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ある男  作者: 井上
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ある面倒事への行動

 面倒な場面に立ち会ってしまった。寝て起きたら目の前が修羅場になっていた。


 おれは森の中、森の外には少女。そして少女を虐げるパッとしない顔立ちの老人。


 少女の方はボロボロですすり泣いている。足が傷ついているのか立てないようだ。老人は少女に剣の切っ先を突きつけなにか話している。内容は聞き取れないが、怒っていることは火を見るより明らかだ。額に青筋が浮いている。


 よーく見れば、遠くに魔術師が待機している。余程怨念のこもっている相手だったのだろうか。


 魔術師が何か唱え始めた、かなり気合いの入っているようでそこそこ距離が離れているおれでも十分詠唱が聞こえた。あれは、もしや光線を出す魔法ではなかろうか。光線を出す魔法は魔法の中でも特に強力なものであり、範囲内にあるものは焼き切れる。きっと少女の頭でも吹き飛ばすつもりなのだろう。


 おれに詠唱が聞こえているということは、少女に聞こえない道理がない。そして光線を出す魔法はその危険性の高さから多くの人が知っている。よって、少女の顔は今恐怖に歪んでいた。


 別におれが少女を守る義理は無いが、人が目の前で死ぬのも胸糞悪い。やらない後悔よりやる後悔と言うし、まあ、助けてやろうか。そう思い、おれは外に出る機会を伺う。まだ魔術師は詠唱をしている、いま出ては、攻撃を止めることは出来るが防ぐことは出来ない。魔法は途中で中断しても再開できる。出るなら、発動する直前だ。


 詠唱が終盤に差しかかる。さあもうすぐだろうか。動く準備をする。


 魔術師が最後に名前を唱え、魔法を完成させる、その最中に少女の前に躍り出た。その瞬間、魔法は不発に終わった。中断などではない。魔術師が驚いたからでは無いが、正直おれも原理をよく分かってないから説明できない。


 魔術師と老人が驚き固まっている隙に少女を抱え森の中に逃亡する。その際、正気に戻った老人がなにやら喚いていたが知ったこっちゃない。


 ちなみに、少女は恐怖のあまり気絶していた。


 おれは彼らの間に何があったのか知らないし、知る気もない。それがおれの運命なのだ。


 だからおれは、はた迷惑な旅人として、できる限りのことをして生きよう。そう考えたのだ。

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