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亮平-05

 残る敵機はあと3機。


 敵機を撃破した感慨に浸る暇もなく、擱座した敵機に向け、別の機体からの銃

撃。IFFが反応しなくなった途端に、敵機の反応があるところへAIは打ち込んで

きた。


「敵味方の区別は信号だけってか……」


 冷徹を通り越した対応をみて冷たいものが背筋を走る。


 ---これが戦闘。戦場か。


 訓練では何度となく戦闘機動を試しているが、実際の戦場に立つとなると緊張感

がまるで違う。死が隣り合わせになっているという恐怖。迫りくる銃弾を掻い潜

り、自分を狙う敵を打ち倒す高揚感。

 いろんな極限がないまぜになり、計り知れないほどの昂奮が、凍った背筋に再び

熱を入れる。


 兵装を切り替え、背部武装であるミサイルポッドの照準を近くの無人機へ合せる。

ロック完了するまでがじれったく思うが、そこをこらえ、ロックオンと同時にトリ

ガーを引く。

 燃料を燃やしながら弧を描き、無人機を捉えたミサイルが命中。この一発で無人

機を一体沈黙させる。


「次ッ……どあッ」


 ロックオンアラートの方向に振り向こうとしたところに敵機からの銃弾。

 左の肩部装甲に被弾していた。射線に入らないよう気を配っていたはずなのだが、きちんと処理できず、銃口の前に出てしまっていたのだ。


『何をしている?複数の相手をするときの教練(レクチャー)を忘れたのか?!』


 無線から叱責する声。何度となく浴びせられたはずだが、今日はややいら立って

いるように聞こえる。とにかく、ジェネレータのオーバーヒートしない範囲で、

回避機動をとりつつ、自分の銃口で相手を捉え続ける。何度も何度も反復してこな

してきたことだ。

 実戦でいきなり100をだせ、とは、本当にスパルタな教育だと、今更だが思う。

だが、それができない限り、経験からくる操縦の技量で、圧倒的に不利だ、とも

ずっと言われているのだ。

 ここで無人機ごときにてこずっているわけにはいかない。


「敵が複数いるなら、お前のHUDに出ているレーダーに目を配れ。自分と、相手の

 相対位置を回避しながら読み取れ。」

「……アイマム」


 言われたことができない部下を叱りながら教えているような口調だった。

 これで精いっぱいになっているようでは先が知れる。自分の成し遂げたいこと

があるならここで躓くな、目標を排除しろ、と。

 その声音には、そんな気持ちも感じ取れる。


 幸い、被弾した場所は重大なトラブルを起こすような場所でもなく、衝撃だけ

が強かったらしい。それでも壊れるときはあるようだが、今は特に問題ない。

残る2機を片付けることに専念する。

 銃弾が飛んできた方向を見ると、こちらに銃口を向けなおした2機の無人機が

左右に分かれようと飛んでいるところが見えた。そのうち、左に飛んだ方に機

体を向け、ミサイルのシーカーを合わせる。


 ロックオンするまでがもどかしい。


 焦れてしまっては負ける。そう解ってはいるが、制限時間が差し迫っている

今の状況で、戦闘の経験が浅い俺には悠然と回避しながら狙いを定めるだけの

余裕はなかった。


「くそぅッ!」


 短く叫んだその瞬間に、ロック完了の音が耳に届く。それと同時にトリガー

を引いた。そしてそのまま反転し、残るもう一体に向き直る。

 兵装をライフルに戻し、ロックオンを待たず、引き金を何度も引く。


「落ち着け!まだ時間は残っている!!確実に墜とせ!」


 アリスが叱り飛ばす声が聞こえてくるが、構わず打ち込みながら前進する。


2発…5発…残弾ゼロ。


 兵装を背部ミサイルに替えつつ、回避機動をとる。方向を変えた瞬間、機体

があったあたりに無人機が放った銃弾が弾痕を穿っていた。まともに当たって

いれば機動力が相当落ちただろう一撃。また背筋に冷たい汗が流れていく。


(……早くっ)


 シーカーを敵機に合わせるが、思った以上にロックオンに時間がかかってい

る。多分、焦っているせいで、目的を果たすまでの時間を長く感じているのだ。

ブーストダッシュをしながら回避行動をとっていたが、ジェネレーターにある

エネルギーがつきかけていることに気づけなかった。


『ジェネレーター 復帰 マデ アト 10 秒』


 ブースターの推力はゼロになり、機体の速度が極端に低下。転倒することは

ないが、それでも減速によるGは抑えきれない。


「ク……ッソッ……!」

 毒づいたのとほぼ同じに敵機の銃撃にさらされる。


「アホウが!容量使い切るな!……動けるか?」


 銃撃をもらった瞬間、予想していた通りのお叱りが飛んでくる。


 機体の損傷個所を確認。ライフルを使う右腕は中破。これはどうでもいい。

弾切れになっているのだ。動かなくても問題はない。そのほか、頭部レーダー

破損、動力伝達率が70%まで低下。右脚部アクチュエーター異常。


「……なんとか行けるかな」

 跳ね上がる心臓の動きを全身に感じながら、震えを抑えて返答する。


「残り時間が無い、ミサイルとブレードでいけるな?」

 先ほどまでのがなり声から、冷静に確認する声音に変わる。


「どうでもやらなきゃ、ここまでやってきたことが無駄になるだろ?」


「その通りだ。行け。」

 その言葉を受けたと同時に、ブースターに再び火を入れる。

 バランスは機体が自動でとるとはいえ、片脚に損害が出ているため、

開始当初とは全く挙動が変わる。歯を食いしばりながらなんとか自分の

思った方向へ機体を動かし、再びシーカーを敵機に合わせる。


「確実に……」

 シーカーが確実にロック完了するまでが焦れったい。


「……倒す」

 ロック完了の音が耳に届いたその直後、トリガーを引き、全速力で

敵機に向かう。煙を吹き出しながらミサイルは敵へ向かい、着弾する。

自分の機体に左腕を袈裟懸けに構えさせる。


「ここで終われるわけない!あいつをこの手で殺すまで!戦い抜く!」


 左腕から伸びた棒状のエネルギーフィールドが、敵機胴部の装甲を

焼き切り、内部へその刃を届かせる。

 それと同時に、機体から聞こえてきたアナウンスがあった。


『ジェネレーター 復帰 マデ……』

 そのアナウンスを最後まで聞くことはできなかった。


 おそらく無人機のジェネレーターが爆発。俺の機体の間近で起こり、

その爆風で機体は中破までダメージを負った。その時の衝撃はかなりの

もので、経験したことのないような前後左右のシェイクを受け、俺の

意識は途切れた。

【TIPS】FAVの装弾数について

ライフルが弾切れになった理由としては、これがオーディション用の兵装だから、

という理由です。ライフルでも全弾をきっちり撃ち込めれば基本的には倒せるのが

今回の相手なのですが、FAVに乗り慣れてないヒヨッコがそう簡単には

いかないわけで。


実戦ではリロードして対応できるようになります。

それぞれの武器によって変わりますが、アサルトライフルだと、1マグあたり

20~30程度です。このほか、サブマシンガン、ガトリングや

スナイパーライフルがあります。


ミサイルは、今回使っているのは小型のミサイル。こちらもオーディション向け

なので、6発分のミサイルを搭載。

実戦向けになると、小型であれば24発、中型は8発、大型は1、2発程度と想定しています。

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