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夢と色と現実

人によってそれぞれ見える世界がある

ある特殊な感覚を持った人に会ったことがある。その家系の弟に当たる男の子が夢中になりすぎているものがある。それは夢。彼曰く無限とも言える夢の中に存在するあらゆる森羅万象がある一定の時に達すると、最も美しい空間が生まれるといったものらしい。男の子はそれを夢食(ゆめくい)と呼び、この夢食(ゆめくい)を忘れたくなくて現実でも絵で再現するようになった。

「僕は僕の夢と共生している人間だ。自分の夢は自分しか見られない。その夢を作り出すのも自分、世界に自分しか適性がいない。その夢に価値がある人にとっては食に値するくらい大事で、夢に自分という栄養を届ける存在であり続けないと理想の自分を保てなくなる。僕にはバクが住みついている。僕の娯楽は頭の中のバクによって与えられ夢から現実に反映される。夢は自分の意識で感じられない脳の奥深くにあるものを五感を通じて教えてくれるものであり、バクから意識をもらってるだけの人形みたいな僕にこんな享楽的な体験を与えてくれるのはどう感謝したらいいかわからない」

と要約はしたが、夢のことはよく熱心に話し、彼が描いた絵もたくさん見せてくれた。彼は日常に隠れているたくさんの幸せを話すように喋りその姿はイキイキとしていた。私もそんな弟さんを前にして興味を示しながら、できるだけ会話を盛り上げようと聞いていたが、私の目には弟さんの絵に使われている色は専門知識がない私にとって見たことのない色使いがあしらわれている。これも所謂華のある画家特有の色彩感覚なのであろうと納得した。特殊な体験を持つ人が特殊な感覚を持ち合わせているということは偶然ではなく、後に才能や天才と言われる存在を目の前にした所感だった。

そんな観念を持った弟さんの父母姉の家族はあらゆることを否定せず、持てる許容量を超えて理解しようとしてくれる唯一の存在のようだ。私には理解しがたいこの様、全くの他人から見れば精神系か宗教的なものに取り憑かれてしまった風に見えてしまうのも仕方がない。優しい家族と弟さんのコミュニケーションは問題なく見える。食事もするし、絵も描く。弟さんの部屋も絵を描く道具が多いことを除けばごく普通。内情を知らない人から見れば絵が好きで独特な世界観を持ち合わせている真人間に見える弟さんだった。

彼はとてもとても夢を大切にしている。まるでそれがないと死んでしまうかのように。私たちにとっては寝る時に起こる少しの出来事に過ぎない現象なのだが、どうも彼にとっては自分の世界を構成する要素らしい。彼の世界は彼しか見ることができない。だから他人と同じように私の目では彼が見ているその景色は全くわからない。でも分からないなりに最も美しいと称する彼の独特な景色をカメラで撮ってみたいなと思った。邪魔の入らない綺麗なレンズで。

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