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僕は勇者五代目!  作者: 齊藤さや
第一章~戦うイギ~
11/43

スルースキルは絶好調

前回の冒険の書を読みますか?

はい←

いいえ

 城を出てまた同じような野原を歩いていた二人。


「次はどんなところなの?」


「えーっとね、このまま北東に行くと商人の街があるみたい。キナヴィアルって名前らしい」


「所持金も増えたし、そろそろ装備を整えなきゃね」


「剣もほぼ使えない状態だしな」



 景色は変わらないが、魔物はがらりと変わった。所謂(いわゆる)ウサギ型で片方の耳にも顔があるキトレニンとか、金属のように固い身体を持つヘビ型のシュダルナーとか、赤青黄の三匹で一組の新スライム号とか、色々いるのである。見ていて飽きはしないが、何しろ数が多いので、避けるのが大変だ。リザベラは、図鑑と照らし合わせていて忙しそうだ。時々何かを書き込んでいる。

 ふと思った。これは動物園に来ているようだ。魔物を見るだけ。触ってはいけない。これでは僕が伝える役目になった時に、子供が期待するような冒険譚を話せなくなってしまいそうだ。


「そろそろ書けた?」


「待って、後一種類いるはずなの」


 そう言って僕に見せたページには、雲のような形をしたクラードがいた。風を操るそうだ。


「見付けたら教えるよ。進もう」


 過去にこんなにスルースキル?を発揮した勇者はいないだろうな…。魔物もこちらの事はちらっと見るだけで、襲ってこないと分かったからか特に僕達になにもして来ない。


 小一時間程進んだ頃だろうか、クラードらしき雲が浮いているのが見えた。


「リザベラ、あれがクラードかな?」


「そうそう!やっと見つけた!図鑑には出現頻度は普通って書いてあったから、きっと数が減っちゃったのね」


「調べるのがリザベラの仕事なんだよね」


 すると、こちらに気づいたクラードが興味を持ったのか近付いてきた。

そして突然、突風を起こしてきた。


「キャー!」


 思ったほど強い風では無く、少し安心。様子見といった感じなのかな?


「勇者、こんなやつ倒してよ!」


 リザベラの口から初めて「倒して」

という単語を聞いた。

驚いてリザベラを見てみると、恥ずかしそうに俯いている。


「どうしたの?クラードにやられた?」


 僕が見た限り変なことはしていなかったと思ったのだが、リザベラを守る役目もあるのに情けない。


「いいから倒してよ!こんなやつ顔もみたくない」


 取り合えず無事ではあるようだから倒してから聞こうか。



 少し離れた場所に行き、剣を構えクラードと対峙する。

向風(むかいかぜ)が吹いてきた。立っているので精一杯な強さだ。遠距離戦だと剣ではとても不利になってしまう。

風はどんどん強くなっていく。このままでは飛ばされてしまう。

僕は一か八かの賭けに出た。


 剣を素早く(風を受けているので自分でも驚くほど素早く)、そして大きく振りかぶる。そして



 クラードめがけて投げ掛けた。


 運の良いことに、上手く命中し、風が止んだ。クラードは力尽きたのだ。


「リザベラ、倒したからもう大丈夫だよ」


「ありがとう」


 まだ俯いている。


「クラードはいったい何したの?」


 すると、赤い顔をあげて、吐き出すように答えが返ってきた。


「あいつ私のスカート捲りやがったのよ。変態もいいところだわ。じろじろ見やがって。数が減って本当に清々するわ。あんなやつ絶滅しちゃえば良いのよ」


 怖い。世の風使い系の魔物よ、急いでリザベラから逃げた方が良いぞ。


 しかし、これがあの


『魔物ならなんでも倒して良いの?』


と言って僕に戦闘をさせなかった人と同じ口から出てくるとは。そもそも、冒険にスカートはいてこなきゃ良いものを…。


この命題への答えがさらに難解になってきた。


冒険の書に書き込みますか?

はい←

いいえ


・・・・・・・・・・・・・・


書き込みました。

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