乙女ゲームに転生したけど傍観すらしていません
「最近はやりの傍観主が傍観すらしないってどうだろう」という思いつきで書いてしまった小説です。
設定を考えるのは楽しいのですが文にするのが大変でした。
あと、乙女ゲーム関係ないような…
もうダメなのかな… 眠たい。
どうしてこうなったんだろう……
ごめんね。お母さん、お父さん親不孝な娘でごめんなさい。もし生まれ変わったら今度はちゃんと親孝行したいな…
後、読みかけの漫画とか続きが気になって仕方なかったのに。未練たらたらじゃん、私。死にたくないな。
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――〇〇県☓☓市で今日の午後5時37分ごろ居眠り運転をしていた軽自動車がバスに衝突。バスに乗っていた帰宅途中の近所の女子高校生・・・・・さんと巻き込まれた同じ高校の男子生徒・・・・・くんが意識不明の重体で病院に搬送されましたが、2人とも息を引き取りました。次のニュースは……
テレビに映るアナウンサーが感情のこもっていない声で淡々と今日のニュースを読み上げる。
なぜか名前の部分は聞き取るができなかったが間違いなく自分のことなんだろう。
そう、なぜか私は死んだはずなのに真っ白な気味が悪くなる空間でぷかぷか浮きながらテレビを見ている。しかも自分の死亡事故だなんて誰の仕業だ。趣味が悪い。
いろいろ突っ込みたいことはあるがここは所謂天国と呼ばれるとこなのだろうか。まさか自我が残ったままこんな無機質な空間に取り残されるなんて思いもしなかったな。死んだあともずっとボッチだなんて呪われているのだろうか。
あれ…また眠たくなってきた。ああ そうかここは順番待ちかなんかの部屋で眠ったらもうすべて忘れて次の命のとこに行くのかな。全部忘れてしまうのか。嫌だな、もったいない。まだしたいこといっぱいあったのに。仕方ないってあきらめるしかできまいなんて、最後まで情けないな。
おやすみなさい。できれば来世が幸せでありますように。
さよなら、なんだかんだで恵まれてたよね。私の人生。
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「おかあさん! 結愛ね、ピアノなりゃいたいの。あと、お歌も」
私は今、母におねだり中である。
両手を組んで目をうるうるさせて上目使い。極めつけが首をちょこんと傾げる。自分でやっていても内心少し引いている。
だが今の私は3歳。こんな恥ずかしいことだってできてしまう。
そう私は、転生したのだ。なぜかはわからないが記憶を持ったまま。
そして重要なのが、この世界が前世で私がしていたゲームの世界の可能性が高いということ。
初めは、自分の名前がどこかで聞いたことのある名前で赤ん坊のころの私を見る父親の顔に覚えがあるという違和感から。そして、私を見ながら、今日もお父さん帰ってこれないのと寂しそうに笑う母の姿を見て小さな違和感から確信に変わってしまった。
ここはゲームの世界なんだと。
『桜咲く季節と恋の始まり』
通称、サク恋。
舞台は桜並木が有名な進学校、桜坂学園の高等部の入学式、ヒロインの転入から始まる物語。所謂乙女ゲームと呼ばれるものだ。
攻略キャラと悩みを解決したり、一緒に学園を良くしたりしながら、いちゃいちゃしていくというどこにでも乙女ゲームだが、豪華声優陣と高画質なグラフィック、丁寧なストーリーで人気になったゲームだ。
そして、私が唯一した乙女ゲームでもある。最初で最後だったから印象に残っていたのだろうか。手遅れになる前に気付いた自分の記憶力に感謝だ。
私が普段しないシミュレーションにまで手を出したのは好きな声優が出ていたから。しかし、肌に合わないというか、やると疲れてしまい全キャラクリアしたわけではないが。
大切なのは私が最後に攻略したキャラ小春悠斗の義理の妹になる予定の小春結愛に転生してしまったことだ。父の顔に見覚えがあるのに母にはない訳がやっと分かった。
そして、最悪なことに悠斗ルートは私こと小春結愛がものすごく重要な立ち位置なのだ。
両親の離婚で人との係わりが嫌になった結愛と父の再婚相手の息子である悠斗。
結愛は学校には行くが引きこもり寸前で教師とも事務的な話しかせず、授業中は寝ていることが多い。しかしテストでは常に上位に入るため教師のほうも扱いに困っている問題生。悠斗は義理の妹である結愛のことを気にかけているがなかなかうまくいかない。
そこでヒロインの花宮芽衣が結愛に話しかけてたのを見かけて協力してもらっているうちに好きになっていくというストーリーだったはずだ。
細かいとこまでは覚えたないが私の作戦にはまったくもって必要ない。
「結愛? 大丈夫? どうしたの急に」
いけない。少し考え込んでたみたいだ。心配そうにしゃがんで母が聞いてくる。
大好きなきれいで優しい自慢の母。弟の世話もあって疲れているはずだ。なのにすぐ私の心配をしてくれる。絶対に離れたくない。離婚などさせてたまるか。
ゲームでは、私が5歳の時に仕事人間の父に耐えられなくなって、離婚する。確かそうだったはずだ。しかし、私の平和のためにそれだけは避けないといけない。
もし離婚し、父が再婚したらはゲームの攻略キャラの義理の妹になってしまう可能性が高くなる。絶対に嫌だ。関わりたくない。
私の作戦はわかりやすく、最も攻略キャラとの係わりが少なくて済む父と母の離婚を阻止することだ。言葉にするのはのは簡単だが実際はきっと一番大変だろう。あと、キャラの名字が変わるが私には関係ない。
それに、これは私の自己満足だが母にも父にも幸せになってほしい。前世でできなかった親孝行。優しすぎて寂しがりやなところがあるお母さんが壊れてしまう前にも、ゲームの中で何度も後悔していたお父さんにそんな思いさせないためにも変えられるのは未来を知っている私だけだ。頑張ればそれができるならどんなに大変でもやり遂げてみせる。
いや、どれだけ考えたって、言い訳でしかない。
未来を変えることを正当化しているだけなのだ。やめよう。これから起こす行動はすべて私の偽善で、エゴでしかない。家族を言い訳にしているなんて前世から変わってない。
すべて、私の意志で、私が自分のためにするのだ。
タイムリミットはあと2年そろそろ行動を始めよう。
それと私の将来の夢のためにも頑張らなければいけない。
まずは母の質問をわざと別の意味でとらえて答える。
「えっとね。おかあさんとおとうさんにね、うまくなったら歌をあげたいの。それでね、みんなでね、歌うの。きっとたのちぃよ」
見上げながら母の顔をうかがう。
どうだろうか。許しは出るだろうか。これが計画の最初の一歩。初めからつまずきたくはない。
一瞬きょとんとした母は、嬉しそうにありがとうと笑う。
「それなら、お父さんに聞いてみよう。結愛も一緒にお願いしようか?」
「うん!!」
元気よくうなずいた。
母の目に光ったものには気づかないふりをして。
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「結愛、高校入学おめでとう」
「結愛もついに高校生なのね。私たちも年取ったわね」
玄関に立って私を眺める両親。
ケンカもあったけど、仲のいい両親だ。
「ありがとう。お父さん、お母さん。行ってくるね」
父と母の言葉に満面の笑みで答える。
ついにこの時が来た。もう、いつ離婚するかとおびえる日々もお終い。頑張ったよ私。よくやった。
地味に大変なことが多かったんだよね。
お父さんの手帳と家中のにカレンダーにこっそり家族の誕生日とか結婚記念日に印をつけたり、ピアノと歌のプレゼントとか言って仕事休みにみんなに集まってもらったりもしたっけ。
あとなぜか父の会社の同僚が協力してくれて会社で家族の話をしあっていたり(つまり自慢大会)、父に誕生日とか忘れてないかさりげなく聞いてくれくれたりしたんだよね。私にも接触してくるし、初めは警戒してたけど、何も言わず協力してくれるから利用するだけ利用して、できるだけ近づかないようにした。
さりげなく父に私が寂しいと感じてると思わせるのも大変だった。あからさまではいけないし普段はわがまま言わないようにしてここぞという時に甘えて、私の演技力上がったんじゃないかな。
演技といえば5歳からダンスと体操を習い始めて、8歳から演技も習っている。我ながら頑張っている。両親もさすがに演技は必要ないといってたけど将来声優になりたいと言ったら許してくれた。それに、いつまでも家族をごまかす自信なかったしダンスとかよりも重要だったんだよね、演技。けっこう甘やかされているんだよな私たち。
そしてついに、私は高校生になった。やっとここまで来た。
運動は普通より少し上ぐらいだけど体もやわらかいし、勉強は前世から得意だったのとこの体のスペックが合わさってあまりしなくても学年トップ5には入っている。容姿も自分で言うのは変だけどかわいい系の黒髪ロング美少女。ゲームでは髪型がショートだったけど重要なキャラだったからかわいかったし、さすがこの両親の娘なだけあるなという感じ。ちなみに私は母似で1つ下の弟の暁は父似。
前の私だったら恨んでいるくらい優秀な今回の人生。しかし、女子からの嫉妬とかは無いにも等しい。小さいころから鍛えてた演技力とゲームや本好きを隠してないのも一役買っているのだろう。
周りから見たらきっとやりたいこと頑張っているから恋愛とかには興味ないと思われているはずだ。間違ってはないし。ちなみにオタクとか、腐女子とか思われているわけではない。そこまで深くはまっていないこともみんな知っている。なぜだろう。クラスで友達と話す内容が他の人と変わんないからかな。まあ、マニアックなものはしてないし、人気のゲームとかが多いから普通より少しゲーム好き似たいな感じで思われているのだろう。
あと、告白を断る言い訳に将来やりたいことあって今はそのためにしなきゃいけないことがあるからどうしていいかわからないといっていたらいつの間にか広まって今は恋愛までできない、ということになっていた。
だから私の学校での評価は、成績優秀で読書が趣味の恋にまだ興味ない少女。なぜか悪意を感じるが私の被害妄想だろう。嫉妬を受けるよりかはいいし。
やりすぎた感もあるが前世であきらめていた夢のためなら仕方ない。
「姉さん。どうしたの、早く行こう。新入生って説明あるから少し急がないといけないんだよね」
暁が家の前から声をかける。
学校は学力とかいろいろ考えたら桜坂学園が一番良かったし、家からも近いし、ゲームには関わりたくないという心配もあるけど仕方ないから中学部から通っている。弟も一緒。
弟の暁は私が小さいころから習い事をしていたのを真似し、体操とサッカーを4歳から始めてる。音楽方面は自分がするより聞いているほうが好きみたいだ。今では黒髪さわやか系のイケメンになっていて、中等部のサッカー部の副キャプテンを務めている。文武両道で生徒会にも誘われたことが何度もあるらしい。ゲームではきつい性格だったが今は素直で優しい子だ。怒らせると怖いけど。
あと、私の影響でゲーム好きになってしまったがそのくらい許容範囲だ。
「ついに私も高校生なのか。まあ変化は校舎と制服ぐらいだけど
……これで、私の計画の第一段階も終わったんだ」
「ん?」
おっと、声に出していたらしい。危ない、気を付けなければ。
「高校生になったんだなと思って」
笑ってごまかす。
さあ、もう何も心配することもない。これからは私の夢のために頑張ろう。
目指せ、人気声優!
もう、壁は乗り越えた。私とゲームのストーリーの関係は何もない。
私はそう思い自分の未来を疑わなかった。
キャラ紹介
小春 結愛 -コハル ユアー
・乙女ゲームに転生した主人公。
・生前はオタク気味。
・巻き込まれるのは嫌なので両親の離婚を阻止。
・無事、攻略キャラの妹になるのまぬがれて今は声優になるため頑張っている。
ゲーム
・攻略攻略キャラの義理の妹
・小春 悠斗のルートで出てくるキーキャラ。
・両親の離婚で人とかかわるのが嫌になり学校には行くが引きこもり寸前で、授業中も寝てばかり。
・しかし、テストでは常に上位のため教師も扱いに困っている問題性。
・攻略キャラで義兄である小春 悠斗(旧)は、転校してきたヒロインの花宮 芽衣が結愛に話しかけていたところを目撃し、妹の社会復帰のためヒロインに協力してもらう。
・最後は、義兄とヒロインのおかげで人と関われるようになる。
いつか、続きを書いてみたいと思います。