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アルカディア=コード 天災へと挑みし者  作者: オワタマン
Chapter─壱 運命を知る刻
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変革はいつだって唐突に─参

 命を狙われている。そんな言葉、この生活の中で耳にする事など無いと思っていた。しかも、自分の命でも、シズハの命でもなく、つい先程まで名前も知らなかった少女の命への警鐘。

 唐突にそんな事を打ち明かされても、実感は何も沸かない。家に置いてほしいなどと言われても、危険な賭けに身を投じる人間がいるとは思えない……のだが。


「命を狙われてる……って、そんなの、放っておく方が無理だよねっ!」

なんて、得意気な表情をしてみせる。


 ……今回ばかりは叱ってやらなくては。何せ今回は、シズハの浅はかな言動一つで、こっちの身も危険に晒す事になってしまうかもしれないのだから。

「シズハ、ちょっとこっち向け」

と、シズハを振り向かせてから、その両頬を軽く掌で押さえ付ける。

「ふぉう……っ!? ……ど、どうひたの? センひゃん」

シズハは目を丸くして、困惑した様子を浮かべる。

 ──状況を分かっていなさそうなシズハに対して、僅かに苛立ちを覚えてしまった。


「どうしたもこうしたもあるか! もしあの子を家に置いたとしたら、こっちも危なくなるかもしれないんだぞ!?」

怒号を上げてから、酷く顔を顰めてシズハを睨み付けていた事に気付く。気付いた時にはシズハは怯えた様子で俺の目を見ていた。


「でも……っ。私は……!」

 徐々にシズハの目に涙が溜まっていくのが見えて、自分の過ちを認識する。


 ──しまった……。俺はなんて事を。


 などと狼狽えるのも束の間、すぐにシズハは表情を戻して、両手の平で俺の頬を押さえ付けてきた。先程シズハにした事を、そっくりそのままやり返されたのだ。つい「ゔぇっ」と情けない声が漏れてしまう。


「ふっふっふ……。センちゃんが私の泣きに弱いのは知ってるんだから……」 

 その悪意ある微笑の中で、未だに涙が浮かんでいるのが見えて、俺は結局何も言い返せなかった。


「別に、ただの気まぐれとか、楽しそうだからとか、そういうのじゃないんだ」

 シズハは後ろを向いて、顔を見せないようにしながらそう言った。

「あの子、私達を見つけた時、凄く嬉しそうな表情(かお)してた。私達を、見ず知らずの私達を信用してくれたんだよ……」


 ──俺が馬鹿らしかった。結局の所、シズハは軽い気持ちであの少女──琴乃アリアを匿う、と言ったのではない。彼女の抱いた希望を、シズハは見抜いていたのだろう。


「……本当に、大丈夫だと思うのか?」

 こんな事を聞く意味は無い。答えは既に分かっている。


「大丈夫だよ!」

「その根拠は?」


「だって私、強いもの!」

と、輝かんばかりの笑顔で言い放つ。

彼女はそう。どんな逆境であれ、本当にその一言で覚悟を決めるのだ。

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