ある戦争の前日譚
(あれがうちの将軍? 笑わせるな)
俺の視線の先には、至って平凡な顔つきの、そう、探せばいくらでも出てきそうなイマイチパッとしない人物が我が物顔で花道を闊歩している。
その「将軍」とやらはこちらを一瞥した。しかし、その目には何の感情も含まれていなさそうだった。
(ふん、調子に乗りやがって)
おれは鼻を鳴らす。それに隣のヤツはイヤそうな顔をしたが知ったこっちゃない。
「将軍」はずんずん進んでいくと、まるで祭壇のような場所で止まる。この花道の終着点があの祭壇なので止まる以外何も出来る訳が無いのだが。
おれはあれが事前に設置されていた現場を昨日覗き見た。何なんだろうなアレ。
「将軍」はそこに置かれている箱の紐に手をかける。なんとも高級そうな細工の紐が、しゅるしゅると解かれ台の上に落ちる。そして、縛るものが無くなった箱の蓋を、「将軍」がゆっくりと持ち上げる……。
クソっ、こちらからでは何が入っているか分からない。全く、戦争の前だというのに、このような学芸会とでも呼べるような儀式に付き合う必要性を感じない。
舌打ちをし地団駄を踏む。隣のヤツは先程よりも更にイヤそうな顔をして少しおれから距離をとった。更に隣のヤツも「え、なに?」みたいな顔をしていた。
横に蓋を小気味いい音で置くと、「将軍」は中に手を突っ込み、出したものを被った。どうやら仮面だったようだ。と、同時に、一気に周囲の空気が張り詰めた。まあ……おれは、そんなでもないが……。
さっきまで不機嫌な顔をしていた隣のヤツも、今は恟然きょうぜんとしていた。
うーん、確かにな〜んか迫力的ななんかマジカルパワーを感じないでもない仮面ではあるが、そんな蛇に睨まれた蛙のようになる程じゃないとおもうなおれは。
「将軍」がこちらを向いた。目が合ってしまったので一応目礼しておく。これでも無礼か。
今度はすぐにおれから視線を外さなかった。それどころか、今度はなにか、面白がるような感情を含んでいた。
「将軍」が大衆の方向に向き直り、咳払いをすると響くような声で号令を掛けた。それで他の無様にも固まっていた兵共は奮い立ったらしい。周りがかなり盛り上がっているのでおれもノっておいた。
ちなみにこの後の戦争は大勝利だった。
というか、将軍が強すぎて俺は後ろで「強〜ウケる」してただけだった。
仮面のちからってすげー。




