骨折り損のもうけなし
前回の冒険の書を読みますか?
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滝を離れると、もうキナヴィアルはすぐなはずだ。今、僕達の前には大きな壁が立ちはだかっている。
ロッククライミングしろということらしい。壁の表面は手や足がかけられそうな窪みや出っ張りがいくつもある。
これを越えなきゃ行けないのか……。
「リザベラは行けるか?」
「リザベラ、こう見えても毎日筋トレしてるから平気よ。それに…」
「それになんだい?」
「いや、何でもないわ
(魔法があるからとか言えない)」
勇者は早速登り始めた。全体で3メートル位だろうか、それほどまで高くは無いのだが辛いものだった。半分程まで登ったとき、詰まってしまった。仕方なく少し戻る。冒険に出る前に鍛えていたとはいえ、初めてのロッククライミングは体力が持たない。聖水をもう一本持ってくれば良かったかもしれない。
残りあと50センチというところで既に殆ど力が入っていなかった。何がいけないかってバックが重いのだ。あと少し、もう少しと勇者は自分に言い聞かせた。
そして、頂上に手を掛けた時だった。もう限界まできていた手がついに動かなくなった。
(もう僕は落ちる……)
その頃、リザベラはというと
「頼りないわね、それに自分のことで精一杯だなんて」
勇者が登りきってから行こうと思っていた。今にも落ちそうな勇者の足元にシールドを張りながら。
「あーぁやっぱり落ちた。あとちょっとだったのにね。
えっ、気絶してるの?!
もうしょうがないわね」
リザベラはシールドを使って勇者を頂上へと運ぶと、その場で軽く跳んだ。
「3メートルなら楽勝ね。
勇者、頂上よ!」
勇者は自分の名前を呼ぶ声で目を開けた。
「ここが天国なのか」
「なに寝ぼけたこと言ってるのよ、早くキナヴィアルに行きましょう」
「えっ?だって僕はそこの壁から落ち…てない。登りきれてたのか?」
「そうよ、分かったんなら早く行きましょうよ」
目の前には大きな門が。賑やかな声も聞こえてくる。
やっぱりいた門番に話しかける。
「入ってもいいでしょうか?」
「随分とやつれているがあんた達はカダルナ城の危機を救ったとか言う勇者じゃないか?」
「そうですが、何故それを?」
「ははは、この商人の街、キナヴィアルを舐めてもらっちゃ困るな。さて、入りたいんだよな」
「はい、いいですよね」
「もちろんだ」
安堵の表情を浮かべながら入ろうとした。
だが、門は開かない。
「ただし合言葉を言ってもらわなければならない。それがこの街の決まりだからな」
そんな……
「知らなかったのか?下に人が何人か居ただろう。その人達がヒントをくれるのに。そういえばお前達どこからここまで来たんだ?」
「カヴィエント村ですが」
「そうじゃない"ここ"に来るまでだ。階段使わなかったのか?」
「階段なんてあったんですか?」
「えっまさかこの壁登ってきたのかい?お疲れさま」
そんなばかな……
しかもヒントまで逃すとは……
もう意地でも戻りたくないし
「勇者ならきっと分かるでしょ!」
「うっ、うん。(そう断言できる根拠は何なんだろうか、そんなに信頼されてるというなら嬉しいんだけど)」
「仕方無い。合言葉のヒントは『ホイニトロホ』だ」
冒険の書に書き込みますか?
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・・・・・・
書き込みました。




