亮平-04
「ビジネス……ね」
ブリーダー業でも営業したほうがいいんじゃないかと思えるようなスパルタなレ
クチャーだった。短期間でFAVを手足のようとまではいかないものの、戦闘機動を
扱えるくらいにはなった。
そして今、対面してからのことを思い返しては、彼女が俺に対して訓練を施すの
はビジネスだ、そう言い切った時のことを思い出していた。
俺が今いるのは、いよいよオーディションが始まる30秒前の作戦領域だ。
オーディションの内容はいたって単純。示された目標物を、制限時間内に撃破、
破壊すること。
アリーナのような作りをした領域には、簡易的に攻撃機動をとれる無人機が数
機。これをLASが貸与する機体で排除する。
字面で示せば簡単に見える内容だが、訓練を受けなかったものがどうなるかとい
えば、作戦時間の半分も領域に立ってはいられないだろう。数こそは示されなかっ
たが、何体かいる、ということは、十字砲火に晒されることも十分に理解し、位置
を変えながら戦闘しなくてはならない。
「FAVを使うものとして、いや、戦闘行為に身を置くものとして、まず、敵から逃
げる方法を考えろ。」
最初にレクチャーされたことだった。
理由は簡単。生き残れば実績になる作戦もそれなりに存在するのだ。
「FAVはお前の相棒でも、パートナーでもない。道具だ。復讐を成しえるための、
鋼の棺桶だ。そんなものを後生大事にしよう、なんて考えてみろ。最初はうまく
いっても、後からの依頼でいずれ死ぬ目にあうぞ。」
訓練が始まったころからしばらく、何度となく聞かされたことだ。
-追うときは逃げる気になり、逃げるときは追う気になる。
敵と対峙するときに、狙う敵はどうしたら捕捉しやすくなるか、という話になっ
た時に聞かされた言葉だ。無人機にどこまで通用するかはわからんが、ただ、無人
機は、命令された「目標を捉えて排除する」ということを実行するだけだ。
つまり、こちらは基本、回避しつつ、間隙を縫って攻撃していくことになる。
そうこう考えているうちに、作戦開始のカウントダウンが始まる。
ゼロの声が聞こえたと同時に、俺はブーストをふかし、左後ろ方向へスライドした。
予想通り、右にいた無人機は跳躍しつつこちらに機銃を掃射してくる。
4、5発の弾丸が、ちょうど俺の機体があった足元に撃ち込まれていった。
回避機動をとってはいるが、弾を打ち込んできた機体にレティクルを合わせ、ト
リガーを引く。単発のライフルなので、一回引くだけでは一発しか出ない。そのま
ま繰り返し数回トリガーを引いた。
1発は外れ、何発かは装甲の厚いところではじかれる。一発は関節部分に運よく
当たってくれた。狙いをつけていた無人機の動きが格段に鈍る。
今回使っている機体、支給機体とも呼ばれる、言ってしまえば最低ラインの武装
のFAVだ。ライフルと、単発射式のミサイルポッドを搭載した廉価な中量級の機体
なのである。
量産機とも言える機体なので、尖った性能はないし、火力はない。
ついでに言えば、このテストで被弾すれば、その修繕費は受けた人間がそのまま
負う形になる。ミッション失敗……つまり、不合格となれば、多大な負債を抱えた
うえで、摘まみだされることだってあり得るのだ。
そうはならない。
断言できるだけ練習してきた。
機動力が下がった敵機の死角に回り込み、さらに銃撃を浴びせる。
今度はしっかりと狙い、弾倉があるあたりへ集中砲火する。銃弾が装甲を裂き、
さらに叩き込まれた弾丸が弾倉内の弾に当たり誘爆。これで1機沈黙させた。
いやあ……みんなどうやって継続して物を書くんだろう……と思いながら、随分と時間が経ってしまいました
血反吐はいてでも、この物語は完結に向かわせます。