なんちゃってヤンキーはすぐバレる
考えました。ええ、考えましたよ。
一ノ瀬に被害が及ばない方法を数日掛けて考えました。授業中や布団の中、果ては夢の中までね。
そして俺は一つの結論へと辿り着いた。これぞ真理、俺が導き描いた道筋は彼女を安全な旅路へと送るだろう。
その方法とは!!
「俺が不良になれば良いんだよ!」
俺の部屋にいる二人を見る。
どちらも俺の部屋にある漫画を読み漁り、ベッドでゴロゴロと転がっていた。
そしてそのどちらもが俺を信じられないバカを見る目で見ている。
「ホワイ? どうしてそんな目で見るんだい?」
「突拍子もない事を言い出したバカがそこにいるからかな」
「バカな事を言ってる暇があるなら、大福の一つでも買ってこんか」
そんなにダメな案だっただろうか。俺的には妙案だったんだが。
敵を知るには内部から見るのが一番手っ取り早い。内側にいれば一ノ瀬を襲う算段とかも外側よりも圧倒的に掴みやすいと思うし。
だから我ながら良い考えだと思ったんだけどなあ。
「そもそもお主不良になんてなれるのか?」
「ああんコラああん?」
「………………」
「あうちっ!!」
バシィ、と俺の頬を引っ叩く一ノ瀬。何故そのような暴挙に!
「ごめん、なんかイラッとしたから」
「よくそんな無表情で人の顔を張れるな」
と、とにかくだ。今回俺が不良の仲間入りをしてみるのは決定事項なのだ。
駄目で元々、もし何の成果を得られなかったとしても、事に及ぶ前に巻き戻ってしまえばいい。
「前回巻き戻ったのっていつ頃だっけか」
「えっと、確か……6月の中頃だったかな」
つまり、仮に襲うのだとすればその頃が怪しいと言うわけだ。
今からだと後2ヶ月とちょっと。期間はそれほどあるわけじゃないが、それでもやるしかないだろう。
「ああそうだ一ノ瀬、学校では他人の振りしとけよ」
「なんで?」
「俺は新入生のクールでアウトローなナイスガイだからな。女を寄せ付けてちゃあ俺の化けの皮が剥がれちまうってもんだ」
「化けの皮を厚く塗りすぎて厚化粧みたいな属性の盛り方じゃない?」
まずは形からって言うだろ?
それに男たるもの一度は漫画みたいな不良像に憧れるっていうもの。
ふふふ、明日が楽しみだ。
………………
…………
……
爆笑するリンネと卒倒しそうな母親を背に、俺は家を出る。
「行ってきま――」
いかん、不良は礼儀正しくない。
しかし挨拶は大事だ、俺は無言で家に向かってペコリと一礼。肩で風を切って歩いて行く。
感じる感じる人の視線を。これが不良というものか。
「…………」
一ノ瀬発見。彼女も俺を見つめたようだ。
「…………」
俺を見て口に手を抑えて顔を背けた。何故かプルプルと震えているように見える。
笑ってるなあいつ!!
そんなに変かな、このリーゼント。
漫画みたいにするには髪の量が足りなかったから、ちょっと尖った髪になっちゃったけど。
まあいいや、作戦は続行だ。
だらしなく歩きながら、肩を揺らして歩く。
誰もが道を空けていく、その光景のなんと爽快なことか。
校門が見えてきた、そこには我らが担任小林教諭が立っていた。
「おい…………確か、池杉だったな。なんだその頭」
「羨ましいのか?」
「………………」
若くてエネルギッシュな高校生の髪を見て羨望の眼差しを送る薄毛の教諭。
こめかみに青筋が見えた気がしなくもない。
「ふざけてるのか?」
「コーバコバコバコバ!!」
ちなみに笑い声である。青筋がもう一つ増えた。しかし気のせいだろう、実際は青筋なんてものは見えないのだから。
小林教諭の隣を抜けて校内に入ろうとするが。
「あだだだだっ!?」
耳を掴まれた。
「お前ちょっと来い」
「こばやんちょっと! 暴力反対!」
「そのふざけた髪を濡らしてぺたんこにしてやるだけだっ!」
「やめてえ! 一時間かかったの!!」
朝からてんやわんやである。
ふと背後を見てみると、抱腹絶倒している一ノ瀬がいた。
……そして。
朝の出来事が目に留まったのか、俺は不良集団に呼び出された。
ここまでは目論見通り、これがリンチでないことを祈るだけだが。
校舎端にあるトイレは使う人物が少なく、誰にも見つかりづらい。
そんな場所に呼び出されて囲まれた俺は正直かなり怖い、ちびりそうだ。ここがトイレで良かった。
調べてみた結果リーダー格の不良は権田先輩というらしい、三年のようだ。
権田先輩の高圧的な物言いを貴婦人のように訳してみると、こういうことだ。
『あら貴方、とっても勇敢ね。もしよろしければわたくしのティーパーティーの一員になりませんこと?』
だから俺はサムズアップをして言ってやったのさ。
『あら構いませんわよオホホホ』
サムズアップした親指をへし折られそうになった。バイオレンスな貴婦人だまったく。
こうして、俺は目論んでいた内部への侵入には成功したのだが……。
ぶっちゃけ、体の良いパシリだったようだ。
学校にいると急に買いに走らされ、お金は当然俺持ち。
おかげでリンネの大福を買う金が減って彼女の不満はピークに達している。
しかしわかったこともある。
授業を良くサボり、集団でこのトイレにこもっていることが多い。
もちろん用を足しているわけではなく、未成年では手の出せない倫理的に名前の出せない葉を紙で巻いたアレに手を出している。
俺? 勧められたが全力拒否だ。親にもらった体は大事にしないとね。
というわけで材料その1。ここでモクってるのを密告すれば何かしらの罰を受けるはず。
しかしそれだけでは精々が停学になる程度。彼らにとっては停学など勲章でしかないだろう。
パンチとしては弱い。まだ他に材料は無いのかな?
そんな時だった。
昼間の学校では不良を装い、夜はリンネと一ノ瀬と遊ぶ。そんな日常を繰り返していた頃。
一ノ瀬の話題がトイレの中で突如上がった。
可愛いだの、胸が大きいだの尻が良い形だの、ヤリ…………げふんげふん、肉体関係を結びたいだの。
友人の俺からしてみれば腹立たしい内容この上なかった。
それに、そういった下世話な企みはグループチャットで話しているらしい。俺は下っ端だからグループに入れてすら貰えなかったが。まあいいさ、ハブられてるのには慣れてる。
とはいえ、密告するには重要な証拠になるだろう。
グループチャットには入れなかったが、仲間内で安心しきっているのか犯罪一歩手前のいかがわしい妄想を垂れ流している、一ノ瀬に対する言葉もそのうちの一つ。
しかし権田先輩がこんな事を言っていた。関西弁で訳すとこういうことだった。
『でもあいつ、いつも周りに誰かおるやん? めんどいし、ちょっと難しいんとちゃうかな』
権田先輩のそんな言葉に、せやなと頷いていた。
やっぱり思った通り、友人に囲まれていると手は出しづらいようだ。
日中は俺は不良になっているため、一ノ瀬はクラスの人気者になっていた。自分からなったつもりはない、と本人は言っていたが結果はこう。生まれ持ったカリスマというのはまったくもって恐ろしい。
それにサッカー部の先輩とも交流を試みているようだ。いつの間に。
その姿が何度か目撃されているようで、権田先輩は更に顔をしかめた。
どうやら権田先輩とサッカー部の先輩は何やら因縁がある様子で、彼の周りの人間には手を出しづらいらしい。
……なるほど、だから今までは無事だったわけだ。
ということは、だ。一ノ瀬の安全はもう保証されたも同然。
ならこのまま過ごしていけば平穏に卒業までいけるはず…………だったのだが。
「死んで」
「えっ」
教室に戻るなり、待ち構えていた一ノ瀬がそう言い放ってきた。まさかの発言に教室は騒然だ。
当の本人の一ノ瀬は憮然とした表情で俺を見る。言い繕うつもりは無いらしい。
「何言ってんだテメコラボケ」
「…………」
「あうちっ!!」
どうやったらそこまで虚無って人を叩けるのか教えてほしいものだ。
更にクラスは騒然とする。クラスにたった一人の不良に対して、死ねとか言いながら殴り掛かるのだから。
クラスの中での一ノ瀬像はガラガラと音を立てて崩れているだろう。
「飽きたこの周回。やり直したい、つまんないし」
「そんなゲーム感覚で」
「でももう取り返しつかないけど、どうする?」
そこまで見越しての行為なんだろう。まったく計算高いと言うかなんというか。
とはいえ、俺が集めた情報も共有しておきたいし、俺が得た情報が事実なら俺がグレてしまう必要も無さそうだ。
「わかった」
「じゃあ屋上行きましょ」
ざわざわざわっ。クラスが更にざわめいて悲鳴まで上がる始末。
「すげえ騒ぎなんだけど」
「別に巻き戻るしいいんじゃない」
倫理観何処に置いてきたんだろうなあ。やっぱり俺のせいかな?
しかし、あまり騒ぎになって止められても困る。それに誰か巻き込んでしまうかもしれない。
「じゃあ、良いんだな?」
「うん、早く死んで」
まったく、俺じゃなかったらショックを受けて打ちひしがれてるところだ。
ダッシュで屋上まで走って行き、華麗にフェンスをよじ登って飛び降りた。うーん芸術点高め。
――目元が1%アップじゃ。なんか久々じゃなこれ!
あ、そういえば、前回のボーナスってどうなった?
――ん、あれか? いらん、って言ってたから無しじゃぞ。
…………今からでも、撤回できたり。
――男に二言は?
無いですぅ……。
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目元 69 / 100% 68 → 69%
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鼻筋 69 / 100%
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口元 70 / 100%
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身長 175 / 177cm
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体重 70 / 70kg
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