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『 』
壊れた私の、『 』の話。
「この世界は愛で満ちてる」って
「明日はきっといい日だよ」って
あの歌手は必死に歌ってた。
あの人は薄っぺらい笑みを浮かべてた。
――良く分からなかった。愛って何?
――何言ってんだろう。痣が痛む。
笑える人の言葉が分からない。
傷ついていない人が妬ましい。
僕は、
私は、
愛されていないのに。
――そこで笑ってる君を殺したい。
同じ人間で、人は幾らでもいるはずなのに、
――それでも僕らは愛されない。
好き合って、
突き合って、
生んで、疎んで、
殴って、
捨てて、
「空気」
「消えろ」
「喋んな」
「笑うな」
――仕方ないじゃん。
――生きてんだからさ。
笑ってる僕は、見せかけの人形。
中身のない、冷めた空洞。
どうせ、明日はやってこない。
愛で満ちた、人はいない。
――だから、僕は恨むんだ。
一人、暗い地の底で。
独り、夜に、泣いて、哭いて。
誰にも分からない、『 』の話。




