パイプをカットしたがる少女
「ふむ……」
入学式も難なく終え、解散するなり一ノ瀬は俺を引っ張って前回の公園へとやってきた。
『リンネを連れてこい』とドスの効いた声をいただき、俺は戦々恐々の体で銀髪幼女を連れてきた次第。
「こんな状況は出くわしたことがないため、ワシの推測でしかないが……構わんか?」
いつになく難しい顔をしているリンネ。ベンチに座る一ノ瀬は神妙な顔で頷く。
俺は当事者だと言うのに若干蚊帳の外だ。どうして?
「麗人と深愛は事故によって共に巻き戻った。その際に……パイプのようなものが繋がったのかもしれぬ」
「それって……」
「紐付け連携されたってこと?」
絶望に彩られる一ノ瀬をよそに、俺は自分に理解しやすい単語で例えてみた。
「もしそうなら、連携解除して欲しいんだけど?」
「……たまに紐付け解除出来ないところも、あるにはあるから」
ジロリと視線を送られる俺。視線を恐れて俺は空を見た。わあ、いい天気。
「リンネ、そのパイプって切ることは出来ないのか?」
「うーむ……方法はあるのかもしれん……というか探せばあるじゃろうが、調べるのに少々時間が必要かもしれん……」
「リンネちゃんお願い。方法探しておいてくれないかな? 報酬はこいつの財布の中身の金額分の和菓子でどうかな?」
「俄然やる気が出てきたぞぉ!!」
人の金だと思って。
まあいいけど、どうせ巻き戻れば中身は戻るし。
と思っていたのだが。
「あ、そうだ。死ぬのは禁止ね、いちいち戻るの面倒だし」
「な――――っ!?」
下肢の力が抜けていくのがわかった。
膝は地につき、へたりこんで一ノ瀬を見上げる。この俺の絶望の表情を目にして尚、冷たい視線を俺に送る。
普段であればゾクゾクするところだが、今日に限っては絶望一色である。
「俺……もっと普通の顔になりたいんだけど……?」
「私に関係ないし」
「み……深愛? そうするとワシの存在意義が……」
「でも、何もしなくても大福が食べれるよ?」
「む………………」
悩むな悩むな。
確かに巻き込んでしまったのは申し訳ない。そのことに関しては深謝させてほしい。
……が、俺の生きる意味を奪うのは如何なものか。
「巻き込んで悪いって思ってるなら、要望を聞いてよね」
「ですが上様……!」
「ダメ。これは決定だから」
「しかし我が君……!」
「誰が我が君よ、キモい」
正に暴君。
見目麗しく、上級生下級生問わず大人気な一ノ瀬だが。辛辣なのが玉に瑕。
むしろそれが良い、というドMな意見もある。時には絶世の美貌から放たれる毒を全身で受けるのもいいだろう。
だけど今はその毒は俺の全身から活力を奪っていく毒だ。
思わず両目から涙が零れる。これから何を頑張って生きていけばいいんだ……。
「うわ、泣いてるし……死ねばいいのに」
泣いてる男を目の前にして、あんまりといえばあんまりな言葉。
しかしそんな時、リンネがあらん限りの声で叫ぶ。
「っ……!! 麗人今じゃ、道路に飛び出せ!!」
「え? あ、はいっ!」
「って本当に飛び込んじゃうんだっ!?」
最期の声は一ノ瀬の驚きに染まる声だった。
そして何処か久しぶりに聞こえるナビボイス。
――身長が1cmアップじゃー。
なんで上がるの?
――起きてから説明するぞ。
はい。
………………
…………
……
「んで、なんで?」
「おはようくらい言ったらどうじゃ!」
おはよう。
身支度を整えながらリンネの言葉を待つが、当の本人は何も語らない。
くすぐったりして気を引いてみようとしたが、叩かれるだけだった。幼女の力だからあまり痛くはなかったが。
そしてリンネが語らないまま出ないといけない時間になって――
「なんで!?!?」
家の下で美声が怒声となって響き渡った。
窓を開けて声の主を探してみると、全力疾走してきたのだろう、息が上がった一ノ瀬が家の前にいた。
「行くか。まとめて説明した方が楽じゃろうし」
リンネが先導して家の外へと出ると、出るなり俺の胸ぐらは細い指先に捉えられる。
もちろん指は一ノ瀬の指だった。
「ねえなんで!?」
さっきと同じ言葉を繰り返す。
というか詰め寄るからか顔が近い、なんか良い匂いもするし。
リンネは一ノ瀬の服の裾を引っ張り、公園にまで誘導する。リンネの存在に気付いた一ノ瀬は俺の胸ぐらを掴むのをやめ、リンネの後についていく。
「言い忘れておったんじゃが、麗人が死ぬ際に成長するのは条件があってな」
そう言いながらリンネは何処からか砂鉄ボードを取り出した。マジで何処から取り出したんだ?
リンネが抱えるほどの大きなそのボードに、何かを書き込んでいく。
「……っと、こうじゃ」
そこにはミミズがのたくったような字で何かが書かれていた。
えーと……なになに……?
「深愛が……れい人を殺した……とき……?」
麗人の部分の麗がひらがななんだけど?
で、次が……?
「深愛が……死ねって……言った時……?」
次に読み上げたのは一ノ瀬。ただ読んだだけなのに綺麗な声だ。
しかし読み進める度に不機嫌になっていくのがわかるのは、ちょっと怖い。
リンネの汚い字を読み進めていくと、書いてあるのは条件項目はこうだった。
1.一ノ瀬が俺を殺した場合。
2.一ノ瀬が俺に『死ね』と言った場合。
3.一ノ瀬が俺に『死ね』と思った場合。
4.一ノ瀬を窮地から救った場合はボーナスあり……これはこの前ナンパを助けた時に立証されてるな。
「ちょっと待ってよ……私に超不利じゃん……」
「そんなに人に死ねって思ったり言う事ってあるか?」
「他のクラスメイトとかには無いけど……」
俺にはあるってか。失礼しちゃうわ。
「今覚えてるのでこの辺りじゃな。もしかしたら忘れてるだけで他にもあるかもしれんが」
言い忘れの達人であるリンネ。こっそり自分に保険をかけているのは流石と言うべきか。
この四つ……窮地から救うのは滅多に無いから、実質三つか。割とチャンスがありそうな気がするな。
「……ま、出来るだけ関わらなければいい話なんだし。多分大丈夫でしょ」
「俺は全力で関わりに行くけどな」
「キッショ、死ねばいいのに………………あっ!」
「はい喜んでー!!」
――――体重1kgダウンじゃー。
Yeah!!
………………
…………
……
それからというもの、一ノ瀬と俺の奮闘は続いた。
時にはうっかり口を滑らせ。またある時は鬱陶しい俺に内心恨み辛みを募らせて。
一進一退の攻防を何度も何度も繰り返し、やがて我慢の限界が来た一ノ瀬は必殺技を繰り出すことにした。
彼女のその必殺技とは『無視』だった。
俺が何をしても無視。友人がいる時にちょっかいを出せば、一ノ瀬の周囲にいる友人たちが俺を排除しにかかる。
そうこうしているうちに、俺専用バリアーが用意されていき、いつの日か一ノ瀬に近付くことすら出来なくなっていた。
悶々と日々を過ごし……一年と少しが過ぎる。
二年生に進級し、どの程度経っただろうか。
学校に行くために外に出ると、一ノ瀬が待ち構えていた。
一年経って更に美人になった彼女の口から放たれたのは、衝撃の事実である。
「死んでくれない?」
……おおん?
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目元 51 / 100% 37 → 51%
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鼻筋 57 / 100% 50 → 57%
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口元 48 / 100% 33 → 48%
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身長 168 / 177cm 164 → 168cm
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体重 74 / 70kg 81 → 74kg
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ストックが少し余裕出来たので
金・土・日・月と4日間連続で更新します。是非見て下さいな。




