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ある男  作者: 井上
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ある日の流星群

 空を一つ、二つと星が走っては消えていく。

 おれはそれを緩やかな丘に寝転び、それを見ている。


 どこかで聞いた話では、星が走り終える前に願い事を三回言うとその願いがなんでも叶うとか何とか。いやムリだろ。


 だが、やはり何でも願いが叶うというのはロマンがあるものだ。おれだったら何を願おうか。


 ……特に無かった。つまり、今の環境がおれにとって最適ということだろうか?


 流石に昼よか暗いが、普段の夜空よりは明るい天空を見ながら色々と思案する。こんなこと、明日には忘れているだろうが、きっとそんな事が日々を豊かにすると思うのだ。知らんけど。


 にしても、なんて優雅なのだろうか……きっとお貴族サマじゃあこんな事は出来ないはずだぜ。なんせヤツらは超忙しいって聞いたからな。もうウン年前に聞いた話だから今は違うやもしれんが。


 軟風があたりを撫でていく。草がそよそよと揺らぐのが見えずともわかる。なぜなら頬がこそばゆいからだ。


 ……。


 …………。


 ………………。


 飽きた。帰ろう。


 すっくと立ち上がり丘をざざざと降りていく。木板があれば更に軽快にこの丘を下れるのだが、この間見たら虫に食われていた。


 虫、ゆるすまじ。思い出したら腹立ってきた。足元にいた虫を下る勢いで轢き殺す。連帯責任連帯責任。おまえがわるいのだ。


 丘を下り、しばらく砂利道を歩くと、川の傍に建っている小屋が我が家である。


 川、ようは水源が近くにありなんと水車もついている。町へのアクセスも悪くない。なぜこんな物件がおれの手の内に収まるまで売れ残っていたのか……それは今でも分からない。訳ありかもしれないが今の所何も起きていないので良しとする。


 星を見に行ったのはただの暇つぶしなので、もうこのまま寝てしまう。もう日も沈んでいることであるし。


 ああ、今日も何も無い、素晴らしい一日だった。


 寝たしばらく後に、くわが倒れた音に驚いて頭を打ったこと以外は。おれの体質上すぐ治るが痛いもんは痛いんだぞコノヤロー。

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