男子三回以上死ねば刮目して見よ
やがて春が過ぎ、夏がやってくる。
夏といえば、海や山。夏祭りやプール。運動音痴には厳しい体育祭など。
学生らしい、もっと言えば青春らしいイベントが目白押しだ。恋が急接近する時代でもあるだろう。
俺か? 俺はずっと家にいたぞ。
後リンネがスイカの食べ過ぎでお腹壊してたくらいか。
一ノ瀬との協定のため、どれだけのチャンスがあろうと死ぬことが出来ず、日々をただ穏やかに過ごしていくin俺。
しかし無為というには騒がしい。無駄と言うには賑やかな日々である。
主に音の出所はリンネなのだが。あとたまに一ノ瀬が死なないように念押ししてくるくらいか。
そうして夏も終わり秋がやってくる。
秋といえば、紅葉やスポーツ、芸術、そして食欲の秋。
夏に比べイベントは比較的穏やか。後は文化祭程度だが、特に思い出も無いため記憶には残っていない。
俺か? 俺はずっと家にいたぞ。
後リンネが焼き芋の食べ過ぎでお腹壊してたくらいか。
リンネの騒がしさのおかげで、定期的にやってきた死にたい衝動も抑えられ、健やかに生きている。
歩くだけで罵詈雑言が飛んでくることもなくなったので、毎日を生きていくのも以前に比べ容易くなったものだ。
そして冬。年末には年の瀬らしいイベントが怒涛の如く押し寄せてくる。
スキーにスケート。雪が積もる地域であれば雪遊びも。
クリスマス、大晦日からの新年、初詣。和洋折衷の催しがやってくる。
クリスマスイヴにロマンチックな告白、ちょうど雪も降ってきてホワイトクリスマス、ってな。
俺か? 俺はずっと家にいたぞ。
後リンネがみかんの食べ過ぎでお腹壊してたくらいか。
季節は巡り、春がやってくる。
年度は変わり、進級の季節。
二年生になり、後輩が増えて。何度か見た光景だ。
ホワイトボードのパーセンテージはまだまだ足りない。だが、生きていくには苦労しない程度の顔になったことで、俺の心は代わりつつあった。
もうこのままでいんじゃね? と。
しかしそんな心変わりを世界が許さないのか、一ノ瀬が目の前に現れた。
最後に話したのはいつだろうか、秋頃かな?
二年生になるとクラスも離れたため、交流する機会はより一層無くなった。
そんな彼女が俺の家の前で待機している。
「ダメ、やり直し」
そんな短い一文を小脇に抱えてやってきた。
「先輩、私に隠れてサークルに入ったって。ムカついたから顔ひっぱたいて別れてきた。だから巻き戻ってやり直し」
待ちに待った巻き戻りの時間。
しかし俺は先程までこのままでも良いか……なんて考えていたほどだ。
一ノ瀬の唐突な提案に俺は――
「待ってました! 早く早くっ!!」
意気揚々、諸手を挙げて大賛成だ。皆も分かってただろ?
何処から取り出したロープを手に、一ノ瀬の言葉が出てくるのを今か今かと待ち構える。
「……なんか、一年も経ったのに変わんないのね、あんた」
「どうせ巻き戻るしな」
無理して変わる必要があるとも思えない。
短くつっけんどんな物言いをしたにも関わらず、一ノ瀬は薄く微笑みかけてくる。
「先輩もそうだったらよかったのになぁ」
「そんな事どうでもいいから!」
俺が欲しいのは自嘲気味の後悔の言葉じゃない。俺への死亡宣告だ。
「……そうね。じゃあ死んで!」
「応!!」
公園にある太い木にロープをくくりつける。その手際は最早熟練の技であり、同年代で右に出る者はいないだろう。
首を通そうとしたところで、ふと止まる。
「ちょっとした疑問なんだけどさ、応! と了解! だったら、どっちが良いと思う?」
「どっちでも良いから早く死になさい!」
今後のモチベーションに関わってくる大事な掛け声だぞ。
……まあいいか。とうっ。
――――口元が1%アップしました。
おお、久々に聞いたアナウンス。言葉もマジメに聞こえてくるぞ。
――――久しぶりじゃからな。ちょっと真面目にやってみたぞ。
ナイスアナウンス、アッパレアッパレ。
………………
…………
……
「というわけで入学式に舞い戻ったわけだが」
「久々じゃのう。気分はどうじゃ?」
「もう最高。また数値を上げることが出来るんだからな」
本来であれば、新しく友達になるクラスメイトと改めて友人関係を構築したりと、俺の持つ記憶とクラスメイトの記憶との乖離が存在して多少面倒くさいのだろうが、問題ない。
友達いないし、俺。
「可哀想に……」
「頭を撫でるな。そ、それに別に寂しいなんて思ってないんだからねっ」
リンネもいるし。騒がしい毎日で寂しさなんて感じるヒマがない。……というのは言わないでおこう。
俺の思考を読んでいるのか、何故かニヤニヤして俺を見ているが。
無視無視。とりあえず学校に行かなくては。
いつものように玄関を出ると。
「おはよ」
一ノ瀬が待っていた。
朝一で家の前にいる時は大体怒ってたため、普通に挨拶をされたことに少し度肝を抜かれた。
目を白黒させていると、一ノ瀬は少し近付いて俺の顔をしげしげと眺める。
「今回は何%アップしたの?」
「1%だ。特に変わったことがあったわけじゃないし」
「1%だと違いはよくわかんないのねぇ」
たかが1%。されど1%。確かな積み重ねで今の俺は出来ている。
まあしかし、数%程度じゃ目に見えて変化は無いのは事実だけどな。鏡を見て確認したが、自分でもわからないくらいだ。
「さて、どうやって死のっか?」
「爽やかな朝に最適な、どす黒くて血なまぐさいセリフだなぁ」
「一年我慢してくれたんだから、効率の良い死に方の方が良いよね。……あ、そうだ、私の危険を救うとボーナス入るんだっけ?」
確かにそうだ。一度だけだったが、ボーナスを貰ったのを覚えている。
とは言え……しかし……うーん。
「いや、一ノ瀬は何もしなくていいや」
「え、いいの?」
「ああ、巻き込んだのは俺だしな。更に危険な目に合わせるのも……なんか違うだろ」
「…………へぇ」
「な、なんだよ」
ありがたい申し出だったが、チクリと咎めた良心からそれを拒否。
すると、何故か俺のことをニヤニヤと眺めながら俺の隣を歩き始めるではないですか。
俺なんか変な事を言っただろうか。
「ただのキモデブだったのに、意外と男らしい考え出来るじゃない?」
「最初のワードが余計だったとは思いませんか?」
「思う! でも言いたかったの!」
それに思うこともある。あれは一ノ瀬が本気で危険だと思ったからこそ貰えたボーナスなのかもしれない。
わざと危険を演じたところで、ボーナスには至らないのでは無いだろうか、と。
それを確かめるのはリスクのある行為なので、しないけれども。
「ま、いいか。じゃあ巻き戻るか?」
「もういいの?」
「ああ、別にやりたいことがあるわけでもないし」
「そっか……そうね。じゃあ……死んで?」
………………。
「……何、その顔」
「言い方が弱い! そんなんじゃ死にたいエンジンがかかるわけがない!!」
「なに死にたいエンジンって。今なんか、強く言える気分じゃないのよ」
「そんなんだから先輩がヤリサーの部長になるんだよ」
「うっさい死ね!!」
「あいよっ!!」
――口元が1%アップじゃ。……成長したのう、よよよ……。
なんで泣いてんだ?
――自己中心的な考えの塊だった、ついでに肉の塊だった偏屈男が、他人を気遣えるようになるとは……。
リンネも一ノ瀬も、一言多く言わないと気が済まないのか?
――それだけが生き甲斐じゃからの!
じゃあ大福いらない――
――いりますうううううぅ!!
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目元 51 / 100%
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鼻筋 57 / 100%
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口元 50 / 100% 48 → 50%
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身長 168 / 177cm
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体重 74 / 70kg
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