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アルカディア=コード 天災へと挑みし者  作者: オワタマン
Chapter─壱 運命を知る刻
5/15

変革はいつだって唐突に─弐

「協力してもらいたい事があるんだ。」


 先生の眼鏡越しに映ったものは、普段の柔和な眼差しとは打って変わって、鋭くこちらを睨む眼光。それだけで事の重大さはひしひしと伝わるし、きっと断らせてもくれないのだろう。


「……!」

 シズハはどうやら乗り気らしく、目を輝かせて話の続きを待っていた。こいつは本当に人助けの気配には敏感なんだ。


 シズハの反応を見た先生は一瞬だけ目を丸くして、すぐに目を細め、

「片霧、乗り気なのは良い心掛けだ。でも、もしかしたら期待外れになってしまうかもしれないよ」

 どんとこい、と言わんばかりに胸を張るシズハに、先生の強ばっていた表情も、いつの間にかに柔和な表情に戻っていた。


 先生は俺に向かってハンドサインで『OK?』と示していた。そのサインに苦笑いで返すと、先生からも同じく苦笑いが返ってきた。


「それじゃあ、詳しくはシミュレーションルームの方で話そうか」

 そう言うと先生は席を立ち、足早にシミュレーションルームへと向かって行った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 シミュレーションルームには、先生の他にもう一人、しなやかな黒髪を末端で一つ縛りにしている少女が待っていた。


「あら、貴方達が叔父様の言っていた方達ね」


 先生の事を叔父様と呼ぶその少女は、こちらに気付くと柔らかに表情を崩してみせた。

「叔父様のお話を聞いて頂けたのですね。嬉しい……」

深き慈愛を感じる彼女の微笑みに、少しだけ戸惑ってしまう。

 こちらが軽く会釈すると、少女の方からこちらに歩み寄り、雪のように白い手を差し出し握手を促された。


 恐る恐る握手を交わすと、彼女はにこやかに微笑んで、

「これからしばらくお世話になりますね」

と言った。


 ──はい?


 聞き返す間もなく、少女はシズハとも握手を交わし、シミュレーションルームから去っていってしまった。シズハも同じように言われたのか、呆気に取られたまま出口の方を眺めていた。


「あの、先生、これは、どういう」

 あまりに唐突な事態に、つい片言になってしまう。


 先生は頭を抱え、大きく溜息をついた。

「彼女は琴乃アリアといって、私の姪なんだがね……少し、ほんの少しの間だけ、君達の家に置いてあげて欲しいんだよ」

「へ……?」


 あまりに唐突で、つい素っ頓狂な声が漏れてしまう。


「ちょっと……それは突然すぎませんか、先生」

 さっきまで目を輝かせていたはずのシズハは、驚きを隠すつもりなのか真顔で先生に問いかけている。


 先生は申し訳無さそうに目を伏せると、

「これにはちゃんとした事情があってね……今、あの子を一人にしておく訳にはいかないんだよ」

 先生の声は若干震えていて、ただの冗談でも、押し付けでもない事は把握した。


「彼女は、今」

一呼吸を置き、再び言葉を紡ぎだす。

「──命を、狙われているんだ」

 蚊の泣くような声で呟かれたそれは、今までの先生の発言のどれよりも重いものだった。

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