箸が転んでもおかしい年頃
またスタート地点に巻き戻る。
一ノ瀬は先輩に出会うため物騒なナンパたちが出没する通りへと向かう。その後ろをついていく俺。
二人に特に会話はなく、既にわかっている目的のために黙々と作業が行われる。
到着が少し早かったのか、件の場所にナンパたちはまだスポーンしていない。
リポップするであろう湧き場所で仁王立ちする一ノ瀬。その出で立ちは正に歴戦の兵士だ。
「お、すげぇ可愛いじゃん」
あ、ポップした。
いつものセリフ、いつもの動き、代わり映えしない緩慢な動きを見せる。
さて、俺も準備するか。
「いやぁ、離してよ!」
お、前回よりもちょっと上手くなってる気がする。
俺は何処からともなく取り出した丸テーブルを、一ノ瀬によく見える位置に配置する。
「…………っ!?」
ぎょっとした顔をしていた。さもありなん。
そしてポケットから取り出したのは――トランプ。
箱から取り出し、束のままテーブルの上に置く。
ナンパの口撃が耳に届かないほど、俺が何をするかを固唾をのんで見守っていた。そっちはそっちで集中しろ。
俺は上から順にカードを二枚取り、お互いを支え合うように斜めに立てかけ…………。
倒れた。やったの初めてだからね、しょうがないね。
気を取り直してもう一度立てかける。今度は上手くいった。
隣接するように更にトランプを立てかけ……倒れた。既に立っていた隣をも巻き込んで倒れた。
「…………ちっ!」
「…………」
悔しげに舌打ちする俺。成功するか否か、俺の手つきを注意深く見つめる一ノ瀬。ナンパに対する受け答え忘れてませんか?
既にお気付きの方もいるだろう。俺が作ろうとしているのはトランプタワーである。
高度な集中力を要し、見る者の注意も惹き付ける、あのトランプタワーだ。
さっきも言ったように、やったのは初めてである。意外と難しいねこれ。
だけど一列目はようやく完成した。三つっていう少なさだけど、初心者だし良いよな?
立てたトランプに橋を架けるように、トランプを並べていく。横に置いていくだけだからこれは簡単。
そして上に……。
「ああっ……惜しいっ!」
崩れたトランプタワーを見て一ノ瀬が声を漏らす。
計画通り。彼女はナンパ相手よりも俺の不器用さにヤキモキしているのがわかる。
俺が不敵な笑みを向けると、それに気付いた彼女は一度咳払いをしてナンパへと向き直るが……。
チラチラ。
俺のトランプタワーを気にしているようだ。
一段目はもう目を閉じてでも出来る、余裕だ。嘘だけど。
しかし二段目は難しい。不安定な箇所に積み重ねるわけだからな。
ゆっくり、ゆっくりと……。
その時だった。一陣の風が吹く。それは東風か春一番か。
舞い上げる花も無いただの通り道で、舞い上げたのは――トランプだった。
「ああっ!!」
「ぶふっ……!!」
風がトランプを奪っていく。それを見て吹き出す一ノ瀬。
それがトリガーとなったようだ。
「さっきから無視してんじゃねぇぞ!」
突き飛ばされる。車道へと彼女の身は転がっていく。
助けないと、何故かそう思った。助ける必要なんて無いのに。
手を伸ばす。走れば間に合うかもしれない。
ガンッ! と何かを蹴飛ばした。
「いってえっ!!」
トランプタワーに使ってたテーブルだった。膝をしこたま打った俺はその場で悶絶する。
そしてそんな俺を見て。
「ぷっ……あはははははっ! やめ、やめてよ……っ! あはははっ!」
倒れながら爆笑する一ノ瀬がいた。余裕あるなぁ。
そりゃあ余裕もあるだろう、ヒーローが颯爽と助けに来るのはわかっているのだから。
華麗に見事に助け出す先輩。いつもであれば見惚れている一ノ瀬なのだが。
「ひぃ、ひぃー……っ!!」
まだ笑っていた。笑いすぎてお腹が痛いのか、脇腹を抑えている。
「だ、大丈夫……?」
先輩も少し引いていた。
「だ、大丈夫です……ありがとう、ござ、ふふっ…………います……っ」
「じゃ……じゃあ、気をつけてね……?」
そそくさ。
先輩は逃げるように立ち去っていった。
止めることもなく、その場でうずくまって笑い続ける一ノ瀬であった。…………人の笑いのツボってよくわかんないね。
………………
…………
……
一年が経った。
失敗していれば、そろそろ現れる時期だが……?
「…………」
「失敗したか」
家の前で待ち構えていた。
膨れっ面を見せながら佇む姿は、まるで幼い少女だ。
「サッカーサークルに入ったの」
「サッカー部だったし、順当な結果だな」
「…………テニサーと合同で飲み会があったみたいなの」
「わかった。みなまで言うな」
俺は既にロープを手にしている。
声さえ掛かればいつでもいけるぞ。
「…………よし、次は頑張る! 死ね!」
「応! …………了解? どっちだっけ?」
「良いから!」
「はい」
――目元が1%アップじゃぁ。
はい、巻きで行きましょう!
――――――――――
巻き戻り、家の前で待ち構えていた一ノ瀬の声を待って更に巻き戻る。
――目元じゃぁ。
はい、巻きで!
そして~。
余分なシーンはカットして~、ナンパされるまで早送り。
今回、俺は一ノ瀬の隣に立っています。
最初は難色を示した一ノ瀬だったが、試したいことがあると言うと渋々OKが出た。
というわけで隣に並んで歩いているが、それでも変わらずナンパは現れる。
「お、すげぇ可愛いじゃん」
一ノ瀬ににじり寄っていくナンパの方々。
俺は変わらず隣にいるのだが、俺のことが見えてないのか、無視しているかのように彼女を囲んでいく。
「なぁ、俺は?」
「絶対楽しいって。いいじゃん」
「キミも一人でいるよりいいっしょ? 仲良く遊ぼうぜ」
はい無視。
一ノ瀬はというと、俺が無視されてることに対して笑いを我慢していた。
笑いの沸点低いな。
「俺も遊びに行っていいの? ねぇ?」
「今から何処行くの? 俺たちと遊ばない?」
「何処にも行かないって、無視するなよ。俺も遊んでいいの? なぁ?」
「俺たちも付いて行っていい? いいよね?」
「俺も行っていいよな? 聞いてる? 無視すんなって」
「…………くっ……ふふっ……!」
見えていないのだろうか。
どれだけ声を掛けても俺に対して返答が返ってくることはない。
一ノ瀬との間に入っていっても、俺と視線が合うことは無い。完全に俺がいないものとなっているようだ。
じゃあ、こんなことをしても、無反応ってわけか。
「ぶはっ……!!」
ナンパたちの顔を触る。ちなみに吹き出したのは一ノ瀬だ。
頬や口を触っても無反応。流石に目は筋肉反応を見せるように瞬きを繰り返していた。
ベタベタ、ベタベタ。
「ぐあっ!!」
「あ、ああぁぁーっ!! もうダメ、あはははははははっ!!」
無遠慮に触り続けていたら、俺に一瞥もくれず殴ってきた。
まさか殴られると思ってなかった俺は、鼻っ面にパンチをまともに食らってしまう。
そしてそれを見て一ノ瀬は大爆笑。
「さっきから無視してんじゃねぇぞ!」
「それはお前らだろうが!!」
「あはははははっ!!」
ナンパはキレ散らかし。
俺は鼻血を吹き散らかし。
一ノ瀬は笑い散らかしている。まさに地獄絵図。
そんな状態で先輩が助けに来ても、前回のようにドン引きされて立ち去られ……。
一年が経過する。
「先輩が女子ばっかりのサークルに入って、ヤリサーの王子みたいになってた……」
「世界が違えば、先輩ってハーレム系の主人公になるポテンシャルを秘めてるよな」
「そんなポテンシャルいらないんだけど。ほら、早く死んで!」
「へいへい」
――――目元。
もっとマジメにやってもらえません?
………………
…………
……
そして巻き戻る。
とは言え、ここは俺が即座に死ぬターンなので特筆することは特に何もなく。
「死ね!!」
「はい喜んでー!!」
――目。
ついに一文字しか喋らなくなっちゃったよ。
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目元 55 / 100% 51 → 55%
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鼻筋 57 / 100%
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口元 50 / 100%
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身長 168 / 177cm
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体重 74 / 70kg
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