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夏の二人

 蒸し暑い季節の中、二人の心はすれ違った。

 目が覚めて顔を洗った。

 君はいなくなってしまった。


 気温は32度とちょっと。

 それなりに暑いな、今日は。


 コーヒー飲んで椅子に座った。

 やけにそれは苦かった。


 机の上の手紙。

 ビリビリにして窓から捨てた。


 今日は、日曜。

 誰もいない食卓で朝食を摂る。


 昨日は、何食べた?

 古いことはもう忘れた。


 ふと見た、ごみ箱。

 写真立てが刺さっていたんだ。


 笑ってた、笑ってた。

 一年前の僕らは。


 心が乾いてるみたいだ。

 君の顔も思い出せなくなったんだ。


 笑っていた筈の二人は、

 夜の風に流されてどこかに消えた。


 どうせ悲しくなるのならば、

 出会わない方が良かったんだ。


 君を見つけたあの日の記憶は、

 朝に捨てた。


 僕は目を閉じて寝た。




 深夜、私は家を出た。

 あの人はまだ眠っていた。


 静寂に包まれた歩道を、

 目的地もなくただ歩く。


 嫌いなわけではなかった。

 ただ単に相性が悪かった。


 心の距離がどこか遠くて、

 いつの間にか千切れた。


 歩いて、歩いて。

 彼のことを思い出してる。


 真面目で、不器用で、

 何考えてんのか分からない人。


 私は、どうだろう。

 つまらない女だったりするのかな。


 今さら、考えたって、

 戻るつもりなんてないのに。


 私は、泣いてた。

 泣きながら歩いてんだ。


 ただ幸せでありたかった。

 あなたに愛されたかった。


 何も言わないあなたの瞳に、

 私は映っていなかったけれど。


 どうせ傷つくならば、

 愛さなければよかったんだ。


 あなたと作った思い出は、

 全部捨てた。


 私は夜を歩いていく。




 走って、走って、

 僕は街を駆けた。


 人ごみ、掻き分けて、

 君の姿を探した。


 いなくなって、気付いた。

 自分の愚かさとか馬鹿さに。


 大切に、されていた。

 愛されていたことを知ったんだ。


 どうしても伝えたかった。

 謝らなくちゃいけなかった。


 過去を思い出して、君を追いかけて、

 見つけたんだ。


 泣いてた君に、

 僕は声を掛けたんだ。


「……ごめん」


「遅いよ、バカ」


 僕は君が、

 僕は君が好きなんだ。

 夏は暑くて敵いません。

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