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その手
君と生きるこの世界。
もし、今日で世界が終わるなら、僕は彼女の手を引くだろう。
狭い教室から連れ出して、行く当てもなくただ走る。
逃げるように。抗うように。
その手を引いた理由は見つからない。
走る意味もここにはない。
恋も愛も僕にはない。
故に僕には分からない。
世界は巡る。
社会が全て崩れ去っても。
彼女は笑う。
残った二人が僕と君でも。
「ヤバいね」なんて言って笑う。
灰色の世界はいつまでも続く。
終わらない苦しみは絶えず喚く。
それでも僕らは前だけを見る。
足を止めずに、ひたすらに前へ。
終わった世界で僕は思う。
終わり続ける世界で君は笑う。
どこまで行っても世界は灰色。
それでも僕らは探し続ける。
失くした明日を見つけるために。
その手をずっと握るために。
――僕はきっと、君の手を引く。
もし、世界が終わるなら、あなたは何を選びますか?
(引かれる方からしたら迷惑な話かも?)