朗読会
これは表舞台から隠された秘密のお話し。
誰かがボロボロに引き裂いてしまったものを貼り合わせた記憶。最後の一欠片の思いだけで残る、触れたら消えてしまう幻なのです。
あるところに立派な国王様とそれを献身的に支える王妃様がいました。立派な国王様はよく国を治め、王妃様はそんな国王様を支えながら民に寄り添いました。
そんな国王夫妻が民に愛されないわけがありません。国王夫妻が国や民を愛したように、民も国と国王夫妻に敬意を示しました。
そんな平和な日々が続いていたある日。王妃様が身体の不調を訴えました。元気だった王妃様の突然の体調不良に、国中は大慌てです。王城にはよりすぐりの医者たちが集められました。たくさんの医者たちが検査をして、王妃様の体調不良の原因がわかりました。
王妃様は妊娠していたのです。
これを聞いた王様は王妃様を抱きしめて、感謝を伝えました。
「ありがとう、愛する君よ。ありがとう、まだ見ぬ私の子よ。」
王妃様を敬愛する民たちも、自分たちのことのように喜びました。
それからは王様は王妃様をもっと気遣い、とても丁寧に接するようになりました。
「辛いことはないか?」
「何か欲しいものはないか?」
「痛いだろう、大変だろう。私が少しでも変わってやれたら良いのだが。」
そんな王様に、王妃様は温かな笑顔を向けてこう応えました。
「私はあなたがそう考えていてくださるだけで充分です。私は幸せものですね。」
と。
それから暫くして、王妃様の苦しそうな声にただただ祈ることしかできない王様の姿がありました。
「神よ、我が子と妻が無事でありますように。」
そこにはただ純粋に愛するものの無事を祈る男がいるだけでした。そして男の祈りは届きます。
王妃様の部屋から赤ちゃんの大きな産声が聞こえてきたのです。
医者たちの静止も聞かずに王様は慌てて王妃様の部屋へ入りました。そこには疲れ果てているのに笑顔な妻と、産まれたばかりの赤ちゃんがいたのです。王様にとって、新たな宝の誕生でした。
王様は二人を抱きしめて誓いました。
「必ず君たちをたくさん愛して幸せにしよう。」
王様はこの誓い通り、二人をたくさん愛しました。忙しい執務に追われながらも、出来る限り二人と過ごす時間をとったり仲良く遊んだりしました。
そんな幸せに満ち溢れていた日々に暗雲が近付いていたことに、王様たちは気付くことができませんでした。
暗雲に気づき始めたのは、王妃様のお腹に二人目の命が宿った頃でした。
その頃、この国では貿易や諸外国との交流が盛んに行われ、色んなものや人が出入りをしていました。この国の王都では特にそれが盛んで、王都は毎日賑わっていました。
色んなものが飛び交う王都に、ある噂が流れ始めていました。
"最近魔物の動きが活発だ。"
そんな噂でした。
この国は魔物との境界線をきちんと守っていたので、この噂は何も起きないまま、流れ流れていきました。
そんな中、王妃様は無事二人目の赤ちゃんを出産しました。王様にまた守るべき宝が増えたのです。
色んな人の愛情をたっぷり浴びながら育った赤ちゃんたちは幸せいっぱいに育っていきます。
そんな赤ちゃんたちの幸せたっぷりな生活は簡単に、呆気なく壊れました。
ある時を皮切りに、城に仕える者は勿論のこと、王様も王妃様もとても慌ただしく動き始めまた。
赤ちゃんたちには何が起こったのか、これっぽっちもわかりませんでした。誰かしら時間を見付けては
「大丈夫。安心して。平気だから。」
と赤ちゃんたちを抱きしめに来るのでした。
「……国との連携を……!」
「あそこの国も……物にやられ……。」
「国境付近……村……消え……。」
断片的に聞こえる言葉も、赤ちゃんにはわかりませんでした。
「……魔族……間の……。」
「…………裏切り者……!」
何も何も、わかりませんでした。
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誰かがボロボロにしたときに、きっと紛失してしまったのでしょう。
おや、最後の方に少しだけ切れ端が残っています。きっと強い思いで残ったものなのでしょう。せっかくなので読んでみましょう。
こうして王様は取り戻しました。
国も城も全て全て。
けれども王様が唯一取り戻せなかったものがありました。
唯一取り戻せなかったものは、全て憎しみに、憎悪へと変化しました。
王様はその憎悪を今も抱いて生きているのです。
これにてこの秘密のお話しはおしまいです。ボロボロの記憶は本人にしか直せません。この記憶は、ずっとずっと奥に仕舞い込まれていた誰のものかもわからない、張り合わされた誰かの記憶。




