亮平-02
改行を変更。
アリス、と名乗った女は、俺がその話にのる、という返答をした後、こう言った。
「私がお前のマネージメントをしてやる」と
そのうえで、必要な時には直接対面しよう、とも。
マネージメントというか、育成という方がいいやり取りが開始された。
メッセージを介して、どういう手続きが必要か、どういう知識や技術の習得が必要か、ということをレクチャーされていく。
まだ実際に会っていないときに、半信半疑で指定されたFAVのガレージに行ったとき、すでに担当は状況を把握していて、俺にシミュレーターを操作するように指示されたあたりで、あの女の本気度をようやく理解した。
シミュレーションの内容は歩行、ジャンプなどの基本動作がメインだったが、講義で聞いていた通りにはなかなか動かせなかった。
一通りの移動操作ができるようになったところで、回避行動のシミュレーションに移る。
相手の射線からいかに早く離脱するか、関節部などの重要なところにいかにダメージをもらわないようにするかなどを訓練するわけだが。
「スコアは控えめに言って、まあ最悪だな」
胃の中を空っぽにするまで吐き倒したあと、ややはっきりしない意識を抱えながら、マネージャーの評価を受ける。
言い返そうにも、言葉を出せなかった。これまで全く体験したこともないような縦横無尽に襲い来る加速、減速時のGで、脳みそがシェイクされ、前後不覚になるレベルだったのだ。
「ただ、初めていろいろ操作をした割には、こちらの指示を理解して動かそうとしているところは見て取れた。あとは、FAVの四肢が自分の手足並みに動かせるように今後の訓練だな。」
そうなるまでは依頼を受けない、とまで言いそうな雰囲気だったが、あの傭兵にとどめを刺すまでになるには必要なことだと、付け加えられた。
そういわれて、いよいよ自分は地獄へ一歩踏み出そうとしているんだと実感した。
その予感は確かに的中はしていた。しかし、それは自分が思っていた以上に、昏く、深い闇の底だった。
一条の光さえも差し込むことのない、怨嗟に塗れた魂の闇だった。
解説:FAV(Flexible Armored Vehicle)
→蔑称;鉄棺
FCS、ジェネレーター、ジャンプ/スライド用ブースター、
コックピットが内蔵された胴体部を基幹として、四肢パーツや、背面(両肩
部)部武装の換装が可能な兵器。
胴体そのものも、軽量級、重量級、中量級と、おおわれている装甲の厚さ
(重さ)によってクラスわけされており、搭乗者や、作戦内容によって兵
装を変えて戦闘できる。
主武装とするのは前腕部マニピュレータで握らせるライフル型の武装が多い
が、 乗り手によっては腕部そのものを武器に置き換えた兵装を使うものも
いる。
肩(背)部武装ユニットは、腕部に搭載するものよりも強力だったり、よ
り高性能な誘導性を持つ兵装が多い。各接続ポイントは規格化されてお
り、製造企業が違うパーツであっても接続、使用することを可能にして
いる。内臓部品であるFCSユニット、ジェネレーターユニットやブースター
ユニットも換装可能であり、カスタマイズ性の高い兵器群である。
LAS(Lance And Shield)
→世界の傭兵たちは基本的に互助組織ともいる団体に所属する。
傭兵組織は一時乱立状態にあったが、統廃合が繰り返され、最終的に企業が
運営していた組織はなくなり、2大企業それぞれの私兵集団として吸収。
傭兵が自発的に作り上げた傭兵組織が残ることとなった。
LASはその成り立ち上、与する企業を特定しない。迷子の捜索から、組織の
最重要機密に至るまで、節操ない依頼がある。
システム上に多くの謎が残されている、というもっぱらの噂があるが、流言
飛語の域を出ないことと、真実に近づいたものは誰一人生き残ってない(記
憶を改変されたり洗脳される)ため、この組織の本来の役割にだれも気づけ
ない。