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尊史-02

改行を変更。

 仕事を受ける。つまり、誰かを殺すことになるかもしれない。それは、もしかすると前回受けたトラウマをさらに大きく広げる可能性もある。


(それは、覚悟の上だ。この傭兵稼業、必ずどこかで報いを受けるだろう。)


 ここまで生活を共にし、いくつもの戦場で彼女に助けられたこともある。

 成り行きで陥った関係とはいえ、運命共同体が、崩れようとしている。

 はっきり言えば、恋人と言える間柄の人間が、これ以上ないほど困窮している実情を訴えかけてきたのだ。


「……で、どの仕事にするんだ?」


 仕事を受ける、と決めたが、ブランクのある状態で戦場に出て、そのまま撃破されたのでは洒落にもならない。

 ひとまず肩慣らしになりそうな案件を見繕うことにした。


「ライズテック技術開発部・情報漏洩防止委員会


 件名:敵輸送部隊撃破


 コメント:ルート581を通るシノノメの輸送車両の破壊、および輸送部隊のせん滅を依頼する。

どうやら我が社で開発中のパーツの情報が、シノノメに漏れていたようだ。内通者は処分し、これまでどんな情報が向こうに流れたかも判っている。

 だが、そいつの最後になった仕事を止めることが出来なかった。極秘開発中のパーツと、その設計図が運び出されたようだ。おそらく、件の輸送部隊が運び出すと見ている。こちらで一段階前のデータはバックアップしてある。存分に破壊してもらって結構だ。ただし、敵の戦力は不明だが、歴戦の傭兵諸君にかかれば問題はないだろう。よい結果を期待している。


文責;ライズテック情報漏洩防止委員会   


REWORD:45,000ND」


 ……当座の生活資金を得るにはちょうどいいか。

 45,000程度だと少し羽目を外すとすぐに飛ぶ額だが、報酬が入った後2,3日のうちにまた別の依頼を受ければ何とかなるだろう。

 あとは、経理関連がこの額で問題ないかを最終確認する。


「このくらいの金額でいいか?」


 金額を見た金庫番たる恵令奈は渋い顔をする。事情が事情なだけに、多少安い金額も致し方ないが、少々安く見積もりすぎだ、と顔に浮かんでいる。

 少し思案の時間があったあと、彼女はオペレーターをこちらでやる分割増しに出来ないか、と

提案する。

 確かに、作戦サポートがあちらもちでなくてもいい、という事であれば、向こうのコストを多少減らせる訳だが……交渉してみるか。


 ライズテックの担当と何度かやりとりしたところ、あっさり了承を得られた。なんでも、人を手配する以外にも諸々の手続きでコストがかかるので、そのコストを圧縮できるならば了承する、とのことだった。

 額面は2割増えて54,000NDに。


「……というわけだ。オペレーターさん、頼むぜ?」


 おどけた調子で恵令奈へ伝える。


「ちゃんと生きて帰ってきなさいよ?傭兵さん?」


 ふんぞり返って腕を組みつつ、恵令奈が返す。


 こうして、復帰してから初の仕事を請けることになった。

 作戦開始まで時間は少ない。

 装備を整えるため、ハンガーへ向かう。


「さーって!思いっきり暴れてやろうじゃない!」


 右手にこぶしを握り、勢いよく突き出しながら、恵令奈。

 すこしはしゃいでいるように見える。俺の復帰が嬉しい、ということなのか。


「お前が戦闘するわけじゃねえだろ」


 左目を瞑り、靴紐を結びつつ俺はツッコミを入れる。

 そのまま恵令奈の後を追って速足で追いつき、ハンガーまで歩いた。


 この時、きっと気づくことは出来なかった。敵勢力がどんな状況か、誰を戦力としているか、なんて、判るわけがないのだ。

 いかに同じ組織で仕事を探していても、昨日敵陣営にいた傭兵が、金払いがいいからと翌日には相手側にいる、なんてことがあるが、次に誰が相手になるか、なんて、LASが教えてくれるわけはない。

 つまり、あの時の生き残りが、復讐者が、いや、コアユニットの素材があんなところで相まみえるなんて、想像もできなかった。

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