◆ 3話 無理矢理デート その1
今日は日曜日。
朝起きると先輩からメールがきていた。
「んんー」
のびをして、眠い目をこすりながら携帯の画面を見る。
『12時にこうもん』
12時に肛門? …ぁ、12時に校門か。12時に学校の校門に来いってこと? 相変わらず先輩のメールは内容がわかりずらいな。
なんて考えながらふと時計をみる。
時計の針は11時40分をさしていた。
「…やば」
家から学校まで急いでも10分はかかる。
俺は急いで用意をすませ、学校まで走った。 それはもう凄く走った。
「ハァ… ハァ… 間に、合ったか…」
ぎりぎり12時に間に合った。 まだ先輩は来てないな。
「ぁ、ぁの…」
遅刻したら先輩に何言われるかわかったもんじゃない。 自分はいつも遅刻するくせに。
「ぇと、ぅぅ…」
にしても遅いな。急に呼び出しといて、まぁ呼ばれてのこのこと来てる俺も俺なんだが、また変なことでも思いついたのか?
「あの!」
「ぅわっ!?」
振り向くと、そこには白いワンピースを着た私服のモエがいた。
「やっと気付いてもらえた…」
「なんだモエか。びっくりしたー 急に脅かすなよな」
俺がそう言うとモエは、軽く口ごもりながら、
「さっきからずっと呼んでましたよ?」
と甘ったるいロリ声で言ってきた。
てかなんでさっきから俺と目を合わせようとしないんだろ。
「あーごめんごめん。ぼーっとしててさ」
「そーなんですか?」
ってあれ?
「そーいえばなんで休みなのにこんなとこにいるんだ? 誰かと待ち合わせでもしてるのか?」
「はい、12時にここに来るように言われたんですけど… こないんですよぅ」
ちなみに今はもう12時10分だ。
「そうなのか? 俺もここで待ち合わせしてるんだけど、相手がこないんだよな」
「ぁ、同じですね!」
なぜか嬉しそうなモエ。
「だな」
偶然、な訳ないよな・・・ ぁぁ、嫌な予感がする。
「なぁ、もしかしてここに来いって言ったのって…」
「お姉ちゃんです」
やっぱりか… いったいあの人はどーゆーつもりなんだ。
ぁ、先輩からメールだ。
『今日は一日モエとデートさせてあげるわ』
デート? なるほど、これが目的だったか。
返事を返す。
『結構です。 呼び出しといて来ないなんていったいなんのつもりですか?』
『呼び出したけど私が待ってるとは言ってないわ。 以後、質問は一切受け付けないわよ』
くそ、はめられた…
「どーかしたんですか?」
どうしようか考えていると、モエが声をかけてきた。
ああそうか、モエは先輩にはめられた事に気付いてないのか。
よし、モエに本当のことを話して今日は帰ろう。たまには先輩の計画を潰してみるのもいいよな。
「なぁモエ。 実は俺達先輩にだまさ一」
〈らんらん、らんらららんらんらん〉
突然、どこかで聞いたことのあるような歌が俺の言葉をさえぎった。
ジ○リ?
「ぁ、ごめんなさい。電話です」
なんだモエか。てか着信音ナウ○カ!?
それになんてタイミングの悪い電話だ。まるでわざと俺の邪魔をしてるみたい… まさか!?
「―うん、うん、わかった。じゃあね~」
「おい、今の電話の相手って…」
「お姉ちゃんからでした」
しまった。 さすが先輩、仕事が早いな。
って関心してる場合じゃないな。
「先輩なんて言ってた?」
モエは携帯をバックにしまい、頬に指をあてながら少し考える仕草をした。
「えっと、三人で遊ぼうと思ってモエとシュウくんをここに呼んだらしいんですけど、急用で遅れるから先に二人で遊んでてって言ってました」
「そ、そうなんだ、はは・・・」
やられた… これだと帰れないな。ったくしかたないな、少しだけ付き合うか。
「・・・ってことはシュウ君と二人きり? ひゃぁ!」
モエが何かを呟き、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。
「どーしたんだ? 腹でも痛いのか?」
俺がしゃがみ込むモエに近こうとすると、
「な、なんでもないです!」
と言って急に立ち上がった。
「あぁそう?」
姉妹そろって元気だなぁ。
「はい!」
「ぉ、ぉう」
元気に返事はするものの、モエはうつむいたまま相変わらず目を合わせようとしない。
気まずい。先輩、助けてください! どーせどっかから見てるんでしょ?
先輩からメールがきた。
『YES』
人の心なんてよんでないで助けてください!
『お昼』
お昼? …そうか!
「あのさ、ボーっとしてるのもなんだし、とりあえず昼飯でも食べに行かないか?」
とモエに提案してみた。
「ぁぁダメですよぅこんなところでっ。でも…シュウくんなら・・・」
しかしモエはなんだか一人で危ない世界に浸っていた。 俺なら、なんなんだ?
「おい、なんか色々と大丈夫か?」
「ひゃっ!? はははぃぃ! お昼ご飯ですね行きましょう大賛成です行きましょう!」
俺の声でこっちの世界に戻ってきたモエは、かなりテンパりながらどこかに向かって歩きだした。
さすが、先輩の妹だけあってモエもなんか… 変だ。
「ちょっと待った! まだ何食うかも決めてないのにどこ行くんだよ?」
するとモエはピタリと立ち止まり、とてもぎこちない笑顔でこちらに振り返った。
「は、はは… ごめんなさい…」
え、俺そんなきつい言い方したか!?
「えっと、なにか食べたい物とかあるか?」
「シュウくん…」
「ん? 俺?」
声が小さくてよく聞こえなかったが、確か今シュウくんって言ったような…
「ぃやっ! ち、違います! シュウくんを食べたいなんて思うわけ無いじゃないですかバカなんじゃないですか!?」
なにこの子!? なんかめっちゃ言ってくるんですけど!?
「ご、ごめん・・・」
「へ? どーしてあやまるんですか?」
え、もしかして今のの無意識? だとしたら・・・かなり恐いぞ。
にしてもモエってイメージしてたのと違うな。 なんか喋る時とかもぎこちないし、もしかして嫌われてんのか?
あ、先輩からメールだ。
『鈍感』
なにがですか?