少年と犬
いきなり「犬と少年でなんか話を書こう」と言われて、あーあー言いながら1時間半ぐらいで作った妄想作品です。
一応短編扱いにしてますが、もしかしたら続きを上げるかもしれません(適当)
その犬は倒れていた
あの村では熊狩りが大きな稼ぎ手だった。近場の山から頻繁に村に来ては、作物を酷く荒らし、家畜を喰い散らかす…そんな熊を村人からの依頼で狩り、その肉を喰らい、毛皮を売って生計を立てる…それが熊狩りだ。
生活は安定しない。しかも一歩間違えれば…狩るはずの対象に、逆に狩られる。
そんな自殺志願者のようなことを生業としていたのが、私の主人だ。
彼は若くして高い評価を受ける熊狩りであり、必然的に村人からの依頼も頻繁に訪れる、熊狩りには珍しいそれ一つで生活できる人だった。
そこに弱さがあったのだろう。
あの時彼は、猟銃が命中し倒れて動かなくなった熊に近付いていった。吠えて服を噛み引き止めようとした私に「今まで殺し損ねた奴がいたか?」と答え…
私の読み通り、熊はまだ死んでいなかった。致命傷ではあったが、手の届く範囲にいる人間の、喉元を裂く程度の力は残っていたらしい。
彼は死んだ。さらに熊は私をも切り裂かんとした。だが、爪が届いたのは私の左足の…人間のいう脛であった。
すんでのところで回避したが、毛皮を裂かれてしまった。
その攻撃で力を使い果たした熊はそのままうつ伏せに倒れ込み、今度こそ死んだ。
私は彼の作り出す血の池に身を横たえ、そのままそこにいた。
彼が死んだとわかった途端、世界から輝きも色も失われたのだ。
だがそこに、とても小さな光が現れた
理解できたけどそれを受け入れたくなかった。目の前に、喉が裂けて血まみれの人と、熊と犬が倒れているなんて、まるでスプラッター映画じゃないか。
人と熊はどう見ても死んでる。どっちも血まみれだしピクリともも動かない。
だけど犬はわずかに動いていた。だから服の一部を破り、ケガしていた左足に巻いてあげた。
たまたま「汚れてもいいように」ってボロ服着てて良かったよ。
とりあえず犬を抱き上げ…ようとしたら、そんな必要はないってことなのか、立ち上がった。
「で…どうしよう?実は僕、迷子なんだ。」
そう。犬の応急処置をしたはいいけど、探検家気取りで山に入って帰り道がわからなくなって、ふらふら歩いてたらここに着いたんだ…
(正直、これだけで終わると「熊と人と犬」ってタイトルの方が正しい感じもするような…)