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第二章 訪問 (2)

チェスター・アーサー率いる第一艦隊は、オフィーリア星系への訪問団を乗せ、アンドリュー星系のカイパーベルト抜けると新型ミレニアンXF-02の訓練を始めた。アンリ・オベロンは、初めて見る航宙戦闘機の機動に驚く。

第二章 訪問


(2)

 第一艦隊は、カイパーベルトを惑星公転軌道方向から見て上方から超えると三〇光分進宙していったん停止した。主席参謀マクシミリアン・ヘンドル大佐は、自分の後ろに座るアーサーを振り返って見ると

「アーサー司令官、ミレニアンXF-02の訓練を始めます」

と言って司令官と目を合わせた。

 ヘンドルは、司令官が顎を引いて頷いたことを確認すると前に向き直してスクリーンにタッチした。


旗艦シュバイツアーの戦闘機パイロットウェイティングルームの壁上部にあるランプが赤く点灯した。

「行くぞ」

ソファや椅子でのんびりしていた第一艦隊第一分艦隊航宙戦闘機部隊長シンジ・カジオカ大佐は、各中隊長の顔を見ながら走った。マルドーク級航宙戦艦は、片弦二〇機ずつ、新型ミレニアンXF-02を射出できる。

カジオカは、右舷側の戦闘機射出庫に行くと既に整備員が、カジオカの機の前で待っていた。すぐに体をミレニアンに入り込ませると整備員が、パイロットスーツの二か所にありインジェクターにケーブルを差し込んだ。

それを見ながらヘルメットをかぶりロックすると自分もケーブルをヘルメットの横にあるインジェクターに差し込んだ。

整備員が親指を立てミレニアンの外からコクピットカバーをロックした。カジヤマのミレニアンを覆うようにカバーが両脇からせりあがる。

「シンジ・カジヤマ、AG01タイガー発進準備完了」

「AG01タイガー、エアーロック解除、発進してください」

ミレニアンの下部にあるシートが開くとランチャーロックが外れ、強烈なダウンフォースと共にシュバイツアーの右舷側より発進した。すぐにディスプレイを見てオールグリーンであることを確認すると

「パイソン、ジャガー、ピューマ、チータ。各中隊全機発進したか」

カジオカは、新型ミレニアンになってから各中隊長のコードネームを乗機と同じにしている。

「パイソン中隊。全機発進」

「ジャガー中隊。全機発進」

「ピューマ中隊。全機発進」

「チータ中隊。全機発進」

カジオカ率いる第一分艦隊八〇機が二度に分けて発進できたのを確認すると

「OK。ゴーアヘッド」

カジオカは、意識を右舷前方二五度に取り、航宙戦艦から離れるように急激に乗機を上昇させた。左舷側から発進したミレニアンも左舷に一度上昇した後、全機が付いてくる。  

訓練宙域は艦隊から少し・・と言っても五〇〇〇キロほど離れた宙域だ。既に旧式のダミーミレニアンとダミー戦闘艦が遊弋している。


「AG01全機に告ぐ。こちらタイガー。所定のプログラムで戦闘訓練開始」

 四つの中隊がそれぞれの目標に向かって直進する。カジオカは副隊長のルミナ・オカノ少佐に

「オカノ」

そう言うとヘッドアップディスプレイにマーカされた小さい赤い光点を視認した。すぐに左舷上方に過ぎ去る。今、二機がいた宙域にグリーンのダミー荷電粒子が突き抜けた。

 カジオカは、左舷上方に抜けると同時にオカノが右舷上方に抜けていたのを確認すると赤い光点が消滅したのを確認した。

「オカノ。全方位レーダー展開」

そう言って自分もレーダー全展開をしながら、自分が率いる他の一八機のミレニアンの状況をディスプレイで確認した。全機が生存している。“よしっ”と頭の中で思うと

「タイガー中隊全機。前方の戦闘艦を攻撃」

言うが早いか、すぐさま下方一〇度に機種を向けた。直後、先ほどいた宙域に航宙戦闘機が発射するダミー荷電粒子の束とはけた違いの大きさのグリーンの束が突き抜けた。

 航宙重巡航艦クラスのダミー戦闘艦が主砲を発射したのだ。一〇〇〇キロほど下方に潜ると一挙にヘッドアップディスプレイにある大きな光点を視認した。ミレニアンの片舷に装備されている口径八〇センチ二門、計四門が荷電粒子を発射した。水平展開したミレニアン二〇機による攻撃だ。八〇本の荷電粒子の束が航宙重巡航艦の側面に展開するシールドに突き刺さった。まばゆいほどの光を発するとやがて何事もなかったかのように重巡航艦の側面外殻に変化がなかった。

“だめか”そう思うと、カジオカは、

「タイガー中隊。全機フォーメーションデルタ」

一気に重巡航艦の横を下から上に通り抜けた二〇機の新型ミレニアンは、三機毎三角の辺を作ると六つの三角が大きな六角の位置に配置した。更に中心にカジオカとオカノの機がある。

カジオカが一〇〇〇キロほど上昇した後に大きく背面展開しながら、その体系を作ると一斉に一機四門の荷電粒子の束が一角三機一二門の束になり、更に大きな六つの束にまとまって、重巡航艦の側面シールドにぶつかった。

 まばゆい光を再度出しながら耐えたシールドがやがて破れると側面外殻に直接ぶつかった。一瞬だけ耐えた外殻を破り、艦内部を突き抜けると、そのまま反対の外殻を荷電粒子の巨大な束が突き抜けた。直後膨らんだと思ったダミー航宙重巡航艦が爆発した。

 その時タイガー中隊二〇機は、既に戦闘宙域から離れていた。


「タイガー中隊はやるな」

つい口に出した旗艦シュバイツアーの司令フロアにいる副参謀ハーランド中佐が言うと

主席参謀ヘンドルが

「ああ、第二分艦隊のヤン・カッツエル中隊もすごいが、カジオカ中隊も目を見張るものがある」

二人の会話を聞きながら大将付武官オベロン中尉はオブザーバシートで初めて見る航宙戦闘機の訓練風景にただ見入っていた。

“すごい。これが新型ミレニアンの威力か”そう思いながらつい主席参謀と目が合うと

「オベロン中尉。訓練のたまものだ。どんなに優秀な機体でもパイロットが乗りこなせなければ宝の持ち腐れだ」

そう言って、目元を緩ました。


カイパーベルトを抜けてから二光時。哨戒体制をとり、訓練を行いながら進宙していた第一艦隊が、後一光時でオフィーリア星系方面跳躍点に到着しようとした時、突然司令フロアにブザーが鳴り響いた。タフト艦長が

「どうした」

「はっ、右舷二時方向に艦隊の反応有」

「艦型不明。距離一〇万キロ。艦数およそ五〇」

「軽巡航艦クラス一五。駆逐艦クラス三五」

レーダー管制官から入ってくる報告に

「艦型不明とはどういうことだ。詳しく報告しろ」

「はっ、我が星系及び同盟星系の艦型には有りません」

二人のやり取りにチェスターは、

「ヘンドル主席参謀。どう思う」

いきなりの声に右後ろを振り返りながら

「はっ、距離一〇万キロまで、我が艦隊のレーダーが発見できなかった理由が分かりません。通常ならカイパーベルトの手前で哨戒艦のレーダー網に入るはずです」

一呼吸置くと

「ステルス艦ではないでしょうか」

「ステルス艦。しかし、我が同盟星系でもステルス機能が搭載できるあのような大きさの艦はないぞ」

「申し訳ありません。現在ではそこまでしか言えません。もう一つ。この距離で敵対意識があるならば攻撃を仕掛けてくるのではないでしょうか」

「ヘンドル主席参謀。それはあり得ないのでは。艦数から言っても五〇隻。戦闘艦も軽巡航艦クラスと駆逐艦クラス。まともに戦って勝てる相手ではないと思っているのではないでしょうか」

ハーランド副参謀の言葉に

「では、なぜ我々のレーダーに捉えられるようにした。見えないままにしておけば、我が艦隊に一方的に攻撃できるぞ」

「それは、相手に攻撃の考えがないからではないでしょうか」

主席参謀と副参謀の言葉にチェスターは

「主席参謀、あの方向は第二分艦隊の哨戒宙域だ。オーゲッフェルに行かせよう」

そう言うとチェスターは、マイクを口元に持ってきて第一艦隊第二分艦隊司令官を呼び出した。

「オーゲッフェル少将。既にレーダーで捕捉しているだろうが、右舷二時方向にいる敵味方不明艦を確認してくれ。艦型が不明である以上、相手の攻撃の仕方が分からない。十分に気を付けてくれ」

「はっ」

オーゲッフェルは、ペルリオン星系特殊部隊の時の失敗もあり、今度は第二分艦隊全艦一六二隻で取囲む様に五万キロほど、近付いた時だった。

「司令官。おかしいです」

「なんだ」

攻撃管制官からの言葉に聞き返すと

「敵艦からの攻撃武器反応ありません」

「どういうことだ。分かりやすく言え」

「はっ、攻撃管制システムが敵艦からの武器反応を示していません」

「なんだと」

通常、攻撃管制システムは、敵艦の武器反応を感知して最適な距離から最適な武器を選択する。攻撃距離が長距離ミサイル最大射程で三〇〇〇万キロ、主砲最大射程でも五〇万キロだ。人間が判断するレベルを超えている。その攻撃管制システムが、武器反応がないと提示している。

「ばかな、輸送艦とでもいうのか。あれは、明らかに戦闘艦の形だぞ」


 その時だった。突然、敵味方不明艦隊が、一八〇度反転すると突然オフィーリア星系方面跳躍点に向かった。

「なんだ」

オーゲッフェルが理解できない間に、自分たちでは出せない速度で艦影が消えた。全く理解できないままに仕方なく総司令官との通信回線を開いた。

「アーサー総司令官。いきなりオフィーリア星系方面跳躍点に消えました」

それだけ言うと何も言えないまま下を向いた。

「オーゲッフェル。我々も映像を捉えていた。仕方ない。所定の位置に戻れ」

それだけ言うと一方的に通信回線を切った。チェスターは、“オーゲッフェルには第二分艦隊司令は無理か”そう思いながら第二分艦隊が跳躍点航路の第二象限に戻るのを待った。


「あれが跳躍点」

アンリ・オベロン中尉は初めて見る跳躍点の異様な姿に驚いた。広大な宇宙では、目にも見えない小さなホールだが、そばで見えると何とも言えなかった。

 周りが、オレンジとも赤とも言えない色がガス状に取り巻いている。そしてその外枠からホールの中心に向って青白と淡い白のガス状の帯が伸びている。中心の近くは輝くような光と真っ暗な底なしの暗さが合成されたような不気味な雰囲気を漂わせていた。

“あそこに入るのか”そう思っていると

「第一艦隊全艦に告ぐ。こちら司令官チェスター・アーサーだ。先の敵味方不明艦の事もある。全艦は、跳躍点をオフィーリア星系側に抜けた後、すぐに全武器管制をオンにして、前面シールドを最大にしろ。隊形は標準戦闘隊形とする」

 標準戦闘隊形とは、標準航宙隊形では、前面に展開している哨戒艦を後ろに下らせた隊形だ。それまで全面十字に展開していた哨戒艦が、徐々の速度を落とすと後ろに下り始めた。やがて十字がすぼむ様に輸送艦の後ろに着くと

「全艦跳躍」

タフト艦長の力強い言葉に先頭のヘーメラー級航宙駆逐艦から順次姿を消した。


 アンリは、一瞬体の中に錘が入ったような感覚に襲われた。気怠さを感じながらゆっくりと頭を上げるとスコープビジョンが灰色になっていた。たまにだが、光が正面から後ろに抜けるように過ぎ去っていく。

“なんだ、あの光は”そう思いながら見ていると

「大丈夫か。跳躍中は何もすることはない。自室に戻って休んでもいいぞ」

声の主の方向を見ると司令官が心配そうな顔をして自分を見ていた。

「はっ、大丈夫です。すぐになれると思います」

「オベロン中尉、最初はみんなそんなものだ。航宙軍兵士は、訓練を受けるが、お前の場合は役目だから仕方ない」

ヘンドル主席参謀が、少し心配そうな顔で言った。司令フロアでアンリの体調を話題にしている時だった。

「アーサー総司令官。特別輸送艦から連絡です。電文送ります」

タフト艦長の言葉に自分のシートの前にあるスクリーンを見ると少しあきれ顔になりながら

「仕方あるまい。四日間の跳躍時間がある。跳躍点を出るまで十分に体を休む様に言ってくれ」

なんと特別輸送艦に乗っていた訪問団全員が体調不良を訴えたのだ。“一般民間人である訪問団は、ヤマモト代表も含め、跳躍は初めてだ。若く体が航宙軍兵士として鍛えられているオベロン中尉でも気怠さを感じるのだ。年齢が行っている人には、きついかもしれない”そう思いながらチェスターは、訪問団三〇〇人に十分休養を取るよう指示した。

 

突然現れた未知の艦隊にチェスターは、オーゲッフェルを向かわせるが、取り逃がしてしまう。それもありチェスターは、跳躍にあたって戦闘隊形を取るように指示を出した。

さて、次回は、オフィーリア星系の姿とアンリ・オベロン中尉のちょっとした出来事を描きます。お楽しみに。

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