想い出
思い出すのは、恋に恋した自分の姿。
「君はあんまり面白くない」
そう言ってあなたは駆け出して行った。
手の届かないところへ行ってしまった。
残ったものは何もないし、残そうと思ったものも特にない。
けれど、胸に穴が空いたのは何でだろう?
こんなに何かが通り抜けていくのは何でだろう?
傷ついたのかは分からない。悲しいのかも確かじゃない。
でも、これだけは言える。
僕は、あなたが好きだった。
曖昧ではっきりとしない気持ちだったけど、確かに僕はあなたに恋をしていた。
不器用に距離を縮めていった関係も、二人で行った遊園地も、形には残らない思い出だった。
あなたの言葉が頭を反芻する。
何を間違えたのだろう。
精一杯やったことは、あなたがいなくなって無になった。
多分この記憶も次第に掠れて消えていく。
あなたとの思い出も虚ろになって忘れていく。
一か月限りの短い夢は何も為さずにただ終わっていく。
これからも僕はきっと恋をする。
あなたではない誰かに恋をする。
また同じ間違いもするだろう。
あなたとの別れより酷い終わり方もするかもしれない。
それでも僕は恋をする。
恋をしなければ生きていけないから。
恋が何なのかも分からないまま、僕は、恋に恋をする。
恋って何だろう?




