亮平-03
「さて、いよいよLASの登録オーディションだが、聞いておきたいことはあるか?」
最低点を刻み付けた初回のシミュレーター訓練から3か月。
いよいよ実機での戦闘機動の訓練を開始したあたりで、アリスは俺に尋ねてきた。
「聞いておくも何も、俺はアリス(マネージャー)の指図通りしか今は動けない。
オーディションとは実戦形式なのか?くらいしか聞くことがないな。」
いつものように、そう答えつつ、初めて対面した時のことを思い出していた。
シミュレーターで基礎動作の確認と、初回の回避機動のテスト後、日を空けて
アリスと対面することになった。
何度か音声でやり取りをしたことはあったり、自己紹介時にも申告があったの
で女性、ということはわかっていたが、それ以上に経歴や、生い立ちは知らない。
それらのことは大したことじゃない、と深追いする意識を割り振らなかった、と
いうのが大いにあるが、名前と、彼女の今の立場を理解できればそれでいいと思
っていたのだ。
だから、実際に会う、なんて話を持ち掛けられたときは正直面倒くさいと思っ
た。テキストや音声通話だけで成り立つと思い込んでいたからだ。
だが、彼女はそうしなかった。直接対面しようと言い出して、一方的に日程を
言い渡された。まったくこちらの都合を無視された形だ。
待ち合わせは、最初にFAVのシミュレーター訓練を受けたその場所で落ち合う
ことになった。
この時、目にしたのは相当に整った、ブランド服の広告モデルでもやっていけそ
うなくらいの女性が立っていた。プラチナブロンドをアップにして、かっちりとし
たグレーのパンツスーツ。そのスーツを纏ったスレンダーな肢体は、いつかみた凛
とした白百合のような出で立ちで、なんというか、これまでの会話の内容からする
と、随分と想像から離れていた。
「……なんだ?呆けた顔を晒して。これから確実に人を一人殺そうという人間が、
たかが女の一人や二人みて呆けるな。」
やや殺気が籠っている目線で射竦められる。実際、剣呑とした感じのまなざしで
俺を睨んでいたように思う。
「初めまして、だな。私はアリス。アリス=バロウズだ」
右手を差し出しながら、彼女は名乗る。
「……杉屋亮平だ。」
ファーストコンタクトで威圧されたと感じたため、やや憮然とした表情と声で
彼女の右手を取り、握手する。
「ふーむ」
握手を切ったと思いきや、いきなりアリスは俺の体に視線を巡らせ、さらには
背後に回ったりと、身体検査をしてきた。
「何か面白いものでもあるのか?俺に?」
「いや、特別ない。今のところは、だが」
どこか引っかかる物言いをしながら、俺と目線が合うようにまた正面に立つ。
「さて、ビジネスをしよう」
やや不定期ですが、少しずつでもなんとか完結に持ち込みたい所存。。。。
PV数や、もしよければコメントなんていただけたら筆者としては望外の幸福であります……
2019/11)今更設定を練りこんでいる、という何ともアレなやつです。アリスの髪色を変更しました。