表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

◆ 4話 無理矢理デート その2

「うまいな」


「ですね!」


 俺達はあれから10分ほど歩いたところにあるラーメン屋で昼飯を食うことにした。


 俺もモエもしょうゆラーメンだ。なかなかうまい。

 

「あ、そうそう」


「はひ?」


 ラーメンを口に入れた状態のままこっちを向くモエ。


「ああ悪い、先にそれ飲み込んでくれ」


「わかりまひは」


「いやだから早く食えって」


「ひゅいまひぇん」


「……」


 こいつバカか?


 どんどんと胸のあたりを叩き、口の中のものを無理矢理飲み込んだモエ。


「それで、どうしたんですか?」


 はぁ、やっとか。


「あのさ、同い年だしその敬語はやめないか?」


 そう言うとモエはきょとんとした顔になり、


「モエ、敬語になってますか?」


 何を言ってるんだこの天然娘は…


 俺は軽く呆れながら答える。


「ああ、なってる」


「ぅぅ、すいません…」


 うつむきながら謝るモエ。


「それだそれ、ごめんでいいって」


 なんか俺がいじめてるみたいだな。


「はい、じゃなくて… うん?」


「まぁ無理に直さなくてもいいけどな、それはそれでモエらしくていいかもしれないし」


 急に変えろと言われても難しかったか。


「モエらしい。ですか?」


 首をかしげながらこっちを見てくるモエ。


 なんかかわいいな。って何を考えてるんだ俺は…


「ああ、雑な先輩と違って丁寧でモエらしいよ」


 俺がそう言うとモエは顔を赤らめ、照れだした。


「えへへ~」


 どーして照れる? なんか喜ばすこと言ったっけ?


 ここで先輩からのメールを受信。


『死ね』


 なんで!? 何かしたか俺!?


「あの、顔色悪いですよ?」


 心配そうに見つめてくるモエ。


「ぁ、いや、なんでもない! それよりそろそろ行こうか」


「はい!」


 ちなみに飯代は先輩の指示で俺が払わされた。


 まぁ別にいいんだけどな。だいたい予想はしてたし。




 そして俺達は店を出たあと、特にすることもなかったので近くにあるショッピングモールをぶらぶらすることにした。


 途中、先輩から『手つなぎなさい』とメールがきたが、もちろん無視することにした。


 二人で並んで歩く姿は本当にカップルのようだ。


 と、言いたい所だけどいかんせん会話がない、気まずいなこれ、何かしゃべらないと、


 そして俺はベタに、


「モエって好きな人とかいるのか?」


 という話題で攻めてみることにした。


「へ!? ぃゃっ! ぁの、その…」


 なぜかテンパるモエ。


 あれ、変なこと聞いちまったか?


「あ、言いたくなかったら言わなくていいからな?」


「そ、そうじゃないんですよぅ。モエはシ、シュウ君、が… ぅぅ」


 モエは顔を真っ赤にしながら下を向いてしまった。


 やば、さすがに年頃の女の子に好きな人を聞くのはまずかったか。


 とここでまたメールがきた。


『殺』


 こわ!? 恐いですって! 確かに今のは俺が悪かったですけど。


『そこじゃない』


 へ? じゃあなんなんだ?


『自分で考えなさい』


 何かしたかぁ?


「ぁの…」


 何のことか考えていると、モエが声をかけてきた。


「ん? どした?」


「楽しく… ないですか?」


 モエは今にも泣きそうな顔で聞いてきた。


「そんなことないって! 楽しくなさそうだったか?」


「はぃ、なんか難しい顔してました…」


 おっと、自分の世界に入ってたか。


「わるい、ちょっと考え事してて」


 両手を合わせ、少し頭を下げる。


「本当、ですかぁ?」


「ああ本当だ」


 だからそんな目をうるうるさせないでくれ。罪悪感で今夜眠れなくなるかもしれないだろう。


「なら、よかったです!」


 そしてニコッと笑顔になるモエを見てなぜかテンションが上がってしまった俺は、少し調子に乗る。


「ぉう、お詫びに何かおごるよ。何がいい?」


「い、いいですよそんなの!」


 両手をブンブン振りながら断るモエ。


 なんかモエって小動物みたいだよな。


「本当にいいのか? 遠慮しなくていいぞ?」


「ぁ、ぇと、じゃぁ…」


 そう言いながらもじもじとするモエ。


「なんだ?」


『裸になって幼稚園に乗り込んでください!』


 先輩は黙っててください。


 俺は先輩からのメールに心の中でツッコミつつ、モエが口を開くのを待った。


「ま、また今度、こうやって遊んでください」


 あれ、なんか話飛んでません? いや、ここは男としてつっこまないでおこう。


「いいけど、そんなのでいいのか?」


「はい! いいんです! それがいいんです!」


 なぜか必死になるモエ。


 ぁ、初めて目合った。


「ならいいけどさ、俺なんかと遊んで楽しいか?」


「いいんです! モエ、引っ越してきたばっかりで、まだ学校以外で遊べる友達もいないんです」


 そういえば中学卒業してすぐ来たって先輩言ってたし、色々と訳ありなわけか。


「よし、そういうことならこれからもどんどん色んなとこ遊びに行くか!」


「ほんとですか!? やった!」


 そこまで喜ばれると逆に俺なんかで申し訳なくなるな。まぁ俺も楽しみといえば楽しみなわけだが。


〈らんらん らんらららんらんらん〉


 と、ここでモエの電話が鳴る。


「あ、お姉ちゃんからだ」


 なんだ、今度は何をするつもりだ?


「もしもし? うん。そーなの? わかった~」


 電話を終え、携帯を閉じたモエに恐る恐る聞いてみる。


「先輩、何だって?」


「ちょっと緊急事態だから帰ってこいって」


「そ、そうか」


 ってそれだけ、か?


「えっと、じゃあ…」


 口ごもるモエの変わりに俺が一言。


「帰るか」


「・・・うん!」


 一瞬だけ悲しそうな顔を見せるモエ。


 まだ遊び足りないのか? まぁそれは次に置いておけ、と心で言っておく。


 そのあと俺はモエを家まで送り届け、自分の家に着いた頃にはもう日が半分沈んでいた。


 にしても最後の電話、珍しく先輩が変なことを言わなかったな。


 まぁ、それにこしたことはないんだが。






 後日、先輩が『わかる乙女心!』という本を俺に買ってくれたが、趣旨が理解できなかったので俺がこの本を読むことはなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ