かくれんぼの鬼って大変だよね
前回の冒険の書を読みますか?
はい←
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「勇者起きてよ、リザ達なんでこんな洞穴の奥にいるの?」
初めて見る顔だ。とても困惑しているらしい。
「何も覚えてないの?」
「私、何かした?」
「え?あぁ、いや何も無いよ。それより、体調はどう?」
「いつも通り元気よ」
「なら良かった。歩けるかい?」
「あたりまえでしょ。ほら平気よ。もう!行きましょ。勇者こそどうしちゃったのよ」
「ごめん」
入り口付近までもどり、片付けをする。これで鎧も楯も装着したので少しは安心だ。昨日までの悪天候が嘘のように晴れている。
「じゃ、出るか」
「ちょっと待って、日焼け止め塗ってるから」
今まで塗ってたっけ?そもそも持ってたんだ。
改めて外の景色を見てみると、辺り一面銀世界で眩しいくらいだ。目印が無いので迷わないと良いが。
「えっと、この山を越えたら村が見えてくるのかな?」
「そうみたいね。あっ、因みに図鑑の方はあと3種類よ」
「あと少しだな。それにしてもここの魔物は殆ど白いな。身を隠すためだろうけど、探す方からしてみれば相当キツイな」
「そうね、あとの二種類も白だわ」
「まじか」
登るにつれて酸素も薄くなって、登るペースは落ちていった。もう積もった雪は腰の近くまで来ている。
「あそこに何かいないかな?」
僕が指さしたのは少し離れたところの小さな林だ。
「そうね。残ってる白くない魔物は木だし、木影入りたいし」
「えっ?探してたは木だったの?」
「木と言っても植物じゃなくて歩くのよ」
生きるためにそんなことまでしてきたのか、あの魔物のご先祖様達は。いやはや、進化ってものは一体どんな仕組みになっているのやら。
林にはキトレニンやらの足跡が見受けられた。降ったばかりの地面に新たに僕らの足跡を増やしながら、動き出しそうな木を探す。
はっきり言おう。
「全部同じ針葉樹じゃないか。この木のどれかは動き出すって?」
ちょっと苛立って近くの木を叩く。あれ?この感覚、まさか!いや、動かないじゃないか。まさかね、まさかこんなベタな感じで。
「考え込んでるようだけど、どうしたのよ?見つけたの?」
「リザベラ、ちょっとこの木触ってみてくれないか?」
リザベラは両手をペッタリと幹に付けた。
「普通じゃない?」
そして蹴った。
ウガァァァ
「「木が唸った?!これは!」」
そして足元の地面が動き出した。薄い茶色の根が現れた。
「怒らせちゃった。てへっ。
でも、勇者も叩いてたよね?」
いや、てへっじゃないだろ。平和主義者だろうが。確かに僕も叩いたよ。でもそれを遥かに上回る勢いで蹴ってたのはどこのどいつだ。
リザベラを睨むと、諦めたような顔をした。
「じゃあ今回はリザベラが戦うわ。それでいいでしょ?それに、"私達"が怒らせちゃったから落ち着いたら止めるわ」
早速襲ってきている根っこを全く見ること無くかわしながら言った。
「サイムゾン」
低い声でそう唱えると、かざした手から水が大量に噴射された。
ボンはというと、水を被った直後から後退りし始めた。リザベラはいつものように図鑑を取り出すと一言二言書き込んでこちらを向いた。
「はい、終わったわよ。あと二種類もさっさと見つけちゃいましょ」
サポート役が強すぎると、全部任せた方が良いんじゃないかと思っちゃうね。そして更に差が開いていく。このままだとリザベラの図鑑作りに付いていくだけになるね。
うん、これからは僕だけでも勝てるようにならないと。たとえいくら時間がかかっても。
林を出て数歩歩いている時、リザベラが僕の背中に倒れかかってきた。
忘れてた。一応血抜かれてたんだった。無理させちゃったな。やっぱり街に戻るべきだ。
「……ゆうしゃ」
かすれた声でこちらを上目使いでみてくる。
「病院行こうな」
次第に瞼が下がっていく。
「ゆうしゃ……
美味しそうね……」
そしてリザベラはそのまま意識を失った。
冒険の書に書き込みますか?
はい←
いいえ
・・・・・・・
書き込みました。




