火輪の光
前回の冒険の書を読みますか?
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クリューが代読してくれた。敵ながら優しいやつである。
周りのクリュー達はどこを狙うか見定めている。何度ももがこうとするが、やはり指一本でさえ動かせない。
僕も餌食となってしまうのか。こんなところで終わってはいけないのに。この街の人のためにも勝たなければならないのだ。道具屋の店主だって、賭けてくれたじゃないか。リザベラだって僕を応援してくれている。
クリュー達が一斉に下がり始めると、大きな羽を広げた。細い足で器用に地面を蹴ると、先程までのようにヒュッと音をさせると僕の心臓向かって刺してくる。
もはやこれまでか。僕は目を閉じて祈った。
僕の頭上すれすれをクリュー達が交差していった。危機一髪だった。標的が無くなって、地面に体を叩きつけてしまったクリュー達が転がっている。弱々しい声で鳴きながら。
そう、金縛りから抜けられたのだ。あの時は自分でも信じられなかった。
リザベラが応援してくれていると強く思った瞬間に、僕の身体が微かに光だしたのだった。そして、クリューの攻撃に反応して目を閉じることができた。
そのことを理解した僕は咄嗟に身を屈め、無事に今こうして生きているという訳なのだ。
きっとリザベラが、僕が囮になると言ったときに口にした呪文が助けてくれたのだろう。ありがとう、リザベラ。また、君に助けられた。
また暴れださない内に倒さなければ。僕がクリューの近くに行くと、残った力を振り絞って、哀しげながらも凄みのある声で叫んだ。
助けを求めているのかもしれない。これ以上増えたら流石に負ける。殆ど動けない敵を斬るのは抵抗があったが、向こうも同じことをしていたのだ。
全ての息の根を止めたことを確認してから、その漆黒の体を観察する。羽をむしられたような痕や、脚に傷が入っているものもいた。
どうやら事の発端は人間側らしい。
「ごめんな、お前達も辛かったんだな。ゆっくりやすんでね」
亡骸を静かに抱いて持っていき、街の外れに小さいお墓を作った。
やがて、夜の闇はやわらかな光に包まれていった。
「リザベラ、おはよう。お陰で勝てたよ。ありがとう」
リザベラは眠い目を擦りながら答えた。
「うん?勇者?帰ってきたの!良かった。本当に良かった」
また寝てしまった。僕も仮眠をとるかな。
「泣き顔なんて見せられるわけないじゃないの。
お疲れさま、勇者」
一段と大きくなった気がする、そんな勇者の背中に向かって小声で呟いた。
冒険の書に書き込みますか?
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・・・・・・・・・
書き込みました。




