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◆ 6話 元気なあいつ


 どの学校でも絶対クラスに一人はいるお調子者。


「どしたんやシュウ、えらい変な顔して」


 それがこいつ、谷口(たにぐち) 和馬(かずま)だ。


 こいつとは同じクラスで、俺が中二の時に通っていた中学に転校してきて以来、ずっと親友をやっている。


 特徴としては、この変な関西弁か。


 親の都合で何回も引越しを繰り返してるせいで元の関西弁が変にナマってしまったらしい。




 そして今は昼休み。


 俺が購買で買ったパンを食べていると、カズマが喋りかけてきた。


「別に普通だ。あと変な顔はしてない」


「おっとわるいわるい。変な顔やなくて暗い顔やった」


 カズマは俺の前の席に後ろ向きで座る。


「どーやったらそんな言い間違いするんだよ」


「まぁ気にすんなよ。ってか今日はアヤカさんのとこ行かへんのか?」


 さりげなく俺のパンを奪って食べようとするカズマ。


「別に俺が行ってるんじゃなくて、俺が行くところに先輩が現れてるだけだ」


 それをさせまいとカズマの手首を教科書の角で叩き、パンを奪い返す。


「それって一緒ちゃうん?」


 パンを奪い返され、諦めたと思ったらすぐにもう一度パンを奪おうと手を伸ばすカズマ。


「全然違う。 別に俺はぁってあんパンはやめろ!」


「ふふふ… このあんパンの命が惜しくば代わりにそのいちごジャムパンをよこすのだ」


「チッ しかたない」


 俺は人質にとられたあんパンを助けるべく、しかたなくいちごジャムパンを生贄としてカズマに渡すことにした。


「サンキュ! てかさ、前々から思ってたんやけどな」


 パンを食いながら起用に話すカズマ。


「シュウ、お前はもっとツッコミの腕を磨いたほうがええと思うねん」


「!? ゴホッゴホ!!」


 びっくりしてむせる。


 ツッコミってこいつ、昨日の先輩と俺の会話聞いてたのか!?


 急いで牛乳でパンを流し込み、平静を装って質問してみる。


「き、急にどーしたんだよ?」


「いやな、前からずっと思ってたんやけど言うタイミングがなかなかなくてな?」


 カズマまで俺にツッコミをしろいうのか…


「そうか… ツッコミって、難しいか?」


「お、食いついたな。ツッコミできるようになりたいか?」


 なぜかマジ顔のカズマ。


「ま、まぁちょっとくらいなら…」


 なんか素直に言うのは恥ずかしいので視線を横にズラして言う。


「ほな行くで! ツッコミの練習や!」


 そう言うとカズマは持っていたパンを口に押し込み、勢いよく立ち上がった。


「どこに?」


「んなもん決まっとるやないか!」


 こうして訳もわからないまま、俺はカズマに拉致られた。




「着いたで」


 俺がカズマに連れてこられた場所、そこは一


「なんで屋上なんだ?」


 屋上は基本的に立入禁止だ、前までドアにもカギがかかっていた。 なのでまずここに来ようなんて思うやつはいない、はずなんだが…


 どーしてこいつはここのカギがあいてると知ってるんだ?


「練習といったら屋上やろ?」


 さも当たり前かのように言うカズマ。


 いや、違うだろ。


「で、お前はいったい何がしたいんだ?」


「流れでわかるやろ? ツッコミの練習に決まってるやんけ!」


 ぁ、やっぱりそうか。


「練習って何するんだよ?」


「ん? そやなぁ、じゃあ今からオレがボケるからそれにツッコんでくれ!」


「わかったけど、どーやってツッコんだらいいんだ?」


「んなもん適当でええって!」


「わ、わかった」


 なんでこいつこんなに張り切ってんだよ… ちょっとうざいぞ。


「よっしゃボケるでぇー! ってなんかめんどくさなってきたなぁ、やっぱやめへん?」


「は? 別にやめるならいいけど」


「このドあほ!!!」


「ぐぁ!」


 急に俺を殴りとばすカズマ。


「何すんだよ!?」


「とんだおとぼけさんやなぁォイ」


 カズマは倒れた俺に馬乗りになり、俺の胸ぐらをつかんで少しだけ引き寄せる。


「ちょっ、顔が近い!」


「今のはなぁ、今のは」


 だめだ全然話を聞いてない。


「今のはボケやぁ!!!」


 俺の顔の前で力いっぱいに叫ぶカズマ。


 うわ!? 唾が!? 汚ね…


 顔中に唾をとばされ、へこむ俺を無視してカズマは語り出した。


「今のはな、オレがボケるぞ! って気合い入ってたのに急にやる気なくなったんに『どないやねん!!』ってツッコむとこやろ?」


 そーなのか? ってわかるか!?


「とりあえずその、すまん」


「まぁまだシュウにはレベル高すぎたかもしれんなぁ。ってもうこんな時間やないか!? 授業始まってまうで!」


 何もない腕を見ながら慌てる仕草をみせるカズマ。


 腕時計のつもりなのか? ならツッコまないとな。よし。


 俺は起き上がり小さく気合いを入れ、全力でツッコんだ。


「お前それ腕になんもついてな一」


キーコーンカーンコーン


 しかし俺の全力のツッコミも、昼休みの終わりをつげるチャイムにより消失した。


「………」


「………」


「……さ、戻ろかな。まぁ続きはまた今度な!」


 気まずい空気に耐えられなくなったカズマは、そう言って屋上を出て行った。


 ったく・・・ どーしてこう、どいつもこいつも自分勝手なんだ…


「…やば」


 俺も遅刻じゃねーか。



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