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◆ 10話 カズマの買い物 その3


 シュウです。


 今俺は、はぐれてしまった先輩を探しながらモエとショッピングモールをぶらぶら歩いている所なんだが・・・


「えっと、モエ?」


「はぃ~?」


「ちょっと近くないか?」


 そう、モエがかなり近い。ってゆーかもうすぐ横にいる、歩くたびに手が何度も当たってるし、正直かなり歩きずらい。


「そ、そーかなぁ!? 気のせいだよきっとぉ! 気のせい… だよね?」


 いやいや聞かれても・・・ てゆーかどう考えても気のせいってレベルじゃないんだけどこの近さ・・・ あーやめろそんな泣きそうな顔で見てくるな。


 絶対正直に近いって言ったら泣くよなこいつ。


「ゃ、やっぱ気のせいか」


 もう何でもいいか。なるようになれ。


「だよね!? よかったぁ。バレてなくて」


 俺は思った。あぁ、やっぱり先輩の妹だよモエは。


 バカだ。ローマ字表記にするとBAKAだ。そのセリフは口に出したらダメなんじゃないのか?


 いったい何がしたいんだ? 嫌がらせか? だとしたら何のために?


「あの、大丈夫ですかぁ?」


「…ん? 何が?」


「シュウ君、今いやらしい顔してたよぅ?」


「してねぇよ!? 普通に考え事してただけだ! えぇい顔を赤らめるな!」


「でも、シュウ君なら… いいかな…」


 おっとそうきたか・・・


「おい、それはいったいどーゆー意味なん―」


「おいこら!!」


 とても気になる発言をしたモエを追求しようとすると、急に後ろの方から聞こえてきた大声によってかき消された。


 なんてタイミングの悪い・・・ にしてもなんだ? 誰かケンカでもしてるのか? なら変に巻き込まれる前にどっかに行かないと。


「行くぞモエ」


「へ?」


「俺はもめ事とかあるとほとんど100%巻き込まれるんだよ」


「もめ事?」


 意味がわからないらしいモエは、頭の上に『?』を浮かべて首をかしげている。


「だから―」


「おい! 聞いてんのか!」


 もう一度声が聞こえた。とゆーよりも声をかけられた。


 ほらみろまた面倒なことに巻き込まれた。


 そしてなぜに俺に声をかけるんだ?


 俺は疑問に思いながらも後ろを振り返る。


「―ッ!?」


 そこにいたのは、


「・・・どちらのラッパーさんですか?」


「違ぁう! ラッパーやない! オレはこんなとこでいちゃいちゃしとるお前らに腹を立てたただのチンピラや!!」


 そこには、だらしのない立ち方をしていて、サングラスに帽子、それにだぼだぼの服を着たカズマがいた。


 いやいやどう見てもラッパーだろ。もしくはイケイケヒップホッパーか?


「とうとう頭が沸いたかカズ―」


「カズマやない! ぇっと・・・ カズカズや!」


 どや顔で自分のネーミングセンスのなさを披露するカズマあらためカズカズ。


 もしかしてお前これ・・・ 変装のつもりか? だとしたらバレバレだ。さすがにこんなの誰だってわか―


「チ、チンピラ!?」


 わからないヤツいたよ…


「そぅやチンピラや! 恐いやろ!」


 恐くねーよバァカ。いまどきチンピラは無いだろ。


「こ、恐くなんかないですよぅ!」


 そう言いながら俺を盾にして後ろに隠れるモエ。


 …恐いのか? うそだろ? この低クオリティで?


「そうかそうか、オレが恐いか! ならもっと恐がらしたろ!!」


 そう言ってモエと俺に近づいてくるカズカズ。


「ぅぅ~」


 ああもう、なんでこんなめんどくさい奴ばっかりなんだ!


「おい、悪ふざけはやめろ、モエが怯えてるだろ」


「なんや? 文句でもあるんか?」


「お前は何がしたいんだ?」


「さーなぁ? 聞きたいことがあるんやったら力ずくで聞いてみい!!」


 そう言って顔が当たるスレスレまで近づいてくるカズマ。


 やめろ顔が近い来るな近寄るな気持ち悪い!


「ちょ、近い」


「グハァッ!!」


 なんだ!? カズマが急にふっとんだぞ!?


「・・・大丈夫か?」


 大げさに吹き飛んで地面に倒れたカズマにドン引きつつも声をかける。


 ああ恥ずかしい、みんな見てるじゃねぇか、もうこいつ放ってどっか逃げよっかな・・・


「く、なかなかいいパンチしとるやないか」


 カズマは上半身だけを起こし、口元をぬぐいながら訳のわからないことを言いだした。


 パンチ? 俺はただ体を軽く押しただけだぞ。


「待て、俺はなにも一」


「人を傷つけるのを嫌うお前が、女を守るためにオレを殴った。 女を守るためやったら自分のプライドも捨てれるとはな、かっこええやないか! お前は男の中の男や!! お前に免じて今日のところは引かしてもらうわ」


 立ち上がったカズカズはそう言って立ち去ろうとする。


「おい待て、なんなんだその設定は!って聞いてんのか? よっしゃ言い切ったとか小声で言わなくていいから聞こえてるから独り言」


 無理矢理はずかしい設定を俺に押し付けて、それっきりこちらに背を向けたままのカズカズに話しかける。


「お前の熱いハートはちゃんと受け取ったで!! じゃあな!」


 そう叫ぶなりどこかへ走り出すカズカズ。無視かコノヤロウ!?


「おーい! 勝手に変なもん受け取ってんじゃねぇ!! 待てって!!」


 しかし俺の叫びも虚しく、言い終わるころにはカズマの姿は見えなくなっていた。


「………」


 なんなんだ・・・ 気でも狂ったか?


「ぁの、大丈、夫?」


 ずっと怯えていたモエが後ろからひょこっとでてくる。


「まぁ別になんともないが」


 若干イラっとしただけだ。


「ぇと… ごめんね」


 モエは目に涙をため、上目使いに俺を見てくる。


「本当にごめんね! モエを守るためにプライドを犠牲にしたんだよね!?」


 いやいや俺は何も犠牲にしてない上に、そんな意味不明なプライドも別にない。


「待て、別にあれは一」


「ごめんなさいっ」


 モエはそう言ってどこかに走り出した。


 あぁ、モエが変な勘違いをしたままどこかに行ってしまった…


 なんでどいつもこいつもやりっぱなしで走っていくんだチクショウ!





 ん? 先輩からメールだ。


『次回は私が主役よ!!』


 …なにが? てゆーか先輩、どこにいるんですか?


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