初めての決闘
前回の冒険の書を読みますか?
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爪の尖った白く細長い指がゆっくりと伸びてくる。
「それとも身体に一つづつ切り傷でもつけていってやろうか」
ニヤッと笑いながら続けた。
「何せ時間はたっぷりあるのでね」
恐怖で全身の力が抜けて、その場にへなへなと座り込んでしまう。あっ、金縛り大丈夫だった。しかし素手のままでは僕の命が危ない。座ったまま、剣をなんとか取り出す。こんなに重かったっけ。手が痺れて上手く持てない。
「ほう、我輩と戦おうというのか?それでこそ男だ。我輩も剣は持ち合わせているし、受けてやろうではないか」
すると驚くことに、マントの中からレイピアが取り出された。柄には燦爛 (さんらん) たる装飾が施されている。
「前に使ったのは200年程前だから幾分か衰えてるかもしれんが」
"が"を言った直後に突いてくる。間一髪の所で転がってなんとか避けた。楯を置いてきてしまったし、鎧も着ていない 。 しかも、僕の剣は片手用で小さめだ。ところが向こうは体が大きい上に剣が長い。だから間合いが取れない。それに、お父さんと稽古をした時しか剣同士で戦ったことはない。もちろん本気じゃ無かったわけだし。
次の一撃は剣で往なすが、相手の力が強すぎて、しなった剣が服をかすめた。 なんとか立ち上がると、待ってましたとばかりに立て続けに突いてきた。スレスレで避けるが、防戦一方になってしまっている。 さらに悪いことに洞穴の奥はそう広くないので、避けていられるのも時間の問題だ。壁が迫っている。
「大分調子も戻ってきた。さて、そろそろ本気を出すとするか」
また"か"を言った後だった。突然ドラキュラの右腕がぼやけて見えなくなった、いや違う。先程までとは比べ物にならないほどものすごい速さで突きまくってくる。それも全て僕の右腕に向けて。避けきれる訳もなく、次第に右腕は赤く染まっていき、とうとう力が入らなくなった。
カララン
剣が落ちた。時間差で僕の右腕に激痛がはしる。うおぉぉぉぉ
「もっといたぶってやりたいからな、まだ殺しはせん。不届き者にはまだまだ苦しんでもらわねば。これは楽しい暇潰しになりそうだ。ハハハハ」 そして、レイピアをしまう。
僕のうめき声とやつの高笑いの声だけが聞こえる。
「次は左腕にしようかね」
その時、激痛により朦朧としてきた意識の中で、ある作戦がくっきりと浮かんできた。
「伯爵様?」
どうやら騒ぎでリザベラが起きたようだ。ドラキュラはリザベラの方を向いた。
「こちらが終わったらすぐに行く。待ってなさい」
注意が逸れたこのチャンスを使い、バックに左手を突っ込んだ。あった。おお!よし、これでなんとかいけるかな。
僕が落ちてしまった剣を拾って渾身の力を込めて刺すのと、やつが向き直って喋るのがのがほぼ同時だった。
「小僧はここで待ってるが……ぐはっ」
ドラキュラはそのまま仰向けに倒れた。
「こ……こんな小僧に……我輩が負け……るはず……など…… 」
カララン
僕の剣が落ちた。 目の前にいたはずのドラキュラは跡形もなく消えていた。勝ったのか? それにしても効果は予想以上だったな。
"とても良い薬草"
僕の体の中で何があったかは考えるだけで頭が痛くなりそうだけれど 、お陰で右腕はすっかり良くなって、傷痕でさえもぱっと見には分からないほどまで急速に回復した。そうだ、ゆっくりしている場合ではない。僕は駆け寄った。
「リザベラ、大丈夫か?」
「今のところは。勇者が伯爵様を倒したの?」
「そうさ。リザベラが無事でなによりだよ。さあ、行こうか。歩ける?」
「そっか、伯爵様もういらっしゃらないのね」
「リザベラ、本当に大丈夫かい?あいつはいずれ血を全部吸おうとしていたんだよ?」
「そんなまさか。あの伯爵様が嘘をついたとでも?」
「やっぱりリザベラは騙されていたんだよ。生きてて良かった。また何かあるといけないから、早く洞穴を出よう」
名残惜しそうに空を見つめるリザベラの手を引き、入り口へと急ぐ。
「きゃっ」
途中でリザベラがもたれかかってきた。血抜かれたんだよね。貧血かな? 仕方無い、もう少し回復するまで待とう。歩けるようになったら、もう一度キナヴィアルに戻ろうか。
冒険の書に書き込みますか?
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・・・
書き込みました。




