ついに登場
前回の冒険の書を読みますか?
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中は想像していたよりもずっと質素だった。歩く度、嫌に静かな城内に二人の足音だけが響く。いくつか扉がある中で、一番威厳のありそうな扉の前に行く。扉に威厳があるというのも不思議なものだが、その扉は装飾が派手というわけでも無く、在るだけで圧倒的な存在感を放っているのだ。手を掛けようとした時、脇から数人の側近らしき魔物が現れた。
「魔王様からは手を出すと言われているが、ただ見ているだけなんて出来ない。えぇい、勇者勝負だ」
リザベラと僕は、
(分かってるわよね)
(ああもちろんだ)とアイコンタクトを取るとかかっていった。
先程の戦いでかなり疲れてはいたが、こちらの方が優勢だ。なるべく力を使わないようしながら剣を交える。手を抜かれていると分かっていながらも押されている側近達は、みな苦い顔をしている。剣を振りながら、うまく側近達を一ヶ所にまとめると、僕はさっと身を引いた。
「リザベラ、後は任せた」
「一気に行くわよ。ラスレビン」
側近はみな痺れて動けなくなった。
「「「「まおうさますみません」」」」
扉を開けると中央に、立派なたてがみを持った魔王がいた。僕はカダルナ城の王のような、国民から好かれる魔物という印象を持った。当然国民は魔物だが。この世の全てを悟ったような顔をしている。
「私が、あなた達が探していた魔王五代目だ。ここに来るまで随分と早かったな」
また五代目だ。自分の名前を呼ばれたのかと思い、僕はつい反応してしまったのだ。
「あなたが魔王なのですね」
「あぁ、まさかこんな姿だとは思わなかっただろうな。ところで後ろのリザベラとやらは何をしているのかね?」
振り向いてみると、地べたに座って図鑑に書き込んでいる。
「図鑑に描いているので少しそのままの姿勢でいてもらってもいいですか?」
「はぁ。なにも絵まで描かんでも……描けたら図鑑を渡してくれないか」
リザベラは手を止めて魔王を睨んだ。絶対渡さないとでも言いたそうに、図鑑を握っている。
「あぁ、そうか。勇者もリザベラも何も知らないんだった」
色々引っ掛かるが、これだけは聞いておきたかった。
「ちょっと待て、何故魔王は僕らの名前を知っているんだ?」
「まずそこからか。理由は簡単だ。あなた達がカヴィエント村を出てから、冒険をずっと見ていたからだ」
「どうやって?」
「やはり気付かれなかったな。出てこい、スライム」
すると、背後からスライムの目だけが出現した。よくよく見れば、透明なスライムだ。
リザベラははっとして図鑑を捲る。
「このページ、間違いじゃなかったのね」
覗いてみると、魔物の姿を書く所には何も描かれていなく、生息地も不明となっていた。
「このクリアスライムが見ている情報を、すべて送ってもらっていた。バレたのは洞穴にいた人間にだけだ。あのときはどうなるかと思ったが」
後をつけられていたなんて……。恐ろしい。
「それはともかく、いや良くは無いが他にも聞きたいことがある」
「先に私の話を聞いてくれないか。終わった後でいくらでも質問を聞こう」
ちょうどリザベラが描き終わったところだった。これで図鑑は完成らしく、達成感で満ち溢れている。目の前に魔王がいるというのに。
「まずは魔物について話そうか」
冒険の書に書き込みますか?
はい←
いいえ
・・・・・・・・
書き込みました。
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側近「魔王様の初登場がこんな雰囲気になってしまいすみません」




