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第二章 訪問 (3)

オフィーリア星系に表敬訪問を行う為、航宙していたチェスター・アーサー大将率いるアンドリュー星系航宙軍第一艦隊は、ついにオフィーリア星系に到着した。

初めて見るオフィーリア星系の経済力と軍事力にチェスターは、ヤマモト代表の思惑が上手く進むか、不安がよぎった。そしてオフィーリア星系から連絡の受けていない跳躍点をスコープビジョンに捉えたチェスターは、一抹の疑念が生じた。

第二章 訪問


(3)

オフィーリア星系。恒星オフィーリアの惑星公転軌道面上方にあるアンドリュー星系方面跳躍点が揺らいだ。

 最初、ヘーメラー級航宙駆逐艦四八隻が現れると次々と航宙駆逐艦が出現した。一九二隻の航宙駆逐艦が四か所で三角形の頭部部分を構成すると、その後にハインリヒ級航宙軽巡航艦六四隻が、一六隻ずつ四ケ所の航宙駆逐艦の後ろに着いた。

そしてロックウッド級重巡航艦六四隻が同じようにつくと一際大きな艦が現れた。テルマー級巡航戦艦二〇隻とエンリル級巡航戦艦二〇隻だ。

その後にエリザベート級航宙母艦三二隻が現れると、更に一際大きいシャルンホルスト級航宙戦艦二〇隻とマルドーク級航宙戦艦二〇隻がその巨体を現した。

その後に次々とライト級高速補給艦二四隻、訪問団が乗った特別輸送艦、陸戦隊三〇〇〇名が乗る輸送艦一〇隻が現れると最後にビーンズ級哨戒艦一九二隻が現れた。

 総艦数六五九隻のチェスター・アーサー大将率いるアンドリュー星系航宙軍第一艦隊だ。

「全武器管制システムオン。前方シールド最大」

「レーダー管制、異常ないか」

「航路管制、妨害物ないか」

「航法管制、問題ないか」

タフト艦長のマイクが吹き飛ぶような声に

「敵艦反応ありません」

「航路クリアです」

「航法管制問題ありません」

その言葉に少しの違和感を覚えながらも“これが、オフィーリア星系か”そう思っていると

「星系分析出ました」

先に送られてきているオフィーリア星系評議会からの星系マップと、自艦の多元スペクトル分析による映像が、スコープビジョンに映し出された。まだカイパーベルトにより二光時手前だ。恒星オフィーリアを中心としたマップには、なっていない。

「出ました。オフィーリア星系です」

目の前のスコープビジョンに恒星を中心とした星系が現れた。


「オフィーリア恒星、推定恒星年齢四五億年。第一惑星アルテ五光分。第二惑星ファルト八光分。第三惑星首都星クレメント一二光分。第四惑星資源惑星ルント三〇光分。第五惑星同じく資源惑星メンケル一光時。第五惑星表面ガス惑星二.五光時。第六惑星四光時。六光時先に星系を取り巻くようにカイパーベルトがあります」

一呼吸置くと

「第二惑星ファルト衛星メーン。第三惑星クレメント衛星ナイツ。第四惑星衛星バーツ、フォン、ラクル、第五惑星衛星ミルファ、レオン、ダボス、サイオンです。更にマリアルーテ星系方面跳躍点、カイパーベルトより二光時、恒星を中心として九時方向上方にあります。オフィーリア星系評議会からの情報通りです。以上です」

「待って下さい。これは・・」

一呼吸いた後

「下方四時方向。カイパーベルトより三光時の位置に連絡の受けていない跳躍点があります」

時間差で現れた跳躍点をスコープビジョンが“XJP1”と示した。光り輝くオフィーリア恒星に映し出された各惑星の色が美しく見せる中、“XJP1”は、その怪しげな色合いを見せていた。

“どういうことだ。オフィーリア星系評議会は、我が星系に星系マップを送っていたのではないか”

 疑問を持ちながらも回答を出せない位静けさが漂う中、

「アーサー司令官。オフィーリア星系より連絡が来ました」

 跳躍点から星系内への航路に設置されている監視衛星からアンドリュー星系航宙軍が現れたことを首都星に送ったのだろう。タフト艦長から転送されたメッセージを見ると

“オフィーリア星系へようこそ。カイパーベルトの外側にて待たれたし。オフィーリア星系評議会代表リンドン・カーター”メッセージを読むと

「タフト艦長。連絡はこれだけか」

タフトは後ろを振り向いて

「はっ、それだけです」

そう言ってアーサーの顔を見た。

「タフト艦長、ヤマモト代表と話がしたい。連絡を取ってくれ」

チェスターは参謀や艦長が聞こえるようにする為、司令官シートで待っていると2分後、ヤマモト代表が3Dに現れた。自室のようだ。

「ヤマモト代表。オフィーリア星系代表より連絡が入りました」

「連絡ではなんと言っていますか」

「“オフィーリア星系へようこそ。カイパーベルトの外側にて待たれたし。オフィーリア星系評議会代表リンドン・カーター”だけです」

その言葉に不満の顔をあらわにしながら、

「そうですか。仕方ないですね。星系内に入って事故を起こしても仕方ありません。待つしかないでしょう」

「分かりました。それではこの宙域で待つことにします」

そう言うと3Dが消えた。チェスターは、こちらを見ている主席参謀ヘンドル大佐に

「ヘンドル主席参謀。哨戒艦を艦隊周囲に展開し、全方向に走査網を展開しろ。特に未知の跳躍点方面とマリアルーテ星系方面跳躍連方向は、警戒を厳にするように」

そう言うと

「はっ」

と言ってすぐにスクリーンビジョン方向に向き直るとスクリーンパネルにタッチした。


艦隊後方にいた哨戒艦が艦隊を包み込むように広がり始めた。全長一五〇メートル、全幅三〇メートル、全高三〇メートル。艦の大きさは、航宙戦艦と比べ物にならないが、前部及び両舷側に直径三〇メートルのレーダーを持ち、半径七光時の全象限を走査範囲に持つ、索敵レーダー艦である。

自艦防御としてレールキャノンがレーダーの隙間から前方に四門、両舷側に四門ずつ配置されている。プローブは、一艦当り一〇〇〇個搭載している。

 二つの跳躍点方向に進宙した哨戒艦が、艦隊の横方向に位置した哨戒艦より前に出て、自艦正面のレーダーを向けている。艦隊を上から見ると九時方向と四時方向に哨戒艦が突出した感じだ。

 アーサーは、哨戒艦の展開が終わるとタフト艦長に

「各艦長との通信回線を開いてくれ」

と指示を出した。跳躍点から出て標準戦闘隊形のままなので旗艦シュバイツアーから一番離れている艦まで三万キロはある。

ヘッドセットにあるコムを口元にして

「第一艦隊全艦長に告ぐ。こちら司令官チェスター・アーサーだ。オフィーリア星系からの迎えが来るまで、三日間は掛かるだろう。標準戦闘隊形のままではあるが、兵を交代で休ませるように」

そう言うとコムを口元から離した。

司令官シートに座るチェスターは、自分の左後ろに座るオベロン中尉に

「アンリ、お前も休んでよい。特に手伝ってもらうことはない」

そう言って目元を緩ませると

「ありがとうございます」

 アンリはそうは言ったものの航宙艦の中は広く、自分はオブザーバシートと司令フロアの同階にあるオブザーバルームしか往復したことがない。返事はしたものの“疲れてはいないし。何をすれば”と思っているとアンリの顔を見たヘンドル主席参謀が、

「オベロン中尉。艦内でも見てきたらどうだ」

その言葉に

「しかし、自分は・・」

と言うと

「タフト艦長、オベロン中尉に誰か艦内案内を付けてもらえないか」

とチェスターが口を開いた。タフトは目元を緩ませると

「はっ、すぐに準備します」

と言って、前を向き直すとすぐにスクリーンパネルをタッチした。 


士官用レストランで同僚と休憩していたサトミ・ヤマグチは、ポケットに仕舞っていたコール専用のレシーバが、振動した。右ももが“ムズムズ”するように震えている。

“何かしら”と思って右手をスカートの右ポケットに入れ取り出した。レシーバがグリーン点滅している。

“グリーンか。急用じゃないな”と思いながらコール元を見ると“ウィリアム・タフト”と表示されている。

 “えっ”と思うと一緒に休憩していた同僚に

「ごめん。呼び出しがかかった」

「サトミ。今は交代で休憩中よ。どうしたの」

「私も心当たりない。でも点滅が赤ではないので緊急配備でないことは確かね」

「仕方ないか。じゃあまた後でね」

 同僚には、あえて呼び出し元は教えずに席を離れると“艦長が私に呼び出し。何だろう。悪いことしていないし”そう思いながら、自分の上官の元に一度戻ると

「ヤマグチ准尉。すぐにタフト艦長の元に行ってくれ。お前に何か用事があるらしい」

「上官。用事とは何でしょうか。また、自分は司令フロアに上がる権限を持っていません」

そう言うと

「私にもわからない。お前のパスは、司令フロアも開くように変更されている」

“えっ”と思いながら首にコードを通して胸ポケットにつけているIDを見た。


 ヤマグチは、仕方なく司令フロアから三階下にある管制官フロアを出て通路を左に行き司令フロアまで行けるエレベータのパネルにタッチした。

 “スーッ”とドアが開くと“本当だ”ますます不安になりながらエレベータの司令フロアのボタンを押し、ドアが開いたところで右に曲がり司令フロアのパネルに自分のIDをかざした。“開く”驚きが隠せないままに敬礼をしながら

「タフト艦長。ヤマグチ准尉、呼び出しにより出頭しました」

“カチンコチン”になりながら呼び出された理由もわからずに緊張した顔で敬礼をしていると

「君がヤマグチ准尉か」

チェスターは目の前にいる、固まってしまった航宙軍士官を見た。髪の毛はショートカット、大きな目に吸い込まれるような可愛い口元が特徴の女性だった。

「ヤマグチ准尉、硬くならないでくれ。タフト艦長に依頼したのはこの私だ。そこにいるアンリ・オベロン中尉にこの艦内を案内してくれないか」

“この人がアンドリュー星系航宙軍四艦隊総司令官チェスター・アーサー大将”総観閲式でもはるか彼方から見る人だ。切れ長の瞳に濃い緑がかった髪の毛精悍な顔立ちの青年だった。

目の前で初めて見るアンドリュー星系の名門中の名門アーサー家の人間に、まさかお願いモードで頼まれるとは、思いもよらないままに本能的に

「はっ」

と言ったもののその後、体が動かなかった。

だが、よく見ると知り合いのヘンドル大佐が目の前にいた。“助けて”と言う視線を送ると

「ヤマグチ准尉。硬くなるな。そこのかっこいい坊やに艦内を説明してくれ。航宙は、初めてだ」

そう言って、目の前にいる男に視線を流した。その言葉に少しだけ心を緩ますと目の前にいる男を見た。“年齢は私より二つ位上か”そう思いながら目の前にいる男を“じっ”と見た。“あっ、こいつ”そう思うと

「分かりました」

そう言って敬礼を止めると

「オベロン中尉、タフト艦長の命令により艦内を案内します」

そう言ってきびすを返すように体の向きを変えた。


アンリはオブザーバシートを離れ、自分の目の前を歩く女性を見た。司令フロアのドアを出てエレベータへ向うとエレベータの先にある通路を見て

「ここから先は、私のパスではいけません。司令官公室と私室それにオブザーバルームがあるだけです」

そう言ってエレベータの横にあるパネルに自分のパスをかざした。

“僕、オブザーバルームにいるのだけど何も言わないほうがいいみたいだ”そう思って黙っていると

「これから、下の階に行きます」

一階下のボタンを押すと“スーッ”と下ってすぐについた。ドアが開くと

「ここは、タフト艦長やヘンドル主席参謀の私室、そして佐官以上の食堂があります。私のパスではいけませんのですぐにもう一つ降ります」

そう言ってヤマグチ准尉は、ドアを閉めた。次の階についてドアが開くと

「降りましょう。ここは案内できます」

そう言って先に降りた。

「右が私たち尉官クラスのベッドルームがあります。二人一部屋です。下士官クラスは一階下になりますが、四人から八人が一部屋になります」

一呼吸置くと

「あなたの部屋もこの階に」

質問の意味が分からないままにアンリは

「いえ、自分はアーサー司令官からオブザーバルームを使用するようにと言われています」

「オブザーバルーム」

声を一瞬だけ詰まらすと

「そうっ、同じ尉官クラスでも待遇は天と地の差ね」

そう言ってヤマグチ准尉はオベロン中尉の顔を“じっ”と見た。本来なら准尉レベルが中尉にこのような言葉使いは許されないが、この艦では、はるかに専任であり、案内をして貰っている以上アンリは、少し違和感があったが“仕方ない”と思っていた。

「こちらに行きましょう」

そう言って目の前にいる女性がエレベータを降りた後、左に歩き始めた。一〇メートルほど行くと左側に入り口があった。

「ここは士官用の食堂です。味は美味しくはないですが、栄養はしっかりと管理されています。飲酒も可能です。後で寄りましょう」

そう言ってさらに進む女性の後を付いていきながら

“凄い、一度に一〇〇人は食事が出来そうだ”そう思いながら見ていると

「オベロン中尉、珍しいですか。尉官クラスの食堂は」

いつの間にか歩みを止めて自分の方を振り返っていたヤマグチ准尉が声をかけた。

「あっ、いやっ、とても広いなと思って」

「この艦には、このクラスの食堂が二つあります。我々管制官フロア用と各指揮所及び機関管制フロア用です。それぞれの部署から任務の間に食事や休憩が取れないからです」

“あなた、何も知らないの”そんな顔をしながら見つめられると

「いや、ただ大きいなと思って」

そう言って手を自分の前に広げた。


「分かりました。次に行きましょう」

そう言ってまた歩き始めた。先ほどの士官用食堂から入り口が一〇〇メートル程離れた場所に入り口があった。

「ここは、下士官以下の兵の食堂です。先ほどより少し大きく二〇〇人は入れます。これから先は連絡艇用のハッチになります」

そう言うと歩きを止めてくるりとアンリの方に向き直った。そして

「下の階に行きましょう」

そう言うと今来た通路を戻り始めた。士官用の食堂を通り過ぎ、エレベータの前に来るとちょうど、エレベータのドアが開いた。

中から出てきた士官たちが“じろじろ”とアンリの事を見ている。“何者”という目だ。アンリは、ちょっと下を向きながらやり過ごすと

「どうしたんですか。乗りますよ」

そう言って、既にエレベータの中に入っているヤマグチ准尉が、下を向いていたアンリに促すと

「あっ、すみません」

そう言ってアンリも急いで中に入った。今までより少しだけ長い時間乗った後、エレベータのドアが開いた。

「右に行きます。荷電粒子砲制御室です」

そう言って、歩き始めながら

「ここは、管制フロアから攻撃管制システムによる荷電粒子砲制御ができなくなった時の予備指揮所にもなります」

ドアが開くと数人の人間が四方三〇メートルはあるだろうフロアの中で壁一面にあるパネルを見ていた。

「この下一〇メートルの隔壁を通して荷電粒子発生設備が通っています。邪魔にならないように次に行きます」

そう言うとヤマグチ准尉は“さっさ”と荷電粒子砲制御室を出ていった。アンリは制御室を見ながら“凄い。司令フロアでは分からない。ここの様子は”そう思いながら“チラリ”とドアの方を見ているとヤマグチがドアのそばで手招きをしていた。

 元来たエレベータを取りすぎると一段と厳重そうなドアがあった。

「核融合推進装置制御室です。こちらも管制フロアから制御できなくなった場合の予備管制として制御できるようになっています」

ドアを開けるとやはり四方三〇メートルはあろうかという制御室で数人の人たちが壁一面にあるパネルを見ていた。

 “凄い、これだけの艦の推進装置をたったこれだけの人たちで制御しているんだ”関心したように壁一面にある制御パネルを見ていると一人の男がアンリの方を振り向いて

「あんたが、閣下付の中尉さんかい」

なれなれしく言う男の胸についている徽章を見ると“大尉”とあった。急いでアンリが敬礼をすると

「敬礼はいい。ヘンドル大佐から聞いている。中尉よく見ておくんだ。お前は、いずれ俺も抜かしてもっと上に行くだろうが、この巨大な艦を動かしている俺たちのような人間もいることを覚えておいてくれ。それだけでいい」

優しそうな目に奥深い瞳をもつ大尉はアンリの左肩を触ると“よろしく頼む”そんな風に言っている感じがした。


オフィーリア星系の対応に一抹の疑念を抱きながら、外縁部で待つチェスター・アーサー率いるアンドリュー航宙軍第一艦隊。

そして、艦内案内を任されたヤマグチ准尉の理解できないアンリは、戸惑ってしまいました。

来週は、オフィーリア星系の意外な対応、そしてオフィーリアに到着しているもう一つの星系からの訪問団の代表にチェスターは、戸惑います。

次回をお楽しみに。

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