いだから撤回すると言っても通用しないよ。何千万て金が動いちゃっているし大変なことになるよ」

 「いえちゃんと説明しますよ」若い校倉はブラックリストに載るような本物のヤクザがどんなにしつこいか知らないようだった。

 「まいったな、今水沢が来てるんだ。なんて言ったらいい」

 「みなし許可にはならないと青梅さんに伝えてほしいと言ってください」

 「そんなこと言えるか」

 「じゃ電話代わって下さい」

 「処分場の検査を実施するからそれまで埋め立ては待てと言っておこうか」伊刈はとっさの機転で提案した。

 「いいですよ、事務所が検査してくれるんならお任せします」

 「わかった。とりあえず今日はそういうことにしておく」

 「お願いします」

 本課は能天気なものだと思いながら伊刈は電話を切った。

 「水沢さん、処分場のことなんだけど、まだ検査が終わっていないんで使えませんよ」

 「検査? なんだいそりゃあ」

 「届出書の図面と現地が同じかどうか検査しておかないと」

 「なるほど。で、いつやるんだ」

 「なるべく早くやりますよ。来週の月曜日はどうです」

 「大久保さんに聞いてみないとな。もうあの人の処分場なんだから」

 「それからもう一つ、今のところは池沼さんの名前で承継届けが出てるんですよ。大久保さんでもう一回出してくれないと大久保さんの処分場にはなりませんよ」

 「ああそれはいいんだ。大久保は金を出しただけでね、処分場は麗子のものでいいんだよ」

 「そうですか、池沼さんがやるんですか。でも池沼さんの出された自社物しか埋め立てられませんよ。社長とかされてる会社があるんですか」

 「そのへんは俺に任せてくれよ」

 「大久保さんからまた別の業者に転売されるおつもりってことですか」

 「相変わらず察しがいいね。まあそこんとこは今は言えないけどね」

 「検査のお立会いお願いできますか」

 「ああそうだな」水沢は時間稼ぎのための苦肉の検査だとは気付かず意気揚々と引き上げていった。

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