共に暮らす獣たち
草原でコロコロと転がり合う二匹の獣がいた。そのじゃれ合う姿はとても愛らしい。
一方は人間と共に暮らす犬だった。
もう一方は魔族と共に暮らす魔獣だった。
姿も種族も違う二匹が出会ったのは、ある寒い冬のこと。
その日はとても寒かった。
いつもなら犬は主を温めるために一緒に布団に入って寝ているはずだったが、その日犬は粗相をしてしまった。怒ってしまった主は犬を外へ追い出してしまった。
犬には粗相をした自覚があった。だから甘んじてその罰を受けたのだ。
犬と主はそれなりに長い付き合いだった。あれほど怒ってしまった主が落ち着くには暫く時間が必要だろう。
犬はこの寒い中をどこで過ごそうかと考えながら歩き始めた。
その日はとても寒かった。
こんな日は大きな獲物が出てくる。魔獣は主と共に狩りに出かけていた。主の武器が獲物を貫く。逃げ出した獲物を魔獣が追いかける。
その日の獲物は大物で、傷付いてなおその力が衰えることはなく、むしろ傷の痛みで攻撃性は上がっていた。魔獣は必死に獲物を仕留めにかかったが、結局逃げられてしまった。
何も持ち帰ってくることなく帰ってきた魔獣に主は怒りだし、その日一晩魔獣は寒空の下に追い出されることになった。
魔獣は自分の不甲斐なさを思い知って、甘んじてそれを受け入れた。
魔獣はこの寒い中をどこで過ごそうかと考えながら歩き始めた。
そんな境遇の二匹は雪の降る雪原で初めて出会った。出会った直後、同時に驚いた二匹はすぐに臨戦態勢に入り、ジリジリとお互いがどう動くのかを見極めるように睨み合う。
一発触発の空気を一気に緩めたのは、同時になった腹の音だった。思わずきょとんとした二匹は、同じタイミングで笑いだした。
「お前も腹が空いているのか?そんなに毛並みが良くて可愛がられているはずなのに。」
そう魔獣が言うと
「今日はある意味特別な日でね。普段通りながら、俺は今頃主にブラッシングされた後に一緒にベッドに入っている時間さ。」
「それはそれは!相当可愛がられていたのに随分嫌われたものだな。」
「毛並みでいうならお前も負けていないだろう?それにとても綺麗にバランス良く筋肉がついている。相当駆け回っているだろう。」
その犬の言葉に魔獣は大き溜め息をついた。
「そう、この筋肉に身体は私の武器だ。そんじょそこいらの獣に負けるつもりはなかったが、今回は相手が悪かった。」
「ふうん、お前はいわゆる狩猟犬なのか。」
「お前は主と狩りをしないのか?!」
そう驚く魔獣に犬は是と応える。
「俺はそうだな、いわゆる愛玩犬なんだろう。主とは散歩をして遊び、主を楽しませるのが役目であり、喜びだ。」
そこからは人間と共に暮らす犬と、魔族と共に暮らす魔物は時たま初めて出会ったこの場所で交流を行うようになった。
ある雲一つない晴れた日には
「俺の主は子供の前では無力になるのさ。この間は俺のような格好をして、背中に子供たちを乗せていたよ。とても楽しそうにね。」
「人間とは愉快な生き物だな!私の主の子供たちは私の背中によく乗っているぞ。」
「お前の大きさなら子供なんて簡単に乗せられるだろうな!俺の身体を見てみろ、俺はこの身体で子供を乗せて歩けと言われたぞ!」
と語り合い。
ある雲の目立つ寒い日には
「聞いてくれ……この間まで私の主がご乱心だったんだ。」
「なんだどうした、今日はお前がご乱心だな?」
「からかうな!……聞いてくれ……今日、主が私以外のものに顔を埋めて"幸せだ……我が家に来てくれないだろうか"と言っていたんだ……!」
「……アハハハ!それからどうした?!」
「笑うな!……その後、私にソイツの子供を持ってきてな……。"預かることになった"と三日三晩、私に面倒をみろと言ったんだ!!」
「フフフフフ……!それでお前はどうしたんだ?」
「どうした?!そんなの仕方ないから面倒をみるしかないだろう!アイツは恐ろしい生き物だった……。言葉がまるで通じない、私の怒りもアイツは愉快なことのように振る舞ってな……。それを笑いながら見てくる主たちのことすら理解に苦しむ数日間だった……。」
「フフフ……!アハハハハ!!それは大変だったな、俺もその場にいたかったくらいの悲劇だ!」
「……次に機会があればここに連れてきてやろう。お前も悲劇を味わうが良い……!」
と笑った。
草原で転がり合う二匹は今日も共に遊ぶ。
「ああ、お前の暮らしは面白そうだ!」
「なにを、お前の暮らしも飽きないだろう!」
「友よ、お前の暮らしは楽しそうだ!!」
お互いの、仕える主の姿も種族も違う二匹はとても仲の良い友達である。




