暗闇
真っ暗な世界に、独りの僕。
「はじめのだいいっぽ!」
「あっ、踏み間違えちゃった☆ 悪いけどもう一回やり直してくれない?」
あなたも覚えているだろう。ゲームで何度もリセットしたあの日々を。
セーブ&ロードを繰り返し、ゴールへ向かって走ったあの日々を。
死んでも、間違えてもその場でリセット。
帳消しにして、そこからスタート。
だけど、人生は『それ』とは違う。
やり直しの効かない一発ゲー。
「踏み間違えた」じゃ絶対済まない。
誰も、遅れた君を待ってはくれない。
――足掻かなきゃ。
――急がなきゃ。
――走らなきゃ。
皆の後ろ姿が見えなくなっても君は走る。
――でも、いつかは気づくんだ。
何で自分は走っていたのだろう、って。
競い合う相手もいない。
追い縋る意味もない。
足掻くほど良い世界じゃない。
――こんな社会で走る意味はあるのかな?
一度気付けば、もう足は動かない。急ぐ気力も尽きてしまう。
「諦めたら楽になれる」。心のどこかで誰かが囁く。
脱力。停滞。空虚。失意。
心が色を失くしていく。
思考が無へと還っていく。
希望も光もここにはない。
ここは暗闇。
独りで真っ暗。
「諦めたらそこで試合終りょ……ごぼっ!!」