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僕は勇者五代目!  作者: 齊藤さや
最終章~旅の果てに~
40/43

語られた真実と嘘

前回の冒険の書を読みますか?


はい←

いいえ

「君達は魔物の名前の由来を知っているかい?」


「え?」


「魔界の生き物ではないの?」


「そもそもそこが間違いなんだ。魔界なんてものは存在しない。本来魔物は"魔力を操る生き物"という意味なんだ」


「じゃあリザも魔物なの?」


「それは違う。魔法が使える人間は、呪文を発することで魔法を使う。だが私達魔物は呪文なんか無くとも、自分達の意思でいつでも使えるのだ」


 そう言って魔王は自分の頭上に小さな雷を発生させた。手を動かすような、なんでもないことなんだろう。勇者は今までの戦闘を思い出してみた。確かに魔物は呪文を言っていなかった。リザベラは自分が魔物ではなくてほっとしているようだ。


「次は何故私達一族が魔王と呼ばれているのかだ。魔は魔物の魔で意味は先程言ったとおりだ」


「悪魔の王だと思っていたわ」


「全く、人間は不可思議なことに直面すると、すぐ悪魔だのなんなの持ち出してくる輩がいるから困る。いや、リザベラが悪いわけではないぞ。それで王の方だが、人間のそれと同じだ。魔物をまとめるために存在している。さてと、次は人間と魔物についてだ」


 一呼吸置いてから魔王は再び話始めた。一体なんで僕達に話すのか、真意は不明だ。


「知っての通り、魔物と人間は違う所に住んでいる。人間は街などのコロニーの中、魔物はその周りという具合にだ」


「今までの全ての街には魔物は居なかったわね、襲ってきたことを除けば」


「そうだろう。もともと全てが違う人間と魔物が、どういう神の悪戯か、同じ世界に住んでいる。お互い好む環境も違ったので、本能的に今のような暮らし方になっていった」


「私達が魔物と交わってしまったことが間違いだとでも言いたいのかしら」


「物事には順番ってものがあるが……わかった、今度は君達勇者のことについて話そう。話は私の曾祖父、魔王一代目まで遡る。曾祖父が生まれてからずっと、この世界は平和だった。争い事も起きなければ、日照りや豪雨などの災害に見舞われるようなことも無かった。ただ二つだけ問題が起きた。ひとつは著しい人口増加。もうひとつは些細なことから始まった、血の気の多い若い魔物達同士の喧嘩だ。今は火種ではあるが、戦いに餓えていた魔物達は周囲の人間さえも巻き込み、大戦争を起こしかねない状態だった。曾祖父はこの問題をどうすれば解決できるか夜も寝ずに考えたそうだ。そして出した答えが、第三者として人間に仲裁してもらうことだった」


「人口についてはどうしたのかしら」


「人口を減らす事こそがこの"冒険"だったのだ。勇者は魔物を倒して成長していき、強くなっていく。魔物の王である曾祖父こそが、この法則を作り出したのだ。そして、勇者に君の高曽父が選ばれた。私の曾祖父は側近の一人に、君がもらったのと同じ初期装備と、今私が話したようなことを簡単に書いた匿名の手紙を送らせた。君の高曽父は頭が良かったのだろう、旅をするなら今後のためにと地図を書く紙を持っていった。今勇者が持っているのはその地図だ」


 地図を取り出して、改めて眺める。詳細までは分からないが、おおよその道筋や街などは正確に書かれている。一代目が書いたなんて思ってもみなかった。


「さらに、一代目には他にも仕事があった。それが、今リザベラが持っているような図鑑制作だ。曾祖父は当時の魔物の正確な分布や数を知らなかった。しかし国政のために、調査に自ら赴くことはできなかった。そこで丁度良い機会だと勇者に頼んだのだ。証拠にその図鑑には身体的な特徴と分布しか書かれていないだろう」


「気付かなかったわ。そうよね、戦うための図鑑にはもっと情報があってもいいわね」


「そして見事に君の高曽父は数え切れないほどの魔物を倒し、喧嘩を鎮めた。だが私の曾祖父は手紙にもうひとつ目的を書いていた。それこそが魔王を倒すこと、すなわち私の曾祖父を倒すことであった。その時のことが、勇者一代目直筆のこの手記に書き残されている」


 渡された手記を手に取る。表紙は古ぼけてガサガサしている。けれども中の紙は、新品のように真っ白だった。


「この手記を読んだのは歴代の魔王と勇者、それにこの部屋にいる、私が信頼をおいている側近数名だけだ」


 目を凝らすと僕達の周りに隠れていた側近は、固唾を飲んで見守っていた。

早速リザベラと読んでみる。


――――――――――――

 城外にて


とうとう魔王の城まで辿り着いた。これまで色々な事があった。フィドリャを救いもした。はたして、この冒険で誰一人知る人をを見付けることができなかった魔王とは、どのような魔物であろうか。そして、あの謎の手紙の手掛かりも見付けることが出来るのだろうか。


――――――――――――

 魔王の話


なんということだろう。私はいつの間にか、ただの魔物を倒す狂戦士と化していた。いくら魔王が陰で操っていたとはいえ、私には魔王を倒す資格などない。私も魔王と同じ化け物だ。もう帰る場所など無い。しかしここまで来たからには進むしかない。


――――――――――――

 戦いの直前


なぜ魔王は勇者に倒されなければならないのか。

勇者が魔王に倒されてはいけないのか。

分からない。ただ魔王のシナリオには道は一つしか残されていないのだろう。この世界のためになるのかは不明だが、穢れたこの勇者、後戻りは出来るまい。人間の英雄と魔物の悪役、両方引き受けよう。


――――――――――――

 とどめを刺す前に


最後に約束した。これしか人間と魔物の衝突を避ける方法が無いのならば、勇者と魔王で茶番を演じ続けることを。私はいくら恨まれてもいい、実際に罪の無い魔物を無作為に倒していったのだから。だけれど、魔王の事は悪者にはしたくない。私は出来る限り魔王の事は話さないことにする。

ではまたいつか、次の魔王と勇者が遭うときまで、この手記は預かってもらおう。


魔王、本当にすまない。君の分まで、この命、大切にする。


――――――――――――

 ここで終わっていた。


「つまり、この茶番というのが僕達がしてきた冒険のことなんですか?」


「そうだな。だが、君達はなるべく魔物を倒さないようにしてきた。そして魔物の数は、最盛期と比べて圧倒的に落ち込んでいる。もう戦闘はすべきでないと私は思うのだ」


「僕もそう思います。

この手記と親の話を聞くと、僕も勇者だからあなた、魔王を倒さなければならないのかも知れない。だが僕達は倒すつもりはこれっぽっちも無い。あなたは何もしていないのだから」


「そうかな」


「えっ?」


「本当に私は何もしていないのかな?」


「まさか……」


 思い当たる節がひとつだけある。いや、一代目の魔王についてもあった。


「年代から言っておそらく魔王一代目だと思うんだけど、魔物を操ってフィドリャを襲ったというあの事件は本当だったのか」


「記録に残っていないし、先代からも何も聞かされていないので分からないが、やろうとすればそんなことは容易いな」


「じゃあイルーガスの崩壊は魔王五代目(あんた)がやったの?」


「あぁ、あの街か。どうだったけ、忘れちゃったな。何しろ3年も前の話なんでね。だが悪く思うなよ、やっていることは君も私と同じじゃないか」


「たった3年じゃないか。魔王も戦いは避けたいんじゃないのか?じゃあ僕に見せてくれたあの手記は一体何だったんだ」


 勇者は混乱と共に、魔王に殺意すら覚えた。突然何を言い出すのか。


「あまりに平和なのもつまらないからなぁ」


 その言葉が終わるや否や、勇者は我を忘れて魔王にかかっていった。


冒険の書に書き込みますか?


はい←

いいえ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


書き込みました。

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