ある小春日和の悲劇
鳥が鳴き、蝶が羽ばたき、獣が走る……。
素晴らしい……なんて素晴らしいんだ……これこそおれの好むものだ。自然というのは、常に変化しおれを飽きさせない。四季の何時にみてもおもしろい。
同時に、おれが自然にとってあまりにも不自然な存在である事に苛苛する。意思というものは確かにこの世界に繁栄を齎したが、些かヒトとかそれに類似した生き物はその意思というのが強すぎる。
神よ……神なんて何だかわからないが神よ……おれを許したまえ……。ひとえに祈るがその祈りが届くことは無い。だっていわゆる神とかこの世界にいないし。
しかし、神という概念はなかなか面白い。昔なら無かった考え方だ。万物を愛し救ける、圧倒的な力をもったもの。おれも昔の力を今そのまま持っていたなら神と崇められたのだろうか。いやないな。
雲が浮かぶ空を見つめながらそんな事を思案する。なんせ暇なのだ。おれは長く生きるから、大体のものはいつかは飽きるし終わってしまう。それが残念で仕方ない。この世界は面白いもので満ちているのに、おれはそれを最期まで楽しむ事が出来ない。
落胆を感じ何時もよりは落ち込んだ気持ちで動く雲を目で追いかける。そうしていると、頭になにも浮かんでこなくなる。時間があっという間に過ぎる。
……空が茜色に染まった。そろそろ宿に戻らなくては。意識を現実に引き戻し、ダルい体を起こす。
ここは街より離れた森の中だ。寝転んでいた場所は森の中にたまにある開けた場所で、人目につかないおれのお気に入りスポットだ。
3時間程度歩けば着くので、少なくともおれにとっては割と日常的に行ける場所である。女子供は難しいだろうが。
焦げ臭い。嫌な予感がする。その予感は悲しくも当たってしまった。
街が焦げている。所々まだ炎を残し、煙をぷすぷすと上げている。所々、人の焦げたものであろうと推測出来るなにかがあった。
おれは助かった。世界はやはりおれを許してくれなかった。
そうしてしばらく眼下の景色を眺めていた。既に全てが終わった。それ故に、何も為せずに。ただただ無意味に。
やはり、ヒトというものは愚かだ。それに敗北したおれはさらに愚かなのだろう。そして、神というものも存在しないのだ。
(置いてけぼりは、辛いものだな……)
おれは嘆いた。




