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私は魔王の隠し子らしいです  作者: (名前未定)
2/2

魔界のお話をしよう。

説明回です。親の名前とか魔界の勢力とか。

「とまあ、デュモリナが5歳になるまでには実はそんな話があったのよ」

そんな言葉で、ギムリナはデュモリナ出生秘話を締めくくる。

一方それを聞いていたデュモリナは、目を白黒させながらも今聞いた話の要約を試みる。


「えーと、つまり? 母さんと魔王……今宣戦布告してるノチノールじゃなくて『セネグローブ』……は、母さんが魔界に出かけた時に偶然出会った。

お互いは一目見た時から相思相愛、けど魔族がそもそも人との婚姻を認めなかった。

そのため母さんは異空間? にこっそり建てた家に住み、魔王……父さんって言った方がいい? は転移魔術でちょくちょくマイホームに移動する通い夫状態。

ある時魔界に起きた事件で父さんは行方不明、幸い娘は見た目が普通の人と同じだったので異空間の家は放棄して王国に逃げ延び、それが10年前、そこからは私の記憶にある通り……って言われてもなあ。

あまりの展開過ぎてついていけてない……一目ぼれ?相思相愛?異空間?逃げ延びたってどういう事?」

「いろいろあってあなたが生まれた、大事なのはそのことだけよ」

ギムリナはお茶をすすりながら答える。ちなみにこのお茶は夜に誕生日ケーキを食べる時用にと買っておかれた高級茶葉なのだが、本来の予定を前倒しして二人に飲まれている。

「ええー……」

脱力し、テーブルにぐったりと突っ伏すデュモリナ。顔も見たこともない父親が実は魔王というショックを受け止めきれずにいる。

「だらしないわよデュモリナ。……私が何でこんな話をしたかわかる?」

「わかんなー……あ、魔王の宣戦布告?」

デュモリナは顔だけを上げてギムリナの方を向き、ギムリナが頷く。

ギムリナとしては、デュモリナが魔王の子であるという話はいずれする必要があった。

実は半年ほど前から話すつもりはあったのだが話すきっかけがつかめず、結局今日になったのである。

また魔王の子であるという事実も、昨日までであればそこまで重大な話ではなかったはずだったのだ。

魔界と人間界は『ゲート』を開くことで行き来が出来るようになるが、それ以外の行き来の手段はない。

今は『ゲート』を開ける人間や魔族がほとんどいないため、魔族と人の間に問題は起きていない。そして今後も起きないはずだった。

そんなようなことをギムリナが話すと、デュモリナは戸惑いを隠せない。

「母さんなんでそんなことまで知ってんの?」

「女には秘密の一つや二つあった方が魅力的でしょ?」

余談だが、デュモリナにとって母親は「この世で一番よくわからない人」である。まず、37歳のはずなのにやたら若々しく、10代後半にしか見えない。正直、よく知らない人には姉妹と言っても通じかねない。

自分が子供の時から顔が変わっていないことに気付き、問い詰めようとしてみたことはあるが、「母さんはそういう人だから」とまともに取り合ってくれないので、追及はあきらめた。

また王の側近や王族、それどころか王本人にタメ口を聞き、平然としている。そのうえ王本人も特に気にしていない風に見える。

王宮付き魔術師という立場なのはわかるが、実際に仕事をしているところはデュモリナは見たことがない。見せてくれる気もないらしい。

母の部屋にこっそり立ち入ってみても部屋には庶民の生活用品しかなく、『魔術師』っぽい、杖とかローブとか魔道具の類を見かけたことがない。

私の母親、魔術師じゃなくて詐欺師なんじゃないのかしらん?とか思ったこともある。しかし一応魔術師であることは間違いないらしく、王宮の人、あるいは街の魔術屋に聞いても「ギムリナさんは間違いなく一級の魔術師だよ」としか言わない。

さておきギムリナは魔術師として優秀であることは間違いなく、デュモリナに対して魔術的な事実について語る場合において間違いを言ったことはない。

なので『なぜ知っているのか』についてはともかく、『言った事は正しい』と信じて疑っていない。

閑話休題。

ギムリナ曰く問題は起きないはずだった。しかし宣戦布告は、どう考えても「魔族が人間界まで攻めてくる」という意味であり、それはつまり魔界側が『ゲート』が開けられることが前提になっている。

2年ほど魔界に行ってないから、また大きく状況が動いたかもしれない、というのはギムリナの弁だ。

「まず、魔界側でゲートを開けるのは4人、セネさん……ああ、父さんね。セネグローブだからセネさん。あとその弟のアラノブラくん。東方のセーロさんと……西方のアレッティカちゃん。

ついでに言うとセネさんと弟の二人は北のひと。で、ノチノールって名前は南方系なの。変でしょう?」

もちろんデュモリナからすれば変でしょうと言われてもいや知らないよという顔しかできない。ただ、雰囲気からすれば魔界の勢力の話か何かなのは察せたため、デュモリナがそう伝えるとギムリナは話を続けた。

「まあ情勢自体は難しいことはあんまりないわよ。まず東が南を目の敵にしてるの。仁とか義理とかそういうのを重んじる東の鬼族が、南の雑種……あ、雑種ってのは現地魔族の呼び方なんだけど。まあ結構好き勝手やっちゃう南を東が押さえつけてたのね。

一応四方のどこが魔界を統べるにふさわしいのか、っていうのを争ってたんだけど、西が代替わりして、そういうの良いから仲よくしませんか、っていう主義のアレッティカちゃんが当主になったのよ。

アレッティカちゃんところは吸血種で、血を主食にしてるのね。逆に生き物が潤沢にいないと死んじゃうから、殺し合いになってごはんが食べられなくなる前に融和路線に踏み切ったんでしょうね。

北は元からみんな仲よくしようって言ってたから、それで西と北は同盟。

二方が固まったから形勢不利と見た東も同調、南も全部は敵に回せず不承不承従った……でも、しばらくして北に政変が起きた、ってのが私の知ってるところ」

そしてギムリナによれば、セネグローブが行方不明になった事件については、南方や東方の関与がありえるらしい。

というよりも南も東も「腕っぷしが強くなければ生きている価値がない」という価値観であり、

東にほとんど負けていた以上南が逆らわないだけで、北が南より弱いとなると、造反が起こってもおかしくない。

ましてやギムリナいわく「北は王であるセネさんが笑っちゃうぐらい弱い」らしく、東が本気になれば北は滅びうる。

しかし「東が北に攻め込んで滅ぶ」のではなく、「セネグローブが行方不明になるだけ」というのが当時から不可解であり、

行方不明事件が起きた当時、それどころか魔界脱出後も手を変え品を変え何らかの痕跡がないか探ってみたものの手掛かりなし。

結局のところ事件未解決のまま北はセネグローブの弟、アラノブラが「仮に」と王位につき、四方を収める盟主は西に移譲。

同盟は変わらずまとまっている、というのがつい1年前までの魔界情勢となる。

西方が全く疑われていない件については、そもそも北の女王であるアレッティカとギムリナが大親友であり、かつアレッティカがギムリナに頭が上がらないため問題を起こすはずがないとのこと。

なし崩し的に「ギムリナは2年前までたまに魔界に行っていた」という事実が語られたが、デュモリナはすでに「まあそのぐらい些細なことか」と流してしまっていた。


王子の幼馴染要素が息をしてないけどもうちょっとだけ待ってください…

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